第4話
「夜明け前?」
オウム返しに警部は問い返した。いささか引っかかる言いまわしに思えたのだ。
若い刑事は、したりげな上目づかいに、
「"シャッター通りのバンクシー"の絵は、夜明け前に
「は?」
「とある東北の
「…………」
「それから、ほんの
「浮き出てた、だぁ?」
「マジで。他の商店街のケースも同様なんですってば。明け方近く、たまたま商店街を通りがかった人は、モレなく。ほんの少し目を離したスキに、いきなり絵がシャッターに現れた、って。口をそろえて証言してるんですよ」
若い刑事は、黒目がちの丸い目を場違いにキラキラさせた。
サンタクロースに
「そんなことより、オマエ。この状況どう見る?」
目元には
奇妙な角度でのけぞったノド元は、照明の加減もあってか、ひたすらに青白く、ほとんど出血は見えない。
だが、ノドの内側から気管を通って逆流したのであろう血液が、ポッカリ開いた口の中から吐き出され、細いアゴの周辺まで真っ赤に染めて、キメ細かい肌に乾ききった輪郭をこびりつかせている。
「
と、若い刑事は、首をひねりながら言った。
警部は、
「気にならないか、それ。
「え?」
若い刑事は、ここではじめて遺体が握りしめている
「あれ?
警部は、やれやれとタメ息をもらした。
「
「あ、……
「ってコトは?」
「まさか……
「そりゃ、オマエ。"ダイイングメッセージ"とかいう、アレだろ」
警部は、拍子抜けするほどアッサリ答えると、遺体のすぐ前方の
若い刑事がつられて目線を向ければ、
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