第5話催眠アプリをアンインストールしますか?

魔力によってつくられた暗闇の沼に僕は沈んでいく。

まったくなにも見えない。

どれほど沈んだかはわからない。

僕は感覚的に理解した。

僕はここで君塚みどりに魔力、すなわち生きる力をすいとられやがて死んでしまうのだ。

僕を虚無感におそわせ、世の中を憎みその憎しみのエネルギーを魔力にかえさせるためにあのアプリを僕にさずけたのだろう。

四宮あおいと高橋光希をあやつっていたのも彼女であろう。

四宮あおいと高橋光希に僕をいじめさせることによって憎悪の心をめざめさせるためだ。

僕はいわば君塚みどりにとって肥え太らされた家畜のようなものだ。


どれだけ沈んだかわからない。

真っ暗な闇の沼を僕は一人沈んでいく。

そうするとどうだろうか、そこに一人裸でうずくまる少女をみつけた。

なんとその少女は君塚みどりであった。

僕を罠にはめた彼女がなぜこんなところにいるんだ。


「やあ、君か。どうやら君も悪意によってここにおくられたようだね。私は君塚みどりの本体の精神生命体さ。私は私の悪意と嫉妬に体をのっとられたまぬけな魔女なのさ」

君塚みどりはそう自嘲する。

「なあ、君も知ってるだろう。一人はさびしいものだ。私も魔女という特殊な力を持つために一人だったのさ。仲間が欲しくて君をみつけた。そうしたら私は君のリビドーを源泉とする強大な魔力量に嫉妬してしまったのさ。そこを悪意のやつにのっとられてこんなところに閉じ込められたのさ」

君塚みどりは僕に抱きつく。

「一人はいやだ。一人はむなしくてさびしい。私は友だちが欲しかった。ただそれだけだったのに」

僕は君塚みどりの体を抱きしめる。

四宮あおいや高橋光希と同じように温かくて柔らかくて気持ちいい。

さびしいときはこうして抱きしめあえばいいのだ。


「義宗君、この手をつかんで!!もう離さないんだから!!」

虚空の天井方面から声がする。

それはまぎれもなく四宮あおいの声だった。

「義宗っち!!アーシの手もつかみな。絶対離さないから安心してよ」

その声はなんと高橋光希の声だった。

その声が聞こえたすぐあと、四本の手が僕のもとにさしだされる。

僕は必死にその手をつかむ。

この手はかつて感じたことのある温かいものだ。間違いない、彼女たちの手だ。

「君塚、しっかりつかまってろ」

僕は言う。

君塚みどりは僕の体に抱きつき、離れない。

蜘蛛の糸にぶら下がるカンダタの気持ちだ。

彼は自分だけが助かりたいばかりに他者を蹴落とした。

僕はそのてつはふまない。

手首はなくほど痛くて、首は呼吸するのも苦しいが僕はさしのべられた手を決して離さない。君塚みどりを落としたりしない。

やがて僕たちは暗闇から救いだされ、現実世界に戻ってきた。


「おまえはここから立ち去れ!!」

もう一人の君塚みどりに僕は叫び声をぶつける。僕に魔力というのがあるのならできるはずだ。

そうするとどうだろうか、その悪意が人の姿になったものは霧のように消えさった。

「ありがとう、義宗くん……」

バタリと本体の方の君塚みどりは倒れた。




それから数日が過ぎた。

僕はなんと三人の美少女に囲まれた生活を送るようになった。

「義宗くん、言ったじゃないの。ずっと一緒にいてほしいって。だからそうすることにしたのよね」

にこりときれいな笑みを四宮あおいは浮かべる。

「義宗っちとずっとゲームしたりアニメ見たり、アーシの漫画見て欲しくてさ。だからアーシもずっと義宗っちとずっと一緒にいてあげるよ」

高橋光希は僕に巨乳をおしつけて抱きつく。

「義宗君、私を取り戻してくれてありがとう。君塚みどりはずっとあなたの催眠ヒプノシスアプリの効果にかかることにしたわ」

君塚みどりは僕の首に抱きつく。

三人は交互に僕にキスをする。

もう僕は一人ではない。

もう僕はさびしくない。

三人ものかわいい女の子たちを彼女にしたのだから。

僕は催眠ヒプノシスアプリをアンインストールした。

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催眠《ヒプノシスアプリ》をインストールしますか? 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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