今ここに音楽が在る ~バッハ名曲六十三選~

@antonobu

はじめに


 人生において誰もが幸せになりたいと、あちらこちらを探し回っています。幸せとは何でしょうか?成功することでしょうか。何かを達成することでしょうか。

 多くの人は、明日の幸せのために今日を生きています。ありもしない未来に答えを求めて「今ここ」にしっかり生きていません。ちまたには自己啓発や成功哲学、宗教、スピリチュアル、引き寄せ、コミュニケーション・スキルの本が溢れています。

 これらの本が売れ続けると言う事は、実践しても一向に幸せになれないからではないでしょうか。成功するとは、どういう状態になる事でしょうか?

 物質的に満たされて何かを達成しても、人はもっともっとと欲望は底知れず、満足を知る事はありません。

 私たちの人生は、今ここにしか存在しません。未来に行った人は一人もいません。過去に戻った人も一人もいません。

 未来は思考による想像であり、来てみれば今ここです。過去も思考の中の記憶で、思い出している瞬間は今ここです。私たちの人生は、何時でも何処でも今ここしか在りません。

 幸せとは、頭で思考するのでは無く感じる事です。私たちは今ここでしか生きられません。幸せになりたいのであれば、今ここで幸せになるしかのなのです。幸せは愛を感じる事であり、人は愛を経験したいが為に幸せを求めて生きています。

 物理学や量子力学の科学においても時間は存在せず、人間の作り出した概念であり、幻想だと言う事が証明されつつあります。未来も過去も在りません。在るのは永遠に続く現在である今ここです。

 鳥に「今、何時?ここは、何処?」と尋ねても、きっと「今は今。ここは、ここ」と答えるでしょう。自我が確立する前の十歳ぐらいまでの子どもは、将来に対して不安を感じることも過去への執着もありません。子ども達は今をしっかり生きています。

 順調な人生を送ってきた人もいるかもしれません。挫折感や苦悩を体験し、自己嫌悪や不信感、不安、依存症、抑うつ状態など感情的あるいは心理的に問題を抱え苦しんでいる人も多いでしょう。

 苦しみから解放されるために宗教や哲学、自己啓発、スピリチュアルに出会い、様々な言葉に魅了され、熱心に夢中になっているかもしれません。しかし、どれも根本的な解決にはなりません。

 教育は知識や技能を教え育て、個人の素質や能力を伸ばす他に、思考力や判断力、表現力を養うことが求められています。またコミュニケーション能力を育み、人間の自立を促し、主体的に生きる力を身に付けさせます。つまり教育の目的は思考を高める事になります。

 現代の日常で私達は、四六時中、思考を使い、次から次へと様々な思いや考えが押し寄せて、未来や過去の事で頭が一杯で、今ここに在る事ができません。人間は日々、思考に支配されていると言っても過言ではありません。

 思考力による科学の発展は、人間に便利で快適な生活や様々な利益をもたらしました。しかし同時に様々な問題も生み出し、苦しみの原因にもなっています。

 苦しみや恐れは、物事や刺激に対しての反応であり、自分の思考が勝手に作り出している事がわかります。

 恐怖や苦悩を乗り越えるためには、思考から離れ無意識では無く、意識して今ここに在る事が大切です。これを目覚め、あるいは悟りと言っています。

悟るために修行や瞑想をする人もいます。今ここにくつろぐ事が出来れば、いつでも即座に思考から離れ心の安らぎを感じる事が出来ます。

 人は何のために生きるのでしょうか?ある人は幸せになる為だと言います。またある人は成功する為だと言うでしょう。

 釈迦はあるがままの人生、タタータ「起きる事が起きる。それ以外は決して起きない」と言っています。

物事は、ただ起きているだけで人生には意味も価値もありません。意味付けや価値付けをしているのは自分であり、しかも全て後付けであることがわかります。

そうすると人間には自由意志は無く、自分の意思も後付けであることがわかります。人は物事をコントロールしているようで、何一つコントロールできません。

心臓の鼓動や呼吸を初め、何一つコントロールできず思い通りにはなりません。正に自分の意思で生きているのでは無く生かされているのです。

しかも私と言う主体も無く、自分と言う分離感から来る幻想が苦しみを作り出している事がわかると、人生には諦めしかありません。しかし諦めるとは「明らかに見る」ことであり、状況を「明らかに見極める」ことです。

物事が事前に決まっており全ては必然で、選択などできないことがわかると、人生に対して手放しが起き、降参するしかありません。それが意識の目覚めであり覚醒であり悟りなのです。

人生において獲得したり達成したり成功したりする必要は何も無く、ただ起きる事が起きているだけで、あらゆる事象は完璧に調和しています。

今ここにおいて深く観察し、無意識を意識すると、自分の本質である生命の輝きと完全性が現れ、今この瞬間に在る事を感じる事が出来ます。それに気付いた時、愛や喜び、安らぎ、慈悲、叡智など心の平安が自ずと訪れます。

人は思考から離れると自由になれます。思考とは言葉であり時間です。思考は私と言う自己を作り出し、物語を創作します。

私たちが見ている物質世界は、幻想であり仮想現実です。正に夢の中で生きている状態なので、夢は達成することもできませんし、達成する必要もありません。夢から目覚める事が大切です。

 この本は、音楽を通して精神世界を探求します。それは単なるスピリチュアルやノンデュアリティ「非二元論」を超えて、世の中の仕組みを知って楽に生きるヒントになるでしょう。

言葉は道具であり手段であり方便です。方向性は示せても、そのものを表す事も全てを語り尽くす事も出来ません。時間や言葉では無く、思考に捕らわれる事無しに感じる事が大切です。

言葉は、その瞬間だけの物であり、持ち歩く事や捕らわれるのは禁物です。言葉を超え時間を超え思考を超えて、感覚として真実を体験するのです。

時間芸術である音楽も道具であり手段に過ぎません。思考を超えて音楽の存在に気付き、もう既に知っている真実に目を向けた時、今ここに音楽が存在することを実感できます。

全六十三節、各節の終わりに神の領域であるバッハの音楽の解説を挿入しました。言葉に捕らわれる事なしに、解説を参考にしてバッハの音楽を感じて頂けたら幸いです。

恵まれたことに現在は、インターネットのユーチューブなどのサイトを使うと、これらのバッハの名曲全てを無料で聴く事が出来ます。

バッハの音楽はハイヤーセルフであり、神がかった宇宙次元の奥深さと叡智があります。壮大なバッハの世界を堪能することで、全ての繋がりと一体性、あるいは完全なる調和を体感することが出来ます。そしてあるがままの今ここに在る音楽への気付きとなるでしょう。


「音楽の究極的な目的は、神の栄光と魂の浄化に他ならない」J・S・バッハ



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