19話 夜の果て

頁を捲る音がやけに鼓膜に響くのは、黒が無表情で手渡してくる静けさのせいでしょうか。その静寂は知らずとぼくを、夜の果てへといざなうのです。

夢の果て。くすぶる思考が眠気と混ざり、酸素不足の脳が見せるものは、みぎわに佇み、困った笑みを浮かべたまま、曖昧な問いを投げる君の横顔。


『この果てに見えるものって何かしら』


ありきたりな答えを書きそうになったぼくは、慌てて解答欄を黒く塗りつぶし、笑ってみせるのです。


何かを変えたくても

そのナニカが分からないままだから


サイコロを振った先はいつも

……『フリダシニモドル』……



いつまでこうしていればいいのでしょうか


これは君の声なのか それともぼくのこえ



開かない銀幕

演目はひとり芝居


狐疑的に 懐疑的に 猜疑的に


誰もいない舞台の上で

微かに届く月明かりを頼りに


溜息混じりにいくつもの配役を

声色を変えながら演じるのです



嗚呼……

風凪にかわる真夜中の一寸


この夜の果て 夢の果てに


淡い淡い暗闇が

揺れる水面で魅せるものは


おぼろげに笑うきみの仕業でしょうか


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