6
「成すぞ、
シンパンの両手の甲のように、背中が輝く。
「クッ、熱い!」
チリチリと焼けるような痛みに襲われる。が、次第に痛みは引き、優しい光に包まれているような感覚へと変わる。
変わったことはそれだけ。
「どうだ、慎二? なんか身体の奥から力が湧いて来たみたいな感じなのか?」
目を輝かせながら、自身が期待している通りの答えを待つ京介。
京介には悪いが、正直に答えよう。
「いや、特に」
あっそう、と目に見て分かるように落ち込むが無視しよう。
それよりも、
「シンパン、この背中」
「ああ、それが正義の
剣と天秤が描かれていること自体は知っている。世界から正義を授かったときに、1度見ている。
俺が聞きたいのは、
「この紋章、刺青みたいに残ったりしないだろうな? 今学期中に水泳の授業がまだ1回残っててだな」
「今それ………確かにまだ1回残ってたな。バレたら退学とかになんのか?」
「即退学にはならないと思う。まずは生活指導室とかかしら?」
この紋章が消えるにかどうかなのだが。
流石に、背中に刺青のような物がある高校生は、問題がある。消えるのか、消えないのかだけを知りたい。
「気のするところそこなんだね、君達。………残らないよ、力が発動中しか浮き上がらないから」
なら、安心だ。水泳の授業も安心して受けられる。
じゃあ、今度は目の前のことに集中しよう。
シンパンの言葉から考えるに、紋章が浮かび上がっている今、
しかし、相手にも俺にも何も起きていない。
シンパンが隠者を発動した際も、見た目だけで判断は難しかった。
じゃあ、俺もそうなのか?
それとも、何かしなければ発動していても意味がないのか?
シンパンが隠者を発動した時のこと、その時の言葉を思い出せ。
確か「対象に向けて発動すると」って言っていなかったか?
俺の正義もシンパンのと同様に、対象を決めなければならないんだとしたら?
………やってみるか。
「正義の対象は
怪物を目で捉える。
「京介、俺に何か変化はあるか?」
「変化はない。お前の頭上に天秤が出現したくらい」
それを変化と言うんだが?
頭上の天秤を見ると、受け皿の1つに火が灯っている。
片方だけとなると、もう1人を対象にしなくちゃいけないのか。
なら、もう1人は、
「正義の対象を自身に」
自分から何かが抜けていくのを感じ、やっと力を理解した。
対象2名の罪を秤にかけ、重い方——つまり罪が重い方に罰を与える力。
天秤の両受け皿に火が灯り、傾く。
「シンパン、力を解いてくれ」
「いいのかい? まだどういう力か見ていないのに」
「大丈夫、理解したから」
シンパンが力を解いたのだろう。
怪物とやっと目が合う。
「なあ、お前の
「げけいjxっ。ふぉjdrbf、kskぢjdんd!(ふざけやがって。処刑だ、全員処刑だ!)」
シンパンの隠者で隠れていたことに対して、怒り狂っている怪物。
別にふざけていた訳じゃ無いんだが、怪物に説明する義理はない。
最短距離で突進してくる怪物は、まるで重機の暴走かのように、触れるモノ、進行方向にあるモノ全てを壊す勢いだった。
あんなモノに突っ込まれたら、生きていられないんだろうな。
と、考えられるくらい冷静でいて余裕がある。
というのも、
「これで終わりだ、大罪人——東京駅の怪物よ」
頭上の天秤は測りを終え、片方は言い逃れ出来ぬほどの罪深く、もう片方は罪を知らない赤子のように軽かった。
「剣よ、大罪人に罰を」
目の前に現れる巨大な剣。
剣先はこれから断罪する者に向けられている。
怪物の目にも剣が写っているのにも関わらず、止まることはなかった。
どっちの正義が正しいのか。
それを証明するかのように交差する。
「行け」
「hdけhldbsk!(処刑処刑処刑処刑処刑!)」
—————————ザシュ。
「………hdけい、hxkskwkj?(………俺の正義が、
剣は的確に怪物の首を捉え、胴体と切り離した。
落ちた首は最後にそう呟き、体と共に灰と消える。
「………ふぅ、これで終わりだよな?」
「そう、これで終わり」
怪物は死に、この東京駅も消える。
捕まっていた人達も助かり、辛い記憶もここにいた記憶さえ消えてなくなる。
感謝はされないけど、父さんや母さんのように正義は成せた。
「………………疲れた」
そう俺は呟き、意識を手放した。
だから、この後どうなったのかは知らない。
後日京介に聞くまでは。
京介に聞いたのが悪かったのだろう、ちょっと意味が分からない点がある。
美妃先輩かシンパンに聞けば良かった。
だって、京介、
「俺も何か帰りに《世界から力貰った》!」
って言うんだから。
C×C 〜クラウン×クラウン〜 九月 生 @syuhey
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