第28話
そうして何事もなく翌朝を迎えた。
隣で眠る無防備なフラヴィアを横目に俺はクエスト状況を確認した。
(一応、達成にはなってるな……)
幸いなことにサブクエストは達成扱いとなっていた。
どうやら手を繋いで添い寝した事で彼女は十分に満足したようだった。
いや、ピュアかよ。
まぁ、なんか無理して俺を誘惑してた節があったしな。
結局のところ色恋沙汰の経験値が不足していたのだろう。俺もコイツも。
「むぅ……だ、だめだケイ……そんな恥ずかしい台詞……くっ、ころ……むにゃ……」
「夢の中の俺は何言わせてんだよ……」
前言撤回。レベル不足なだけで妄想力は豊かなようだ。
その後しばらくしてフラヴィアが目を覚ましたので、適当に準備を済ませてから本来の目的であった騎竜を見せてもらう事にした。
「さ、ここが竜舎だぞ」
案内されたのは敷地内の一角にある馬小屋のような建物だった。
個人所有のためそこまで大きくはないが、それでも2、3頭は入りそうだ。
「みんな客人だぞ。起きてるか?」
フラヴィアが声をかけると、中にいた騎竜が窓からヌッと顔を覗かせた。
その数は2頭。別種なのか、顔つきは以前に見た
あちらは純粋な竜っぽい顔つきだったが、こっちはヒョウモントカゲモドキのような顔つきだ。
「どうだ? 可愛いだろう?
「ああ、
「そうだろう⁉ ふふふふ、いつ見ても癒やされる顔だ……」
騎竜の額を撫でながら、嬉しそうに語るフラヴィア。
彼女は本当に騎竜が大好きなんだな。
ところでコイツは
気になった俺は【鑑定眼】を発動させて詳細を確認した。
名称:
騎乗速度:290
騎乗効果:MP回復速度上昇、砂地走行、長距離走行
説明:砂漠に住む疾竜。尾に溜めた栄養で食事無しでも長期間を生存が可能。
へぇ、砂地の走行が得意な竜か。騎竜にも色んな種類がいるんだな。
速度はやや物足りない感じがあるが、砂漠マップじゃ重宝しそうだな。
「かなり可愛がっているみたいだけど、本当に譲ってくれるのか?」
「あぁ、もちろんだ……と言いたいところだが、まずはこの子たちの反応を見てみないとな。騎士団の騎竜は誰でも乗せるように訓練しているが、この子たちは違う。主人として認められないと背に乗せてくれないんだ」
答えながらフラヴィアは、
「額を撫でてみてくれ。すんなり撫でさせてもらえるなら問題ない」
「お、おう……噛んだりしないよな?」
「心配しなくていい。嫌ならそっぽを向くだけさ。あ、でも強引に撫でようとするのはダメだぞ?」
「流石にそんな事はしねぇよ」
「ふふ、なら大丈夫だ。ほら、撫でてみろ」
フラヴィアに促されて、俺はゆっくりと手を伸ばした。
すると
どうやら俺に触られるのはNGらしい。
「この子はダメみたいだ。もう一頭を連れてこよう」
そう言ってフラヴィアは入れ替える格好でもう一頭の
『プロロロォォォンッ!』
もう一頭は俺の前に来た途端に唸るような鳴き声をあげた。
この鳴き方がどういう感情を示しているのか俺にはわからない。
だが、少なくとも歓迎されている様子ではなさそうだ。
「これダメなヤツだよな?」
「……お、おかしいな。非常に人懐っこい種のはずなのだが……」
目を細めるとフラヴィアの目が泳いだ。
まさか両方からNGを食らうとは思ってもみなかったのだろう。「いや、そんなはずは」と首を傾げながら呟いていた。
(いったいどうなってんだ?)
騎竜が自我を持つ以上は仕方ないと思う反面、この結果には疑問が残る。
いくらリアルタイムで変化するゲームとはいえ、クエスト報酬が獲得できないパターンとか存在すんのか?
『気にすんな。クエスト報酬は絶対だ』
(つまりは、レイド報酬2倍の時と同じって事か?)
『そういうこった。大人しく待ってな』
そう言ってマモンは嗤うようにカタカタと震えた。
「ふむ……そうだ!」
何か名案でも浮かんだのか、フラヴィアは手のひらをポンと叩いた。
「実を言うと、購入は済んでいるのだが、まだ受け取っていない騎竜がいるんだ。その子を君が引き取るのはどうだろう? とても希少な種だぞ?」
「そりゃレアな騎竜をくれるってなら嬉しいけどよ……いいのか?」
「少しだけ残念だが構わないさ。購入するまでは良かったが、私も忙しくてなかなか引き取りに行けなくてな。ずっと牧場に預けっぱなしなんだ。だから代わりに引き取りに行ってくれるならすぐに渡せるぞ」
フラヴィアが提案すると同時にクエスト更新のログが流れた。
<フラヴィアの願い②>
受注条件:フラヴィアとの親密度が一定以上
達成条件:ドラリオンにある牧場で騎竜を引き取る。
報酬:
説明: フラヴィアの代理で騎竜を引き取りに行こう! 報告不要。受取完了と同時に報酬アイテムを獲得できます。
『
(そうなのか。それより騎乗アイテムとしての性能はどうなんだ?)
『速度は
マモンの補足説明を聞く限りだと、かなり良い
なら選択肢は一つしか無いよな?
「ドラリオンはそこそこ距離がある。もし難しいようなら三週間ほど待ってくれれば私が引き取りに行くが──」
「いや、大丈夫だ。俺に引き取らせてくれ!」
フラヴィアの言葉を遮って俺は即答した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます