第18話
このスキルはいったい……。
確か、これってマモンを最初に覚醒させた時に得たスキルだよな。
スキル説明を確認した時は何の効果も無いスキルだったような気がするが……。
『いいから発動させろ! 発動できる機会は限られている! モタモタしてると時間が無くなるぞ!』
「あぁん? ったく、ちょっとは考えさせろよな……」
マモンが急かすように、ガチャガチャと騒ぎ立てる。
よくわからないままスキルを発動するのは不安だが、仕方ない。
どうも発動できるタイミングが限定されているっぽいからな。
「とりあえず発動だ! 発動!」
俺はスキル発動確認のメッセージに承諾の意を返した。
すると、俺の周囲を渦巻くように光の粒子が舞い始めた。
「なんだなんだ……?」
光の粒子はやがて結晶となって俺の胸の中へ溶けるように入っていった。
『──【
【滅雷】
効果:一定時間、範囲攻撃を放つ雷玉(
「……これって
まさか倒した魔獣からスキルを奪い取れるのか?
だとしたら、かなりヤバイぞ。
発動条件は不明だが、スキルを奪えるスキルが弱いはずがないのだから。
「……お前、いったい何者なんだ?」
思わず俺はマモンに問いかけた。
課金の件といい、スキルの件といい。
攻略サイトに載っていたソウルギアの情報とは、その性質が大きくかけ離れていた。
『今さら何を言い出すかと思えば……俺様はお前の
マモンは一旦言葉を区切ってから、
「──けどよ、俺様は欲張りなのさ」
そう、誇らしげに返した。
『素晴らしい偉業を成し遂げました!
<
プレイヤーネーム:ケイ(JAPAN)
獲得称号:孤高の魂装士
獲得称号:雷轟を裂く者
獲得称号:副団長の心を射止めた男
驚いたのも束の間、今度は公式アナウンスが流れた。
公式アナウンスってのは、ゲームにログインするプレイヤー全てに送られるアナウンスで、主にメンテナンスや告知に使用されるものだ。
「なんだこの、
『条件を満たしたヤツに送られる特別な称号さ。レイドクエストのソロクリア、ネームドボスのソロ討伐……そういう普通は達成できないようなプレイをした時に与えられる代物だ』
ふーん、そんな要素もあんのか。
ま、この手のゲームは承認欲求を満たしてなんぼだからな。
それにしても最後の称号はなんだ? 副団長って誰だよ。
「ふふ、手に入れたアイテムの確認は終わったか?」
諸々のログ確認が落ち着いたところで、フラヴィアが声をかけてきた。
「あぁ、大丈夫だ。悪かったな、待たせて」
「気にするな。剣と対話できる男など初めてだからな。眺めていて飽きなかったぞ」
「もしかしてマモンの声が聞こえるのか?」
「いや、声は聞こえない。ただ、何らかの思念を持っていることくらいは感じたさ」
そう言って彼女はその視線をマモンへと向けた。
流石はネームドNPC。
思念とか気配とか、そういう抽象的なのを読み取れるのはすげーな。
確かにバトル漫画じゃ有りがちだけど、俺にはその感覚が全く理解できねぇ。
「それより街に戻ろうか。君に報酬を渡さないといけないからな」
「そうだ、報酬! 念の為に確認しておくが、ちゃんと払ってくれるんだよな? 騎士団の公式的な依頼じゃなさそうだから、後で揉めるのは御免だぜ?」
「ふふ、もちろんだとも。私もそれなりの立場にいる人間だ。その辺りは問題ない」
疑念をぶつける俺に、フラヴィアは優しい笑みを見せた。
◇
その後、俺たちはアルレの街の駐屯所へと戻ってきた。
「──この鱗と牙を見ろ! 私の言った通り、
「そ、それは理解しております……ですが、傭兵を雇う場合の上限額は4000ゴールドまでと規定されておりまして……」
案の定、フラヴィアは騎士団員と揉めていた様子だった。
傍から聞いている限りだと、どうやら俺の報酬額を二倍にする件のようだ。
俺のスキル効果によるものなんだが、獲得した金貨が増殖するわけではないらしい。
なんかその辺は妙にリアルなんだよな。ゲームの癖に。
『【貪欲な鉤爪】の効果は絶対だ。適当に待ってりゃ問題ないさ』
マモンがそう言うので、俺は一切口出しせずに待つことにした。
「ケイ! 待たせてすまなかった! これが今回の報酬だ」
しばらくすると、フラヴィアから金貨が詰め込まれた革袋を渡された。
中身は約束の8000ゴールド。リアルマネー換算で80万円もの大金だ。
(何だかんだで、すげーお得なクエストだったな)
革袋に入った大量の金貨を見て、そんな風に思った。
ぶっちゃけ、
俺自身の仕事は囮と目潰しだけで、そんなに大した事はしてない。
そう考えると8000ゴールドの報酬というのは破格に思えた。
(何はともあれ、この報酬と素材アイテムの売却金があれば借金問題は……いや、むしろ素材だけで事足りるか?)
というのも、この素材からは俺が獲得した装飾品の劣化版が製作できるようなのだ。
劣化版とは言えど、割合上昇系の装飾品だ。その需要は凄まじい。
装着者のステータスが高ければ高いほど、その上昇値が大きくなるのだから当然だ。
他人と少しでも差をつけたい上位層なら、喉から手が出るほど欲しい素材だろう。
(市場に出回ってないユニークな素材アイテムなら言い値で売れる……ふへへ、こりゃ期待ができるなぁ……!)
頭の中で売却額の試算をすると、自然と頬が緩んだ。ふへへへへ。
「ところでケイよ、この後はどうするのだ? その、すぐに私の屋敷に来る、のか……?」
妄想に耽っていると、フラヴィアが俺の肩をつついた。
そういえば騎竜を見せてくれる約束だったな。
「いや、ちょっと取引所に行こうと思ってな。また後日でもいいか?」
「も、問題ないぞ。ほ、ほら、戦闘の後だからな。その、私も色々と身支度したいところだったのだ……湯浴みとかな」
頬を赤らめ、長い金髪の毛先を指でくるくると弄りだすフラヴィア。
なんだ、意外と潔癖な性格なのか。
騎竜を見せてもらうだけだし、別に気にしないのに。
ま、返り血とかで多少汚れているのは確かだけどさ。
「それじゃ、近いうちにまた駐屯所に来るよ」
「あ、あぁ、待ってるぞ……!」
フラヴィアと約束した後、俺は駐屯所を後にした。
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