瀕死で冷凍催眠されてた俺はヒューマノイド巨乳少女にTSした件 ~おっぱいには大容量バッテリーが詰まってる~

滝川 海老郎

本文

 21xx年。目が覚めた。

 俺は21世紀の生まれだ。すでに百年くらい経過している。

 生前というのか、交通事故で全身ボロボロだった俺の体は冷凍催眠で保存されていた。

 起きてみれば世の中は進み機械化した人類であるヒューマノイドが歩き回る世界になっていたのだ。


山田やまだおさむさんだったかな、あなたの体は使い物にならなくなっていたので脳以外すべて破棄しました」

「えっ、あ、はい」

「それで社会保険で使える唯一の義体は一番小さい少女型と決まっているのであなたは今日から女の子になりました」

「あ、うん、声も高くなってて変だけど」

「そうですね。すぐ慣れますよ」


 俺は脳みそ以外全部取り換えられた。

 体は140センチの少女型だ。

 なぜ性別ニュートラルな少年型ではなく女性型なのかというと、うん。今もずしりとその重みを感じる。

 ベッドで起き上がっているけれどこの重みのせいでバランスがとりにくい。


「当病院では安全性の観点からXL型Eカップ大容量バッテリーしか認めていません」

「そう……みたいですね」

「スポーツとかする気があるなら、その時だけS型Bカップバッテリーとかにもできますけど、有料ですよ」

「あ、はい、大丈夫です」


 胸が大容量ポリマーバッテリーになっている。

 触ってみると本物の胸のように柔らかい。

 それから熱を持つため本物のように温かい。

 いや本物のおっぱいを触ったことはないんだけど。

 安全性を考慮して金属製鋼体ではなく衝撃吸収型のポリマーでできているのだ。

 21世紀にも柔らかいリチウム・ポリマーバッテリーは実用化されていたので別におかしいことはない。


 ――ロリ巨乳。


 そう、そういうの。

 XL型大容量バッテリーはひとつで8時間、人間型には2つついているので16時間もつ。

 なんでこんなことになっているかというと臓器は人工臓器へ筋肉は人工筋肉に骨は人工骨に、詰め込めるだけの人間の代用部品がすでに全身詰まっている。

 それぞれ置き換わったわけだが機械部品は電気で動く。

 そこで問題になるのがバッテリーだったわけだ。

 母乳を出さなくていいならおっぱいは脂肪の塊なのでそこをバッテリーとした。

 だから男子型は存在していない。

 例外的にクリスマスのサンタや各種イベントやテーマパークなどで使う太ったおじさん型はあるらしいが高価だ。

 ついでに言えば人工子宮は病院の専用施設にあるので子宮も搭載する必要がない。

 胸のバッテリーは取り外しが可能なアタッチメントタイプになっている。

 胸を外しても大丈夫なように本体には子宮型内臓バッテリーが搭載されており3時間もつ。

 合計で19時間は充電なしで活動可能だった。

 しかし一日中もつわけではない。

 そのため睡眠時などにはコードをつなぐことを推奨している。

 それから緊急チャージ用の急速充電バッテリーがあり子宮バッテリーに直結させるため膣に挿入して使う。

 これがひとつ30分だ。普通の人は念のため2つバッグに入れて持ち歩いている。

 もちろん予備のおっぱいバッテリーの交換サービスや給電ポイント、緊急用バッテリーも売っている。


 そうそう『電池が切れると死ぬ』。


 スマホなら電源切ってしまえばいいのだけど人間の脳みそを生かす装置もついているのでそういうことはできない。

 自分が電化製品になってしまったわけだ。


「退院していいですよ」

「ありがとうございました」


 ふらふら歩きながら俺が病院を出ていく。

 身寄りもないし仕事もしていないので家は公団住宅を貸してもらえた。

 この現在の世界には生活保護の制度は廃止されていて完全なロボットではない元人間には全員に定額が支払われるベーシックインカムのような制度があった。


 手足が出ているワンピースを着て歩いていく。

 俺の手足はアンドロイドの白い金属剥き出しなので、ちょっと目立つ。

 少女のすべすべお肌とはいかなかった。顔だけは保険適用で人間風のスキンが貼ってある。

 しかし手足や胴体は金属フレームのソレだ。

 人間風のスキンを貼るのは有料でかなり高い。しかも傷がつきやすく汚れやすい。

 定期メンテナスで貼り替えて維持する必要が出るためとても俺の支給金では無理だった。


 しかし足元がおぼつかない。

 胸が重い。とにかくこのバッテリーが重い。少女にはデカすぎる。

 歩くたびにぼいんぼいんとおっぱいが揺れる。

 重心が上がってしまい歩きにくい。

 未来世界と言っても技術の限界はある。とくに重力制御はできない。

 巨乳の女の子はこんな大変な思いをして生活しているのか。

 俺たちは鼻の下を伸ばしておっぱいだと思ってニヤニヤしているだけだが、本人たちは苦労しているのだろう。

 俺も身をもって知った。


 すでにお金は支給してもらった。

 全額電子マネーに入っている。便利なことに右手をかざすだけで内蔵されていた。

 内臓なのか内蔵なのか微妙だな、うん。

 こういう部分は当たり前だがちゃんと電子化されている。


 それからスマホ。スマホも目と脳みそと直結しててスクリーン投影みたいに見えるので超便利だ。

 検索して近くのラーメン屋に入る。


「いらっしゃいませ」

「おおう、いい匂い」

「ご注文は?」

「醤油チャーシュー麺、あとギョウザ一枚」

「はいよ」


 俺たちはヒューマノイドだ。

 脳みそ以外ほとんど機械なんだがそれらは人工内臓もあるので消化吸収ができる。

 代わりにトイレに行く必要もあるんだけども、まあそれは置いておく。

 脳へ送るブドウ糖は食べ物由来なのでバッテリーでは補給できない。

 だから食べる必要があった。

 それから余ったカロリー物は酸化反応をさせることで電力に変換される。バッテリーの消費を抑えて場合によっては充電もできた。


「いただきます」


 麺をすすってスープも飲む。


「美味い」


 機械の体でラーメンを食べていると変な感じがするが、周りを見ると半分の客が俺と同じようなヒューマノイドの少女たちだ。

 みんなロリ巨乳なのでこちらもやはり変な感じがする。

 おっさんはほとんどいない。

 この未来都市ではおっさんのままずっと人間でいられるのもある意味贅沢なことかもしれない。


 ラーメンとギョウザを平らげて右手をかざして決済を済ませる。


 立ち上がるとまた胸が揺れる。


「くそぅ」


 この体が憎い。

 女の子なのはかわいくていいが胸が邪魔すぎる。

 ばいんばいん揺れて不安定なので休まらない。


 公団住宅までは電車で一駅だった。

 改札に手首をかざして通る。内蔵してると取り出す必要がなくて楽だ。

 ただしかざす必要は相変わらずあった。

 普通に立っているだけで料金が取られると不正利用されたときに気が付かない可能性があるので、電波の送受信距離をわざと手首から十センチくらいに制限してあるんだそうな。

 病院でチャージをするときに教えてもらった。


 改札を無事通り、なんか近未来のよく分からん電車に乗る。

 しかし電車は電車だった。

 なんということはない。あの形が一番多くの人を一度に運べる事実は100年経っても変わらなかったというだけだろう。

 もちろん満員電車ではないのと、すごく駆動音が静かになっていることが違うところだろうか。

 この未来では家からフルリモートの仕事も多いらしい。あとベーシックインカムだけで働いていない人も少なくないそうだ。

 さらに一人乗りの自動運転タクシーが街中を走り回っていて、それの利用者もいるので電車の乗客数は減っているのだとか。


 電車が動き出す。


「うぉおい」


 つり革になんとか手を伸ばして掴まる。

 小さい少女型ヒューマノイドに合わせてはくれないらしく、ぎりぎり届くくらいだった。

 もしかしたら少女は電車に乗らない文化の可能性もある。あまり周りにもいない。

 なんとか掴まったら電車が発進する。

 急に動いた。そして胸が。おっぱいが揺れる。


「んっんんっ、くそぉ」


 万有引力の法則とか慣性の法則とかが未来になっても変わるわけがないので、電車が進みだすと胸が揺れるのだ。

 そして電車が揺れるとまた胸がそれにつられてぼよんぼよん揺れる。

 バッテリーが重い。


 なんとかぽよんぽよいんしつつ一駅で電車を降りた。

 酷い目に遭った。今度から俺も一人乗り無人タクシーにしよう。

 そりゃ巨乳少女たちが電車で移動しないわけだ。俺も覚えた。


 公営住宅に到着した。

 俺の部屋は五階にある。

 エレベーターに乗って上がる。


「ただいま」


 誰もいないのは知っているが挨拶だけはしてみる。

 部屋に入る。


「なにもねぇ」


 本当に何もない部屋がぽつんとあった。

 ベッドもない。


 俺は病院から持ってきた緊急用バッテリー2本と充電用ケーブルが入ったバッグを床に置く。

 コンセントは相変わらず100ボルトのようでお馴染みの二つの穴が並んで壁にある。


「何もねぇ……」


 コンセントに充電用ケーブルをさして床に座る。座るとおっぱいが揺れる。

 そしてバランスが悪い。


「こりゃ女の子が肩凝るわけだわ、重いもん」


 内蔵されたスマホ機能でネットを閲覧する。

 低所得者向けサービスを片っ端から検索する。

 お、あった。

 中古家具の無料レンタルサービス。

 とりあえず椅子とテーブルとパイプベッドを注文する。

 布団類はなけなしの電子マネーで買うしかないか。


 台所にはオール電化の電磁調理器キッチンセットだけはあった。

 ただし鍋やフライパンとかはない。


 いろいろ物入りだな。俺は空っぽの自室で途方に暮れた。


 ――とにかく、胸が重い。


 俺はずっとこの胸を揺らして生きていかなければならないらしい。

 西日が窓から入ってくる。

 昔は転生したら少女になりたいなどと妄想していたが実際になってみたら、女の子になるのはこんなにも大変なんだな……つくづく思い知った。


□◇◇────────────

落ちはありません。短編です。以上で終わりです。


イメージAIイラストの挿絵がございます。よければ合わせてご覧ください。

https://kakuyomu.jp/users/syuribox/news/16817330650611604464

当作品はカクヨムコン8短編部門に参加しています。

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