第二章 3話 シスターちゃん


 ここはソートハウル街唯一の教会の中、おつかいにて配達をしに来た少女は、とある少女と会合を果たしていた。メガネをかけ、腰まで伸ばした茶髪の髪ゆらりとたなびかせながら軽快なスキップでこちらにやってきて、少女の前でピースをしている修道服に身を包んだ褐色肌の彼女こそがこの街の人気者、シスターである。

数年前にこの街のシスターになった彼女は、持ち前の明るさとなんでも笑顔で助けてくれる優しさから街の住民たちのアイドルのような扱いを受けているのである。

そんな彼女のいる教会が一軒目の配達先であった。


「…なるほど!ってことは今は花屋のバイトさんなんですね☆」


「そうなんです!今お花をお渡ししますね!…えーっと…どうぞこちらです!」



少女は花屋に貰ったメモとにらめっこをしながらシスターに花を渡していく。シスターは花を受け取りながら花の説明の紙を読んでいく。



「こちらが…ブルーデイジー…こっちが…トケイソウ…なるほど☆やっぱり花屋さんのチョイスに間違いはないみたいですね!☆」


「お花のチョイスは花屋さんが全部選んでるんですか?」


「花屋さん言ってなかったんですねー☆、配達される花は全て花屋さんがその人用に選別して送ってくださるんですよっ☆」


シスターは花を花瓶に飾るために教会内を歩きながら説明してくれた。


「みんな教会に相談や祈りにいらっしゃいます!☆バイトさんももし何か困ったり悩んでいる事があったら是非相談に来てくださいね!☆」


「はい!」


全ての花を飾り終えて、代金を渡す時に少女はシスターに一本の花を手渡した。


「これは…?☆」


「えっと…このメモによると…商品とは別で花屋さんからシスターさんへのプレゼントだそうです!」


そう言われたシスターは花を受け取り内容を見る。



「…マリーゴールド?…フフフッ…やっぱりあの子は分かってくれる良い子ですねぇ…☆」



そう言って笑うシスターの眼が一瞬怪しく歪められていることに少女が気がつくことは無かった。


一つ目の仕事を終えて少女は駅へ向かおうと教会を出るときシスターに呼び止められた。



「バイトさんっ☆」


「はい!!なんですか??」


「今日の貴女の旅に神の御加護があらん事を祈ります。」


先ほどまでの明るいシスターとは打って変わって慈母のような穏やかな笑顔で祈りを合わせる。そんな祈りを聞いた少女はシスターの方へ振り返り、へにゃりと笑った。


「ありがとうございましたっ!行ってきます!!」


「行ってらっしゃいっ☆また来てくださいねー!!☆」


ぶんぶんと手を振るシスターに見送られながらこうして教会を後にした少女は汽車に乗り次なる目的地であるダステル電気街の12番通りへと向かうのであった。



大陸横断列車からダステル行き地下汽車に乗り継いで無事たどり着いた少女。両手には道中の売店で買ったのであろうお昼ご飯として買った中華まんが握られている。電車から降りた彼女の頬は美味しい中華まんで一杯だった。


「ふぉうふぁ、ふぉまふりふぁんふぇふふぁへー!(今日はお祭りなんですかねー!)」


 あいも変わらず銃声と爆発音の響く危険な街中を縁日かなにかと思って歩いているお気楽少女。ダステル電気街というド級の危険区域において奇跡的とも言える平和的勘違いをかましていた。

中華まんをすっかりと平らげた彼女は目的地である12番街に差し掛かった時に目に飛び込んできた光景に思わず腰を抜かしそうになった。



「えぇぇ!?!?!?人がぶら下がって!?あええぇ!?どういうことですか!?」



なんと12番通りと名された入り口のゲートには3人の男が色とりどりのペンキに塗れたまま吊り下げられていた。命に別状は無さそうだが怪我をしているのか呻いている。しかもその光景を当たり前かのごとく周りの通行人は通り過ぎて行っている。慌てて少女は駆け寄り1番近くのペンキ濡れの男に話しかけた。



「だだだ大丈夫ですか!?なんでこんなことになってるんですか!?」


「うぅ……いや…俺たちが悪りぃんだ…変な欲かいてアイツんとこに行かなきゃよかったんだ…俺らが馬鹿なことしなきゃ…」


「そんな…!!アイツって…そんな怖い人が居るんですか!!」


「いいか嬢ちゃん…あそこの建物には絶対に行っちゃあ行けねぇ……あそこには…悪魔が…ぐふっ…」


「ええ!?悪魔!?なんですかそれ!?それは一体どこに……!?!?」


そういって指をどこかを指して力尽きた男。

その指は、


彼女の持つ地図の配達先と同じ場所を指していたのだった。


to be continued…

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