6話 玉響

降ってきたか……

風に煽られた水滴で窓を打つ音が、ぼくを揺り起こした。そのおかげで、寝坊しなくてすんだのだけどね。


さて、手荷物は少ない方がいいだろう。


財布にスマートフォン。充電器。

ハンカチ、ポケットティッシュ。

ポーチの中に……

日焼け止めは今日はいいか。


傘と鞄を手に車の運転席に乗り込む。

それにしても、君と逢う前にはいつも胸が軋む。


恋しさのせいなのだろうか。

いや、不安も半分なんだろうな。


自分の臆病さを隠すようにRay-Banをかける。

こいつは昔からの常套手段なのだが……

君には内緒にしておこう。



フロントガラスを打つしずく


アスファルトを擦る輪の軋み


逸るエンジン音に拍動の韻律リズム



君の笑顔に逢えるまであと少し


君と時間を重ねるまであと少し




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