第二章 2話 花の香とお守り


 ソートハウル街の噴水広場から少し南に外れた住宅街に建っているメルヘンチックな建物。黄色を基調とした温かみ溢れる建物の中へと少女は足を踏み入れていた。

ツリーチャイムの綺麗な音がドアを開けると迎え入れられる。店内は色とりどりの鮮やかな花に満たされており、それぞれの花に綺麗な文字で花の説明が書いたカードが添えられている。

日光が差し込み花びらへと反射し輝く幻想的な店内に目を輝かせていると、店の奥から植木鉢を持った眼鏡の女性が歩いてきた。



「お久しぶりですね、バイトちゃん。」


「あー!!花屋さん!!お久しぶりです!」



ぱたぱたと少女が近づいていくこの彼女はこの店の経営者。ソートハウル街唯一の花屋で一人で街中の花壇や植木を管理、輸入輸出しており、街の花は殆ど彼女が届けている。年に一度行われているソートハウル絢爛祭は彼女の花で街が彩られる祝日で、この街の一大イベントである。



「ごめんねぇー!休日なのに手伝って貰っちゃって。」


「全然全然!!むしろありがたいぐらいで!!」


世間話もほどほどに花屋は今回の仕事内容を告げる。


「それでね、今回頼みたい仕事は配達をしてもらいたいの。」


「配達…お花を届けるんですね!」


「そう、少し今手が離せなくてね街の外の所の配達も来てて困ってた所だったの。」



そう言いながら場所のメモや商品、交通費など必要なものをテキパキとバックに入れていく。


「一つ目は街の西にある教会だから歩いていけるけど、それ以降は街の外だから汽車を乗り継いで行くことになるわ。ちゃんとメモ見て間違えないようにね?それとお昼ご飯代も入ってるから何処かで買って食べてちょうだいな。あと、商品の中に説明用の紙が入ってるから渡すときに読んであげて。はい!じゃあこれお願いします!」


あっという間に準備が終わったバックを少女は受け取る。想像より重く少しよろけそうになる。


「意外と重いですね…よいしょっ!頑張ります!!」


いかにもやる気満々って雰囲気を醸し出している少女の姿を見て花屋は少し笑いながら小さな袋を手渡した。


「これは…なんですか??」


「これはお守りよ。カランコエとヤグルマソウの押し花なんだけど赤と白で綺麗なの、大切にしてちょうだいね。」


「良いんですか!?ありがとうございます!」


受け取った少女は大切そうにポケットにしまった。



「では行ってきますね!!頑張ります!!」


「はーい頑張ってね〜」



手を振る花屋に見送られ、少女は一つ目の届け先、教会へとルンルン気分で歩き出すのであった。

 花屋から大通りを通って西へしばらく進むと遠くからでも見える大きな教会へとたどり着く。開かれているドアを潜ると中は壮大な空間が広がっていた。パイプオルガンの音色が聞こえ、ステンドグラスから日が差し込んで色鮮やかな影を落とし込んでいる。木製の椅子にはちらほらと祈りを捧げている人が伺える。少女は周りをキョロキョロと見渡していると、パイプオルガンの音色が止まり誰かがコツコツ歩いてきた。


「あら!喫茶のバイトさんじゃないですか!お悩み相談ですか?☆シスターちゃんにお任せですよっ!☆」



修道服に身を包んだ女性が頬の横でピースを作って決めポーズを取っていた。



to be continued…

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