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 眩い照明が降り注ぐ格納庫の中央に、隻眼の人型兵器が直立している。ベージュの外部装甲は何枚かが張り替えの最中で、機体の各部ハッチからケーブルが伸びている。

 また、その両腕は取り外されていた。武装ごと破壊された左腕を、右腕含めて交換するようだ。

「まあ、左右で別のパーツを使うわけにはいかんからな」

 白い作業服をきた壮年の男が、俺の隣に立って言う。彼の名はヨハン・フォン・シュトゥーク。CES本部整備部の部長を務める男だ。

「この機体の戦闘ログを見たんだが、左腕のをレーザー照射装置を余り使わんようだな。どうして装着したままだったんだ」

「これを買ったときについてきた装備なんだ。かなり古いモデルだから、売ってもたいした金にならなかった」

「ふむ、ならば一層、月光ムーン・ライトを買い直すよりも別の武器を買ったらどうだ」

「銃器か」

「そうだ。お前さんは、近接戦闘より射撃戦闘の方を多く使っている。火器管制装置F . C . Sも複合射撃型だろう」

「そうだな。腕も反動抑制機能リコイル・コントロールが効きやすいものにするか」

「腕ならオススメがあるぞ」

 ヨハンがノート大の携帯端末を取り出し、腕部パーツの一覧を見せる。

「アルヴァス・インダストリアルのAA-68VBだ。少し古い型だが、同世代パーツとしては最高の反動抑制機能リコイル・コントロールを持っている」

「かなり安いな」

「実のところ、余り売れなかったんだ。ストーム社のSA-111に負けてな」

 SA-111の発展モデルであるSA-111D1を表示する。確かに優秀な能力を持っているが、しかし価格はAA-68VBの3倍近くと買えたものでは無い。とりわけ、まだ傭兵としては素人同然の自分には。

 携帯端末で支払いを済ませると、搬入されたAA-68VBの取り付け作業が始まる。

「左用の武装はどうする。右と同じく携行機関砲チェイン・ガンか?」

「いや、一つ試したいものがある」

「おお、言ってみろ」

携行速射砲ラピッド・ガンだ。制圧戦闘には大口径の武装も必要かと思ってな」

「それならコイツだな。アルヴァス・インダストリアルのARM-55だ。55ミリ口径弾を使用できる」

「フレシェットか」

「いや、対空近接信管A A V T弾頭やら対電装電磁A E - E M弾頭、装弾筒付翼安定徹甲弾A P F S D Sを使える。55ミリは調達しやすい弾薬口径だからな」

「他社グループの55ミリ弾も使えるのか」

「ああ、コイツは薬室にを持たせた設計だからな」

「構成的には悪くない気がするんだが」

「ああ、良い感じだ。不要なもんを載せてたときより、ずっと良い」

「あんたに褒められたなら安心だ」

「機体テストはどうだ」

仮象訓練機能V Rか」

「いや、弱装弾を使った実戦仕様だ」

「新衣装を早速汚せって?」

「何言ってる。陸戦兵器は汚してなんぼだろう」

「......相手は」

「こっちの用意する無人機部隊だ。お前が勝ったら......そうだな。ARM-55を無料サービスだ」

「乗った。早速やろう」

 ヨハンがニヤリと笑う。

「よし、お前ら!第二地下演習場で対無人機部隊訓練だ!」

「了解!」

 整備部員たちから威勢の良い声が飛ぶ。

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