なんでも鍛える鍛冶屋さん、珍客の相手をする

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なんでも鍛えるって言ったじゃないか!?

鍛冶職人の朝は早い。


 名の知れた冒険者達から『彼の者に鍛えられぬものなし』と称されるドワーフのゴンザも例外ではない。



「さて、今日もいっちょヤるとするか。炉に火を入れて、金床を用意してっと」


「失礼! 私はガンキョウ。ココに『あらゆる武具を鍛えし鍛冶師』がおられると噂に聞いてきた。ゴンザ殿はおられるか!」


「ほう、コイツは朝っぱらから良いオーラを纏ってる野郎が来たじゃねえか」


 鍛冶場の入口に立つガンキョウなる人物の強力な武具を纏った姿を一目見て、ゴンザは只者ではないことを見抜いた。


「あなたがゴンザ殿か?」


「ああ、オレに何の用だ? ヒューマンのあんちゃんよ」


「あなたの噂はかねがね――」


「そういうのはいい。用件だけ言いな」


 豪快なゴンザの反応を喜ばしく思ったガンキョウは、ニヤリと笑って本題に入った。





「チ●コを鍛えてくれ」


「帰れ」



 ピシャッ、ガラガラガラガラーー(※扉が閉まる音)




 「なんでも鍛える鍛冶屋さん」 ~完~




「待て、終わらないでくれ! 頼むから私の話を聞いてくれええええ!!」


「ぬわあ!? 腰にすがりつくんじゃねえよこの変態野郎が!!」


 大の男であるガンキョウが男に捨てられた女のようにゴンザに縋りつく。その光景は色んな意味で衝撃的だった。


「あなたの気持ちはよーくわかる! だが、他に頼れる者がいないんだ! お願いだからあなたの熟練した技術でワタシのチ●コを、チ●コを鍛えてくれ! チ●コをーーーーー!!」


「だあああああ、ご近所に変な噂が立つからチ●コチ●コ連呼するんじゃねえーーーーー!!」



 ゴンザは振りほどくために殴る蹴るの大暴れ。

 しかし、ガンキョウはその名のとおり頑丈なのか。どれだけボコボコにしても一向にあきらめない。



「……やだ、朝から痴情のもつれ?」

「ゴンザさんってそっち系だったんだ……」


「ぬおおおおおお?! 誤解だ皆の衆!!」


 集まってきた人々の視線に耐えられなくなったゴンザは仕方ないと諦め、ガンキョウを鍛冶場に放り込むしかなかった。




--鍛冶場内--




「こうなったら仕方ねえ。話だけなら聞いてやるぞ、変態野郎」

「恩に着る」


「で、何を鍛えろって? さっきは頭のおかしい単語が聞こえたが、幻聴か? それともそういう名前の武具を鍛えてほしいってか?」

「うむ、武具を鍛えてほしいのだ」


「ほう? けったいな名前みたいだが、そいつは剣か? 鎧か? はたまたオレが見たことないような新兵器か」

「それでいくと剣が一番近い」


「見せてみろ」

「おうともさ」



 ボローン ← 何かが露出した音


 バッシャア! ← 露出したナニカに熱湯がぶっかけられた音



「アットウィ?!」

「ハハハッこやつめ、『これが私の御腰につけた立派な剣でございます』ってか!? 舐めてんじゃねえぞ」


「ナメてはおらん、だってキタナイじゃないか」

「そういう話じゃねえんだよ!」


「す、すまん。ゴンザ殿の怒りはもっともだ。しかし、ワタシが恥を忍んでこんな依頼をするのは深い理由があってだな」

「いきなり下半身丸出しで不快にさせただけの理由があるってかあ?」

「ふははは、深いと不快をかけるとはゴンザ殿も口がウマい」

「おっぴろげながら意味不明に笑うんじゃねえーーーー!」


 投げられたハンマーを額に受けてなお、ガンキョウは倒れなかった。


「ご覧のとおりだが、私は高い防御力とタフさが売りでな。冒険に出れば常に仲間を守る盾として活躍している」

「ご高説の前に服を着ろ」


(無視して)「だが、そんな私であっても弱点はあった。己の力だけでは決して超えられない高い壁! そう、チ●コだ。先日股間を集中攻撃してくる恐ろしいカンガルー型モンスターと戦ってな、己の無力さを思い知ったよ」

「………………で?」


「ここさえ鍛えられれば私は弱点を克服したも同然。そういうわけだ、わかってくれたか?」

「一ミリもわかんねえよ。なんでソレでオレんとこに来た」


「あなたは『なんでも鍛えてくれる鍛冶職人』ではないのか!? その称号は嘘偽りか!?」

「どこの世界にチ●コを鍛える鍛冶職人がいるんだよ! 鍛冶職人が鍛えるのはチ●コじゃねえ、武具だ!」


「男なら誰しもが脆くも立派な剣を携えてるものさ」

「ほう。だったらその弱点、遠慮なくこの大金槌でぶっ叩いていいんだな?」


「ひ、人殺し!? まさか将来有望なワタシを未来永劫☆子孫断絶させようという伝説の刺客か!」

「お前の世界にはチ●コをハンマーで殴りに行く刺客がいるのかよ」


「いやだがしかし……万に一つの可能性があるならば……。わかった、覚悟は決まったよ。あなたを信じてみよう」

「金床にチ●コを乗せようとすんな!? 神聖な道具が穢れる!」


「ワガママな鍛冶師だ。私にどうしろというのかね」

「はっ、そこの炉にでも突っ込んで焼き直しすればいいんじゃね?」 



「ぐああああああ!!!?」

「ノンストップで突っ込んだーーーー!?」



 ゴンザは高レベルヒーラーを緊急招集した!


 変態野郎ガンキョウの致命傷が治った!



「マジで死ぬかと思ったぞ」

「むしろなんで生きてんのか不思議でしょうがねえよ」


「だが、これでマイ・サンの防御力も……」

「汚ねえ焼きソーセージになっただけだろ――ってバカ、なに人の金槌を振りかぶって」


「フン!!」


 ゴキーーーン!!


「おお!? 痛くない、痛くないぞ! 今この瞬間、私の弱点は消えたあ!!」

「か、金槌に穴、だとッ…?」


「ありがとうゴンザ殿! 何でも鍛える男の名は伊達ではなかったな。まさか我が弱点をココまでバッキバキにしてくれるとは…………おや、ゴンザ殿? おーい?」


「……ガハッ、ガハハハ!」


 目の前で起こった狼藉にゴンザの何かがプッツン切れた。


 ヒドイ痕が残る金槌を手に持ちながら奥に引っ込む職人ドワーフが次に姿を見せた時、その手には光り輝くゴールデンハンマーが握られていた。


「商売道具を穢しやがって! お望みどおり腕によりをかけて鍛えてやろうじゃねえか」

「お、おぅ」


「ただし…………鍛え直すのはテメエの品性だあああああああ!!!」

「よ、よせ?! そこは剣ではなくキンタ――――」


  


 後に、無駄にオネエっぽくなったガンキョウは語る。

 

『あらゆるものを鍛える職人の名は伊達じゃなかったワ』と。

 

 

 

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