第29話 眷属

……このちゃぶ台のある部屋と小さなかまどのある土間は私の作った空間部屋と同じですが、ですね。土間にある中身が切れる事が無いお茶の葉の入ったかめとおせんべいの甕。それと常に水が無くならずに入っている大甕おおがめがあるのは同じ様ですが。







「ぱりっ、ぽりっ……ぱりっ…………ずずっ……ぱりっ……ずずずっ……本当に美味しいぞ!」


「緋色?……お茶も飲まないでどうしたのですか?」


「〇〇〇〇様!」


「……?……何々様ですって?聞き取れませんけど。……何処の言葉ですか?」


「やはりそうですよネ。……本当に申し訳御座いまセン。」


「何言ってるんだカーラ。〇〇〇〇って〇〇〇〇〇〇〇だぞ?」


「ポコちゃんまで変な言葉を混ぜて私をからかって、何の遊びなのですか?」



 





『邪気は全て祓われた筈だが。まだ息があるということは、此奴の善なる部分がそれだけ多かったからだろう。さて、先ずは眼を造り直してやらないと……』


『……お待ちなさい〇〇〇〇!その妖魔を助けるつもりですか!』


『何の用だ〇〇〇〇〇。けがれは祓った。此奴はもう妖魔じゃないだろう?』


『その者は多くの人を殺しました』


『その大半は人の命を虫けらのようにしか思わないような悪党くず共だろ!

 元はと言えばアンタを信仰し国まで任されていた者までもが、その悪党だったからだろ!だから優しかった此奴が大妖魔になった』


『…………………………』


『それにお前は今まで此奴に救いの手も差し伸べなかった。私が代わりにそれをしようとして何が悪い!これが〇〇〇〇〇の神とは聞いて呆れる』


『神とてこの世の全てに手が回らない事。ましてや自分一人の判断で罰やらなんやらとそれこそ神の仕事ではない事を。かつて〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇た貴女には分っている筈です。』


『ああ……だからこそなんだ。我が儘だとは十分に分っている。この先も剣として眠るだけの私だからこそ出来るんだ』


『……神の立場だからどうのと、本当はそんなことを言いたいんじゃないんです。貴女はその剣に自ら望んで封じられる前に、貴女の役目を継ぐ代理の神に神格を分けています。

 その子を救うためには眷属にする以外にはないのでしょう?これ以上神格を分けて下げてしまったら、あなた自身の事も!私の事も!忘れてしまいますよ!知る事も出来なくなります!……だからどうかやめてください』









みこと様。貴女は思い出せないでしょうが、貴女は神格が落ちたら自分自身や天界の事を忘れてしまうと知りながらも、私を救う為に神格を分けて眷属にしてくださいましタ。でも私を忘れている貴女に会うのが辛くて、それにどう顔向けしたらと、私は数百年ぶりに現れた貴女の匂いに喜びながらも、出迎えにも行けませんでしタ。どうかお許しヲ。でも私は間違いなく貴女の眷属でありまス。ここに改めて忠誠を誓いまス」


「でも貴女が自分で嫌いな色の両眼を切り裂いたの迄は思い出しましたよ。所々に忘れた部分もありますが。でもそれが何だっていうのです?神だの天だのと、そんな記憶なんか何も要りませんよ。今の私は、カーラは楽しく過ごしていますからね。

 忠誠なんか要りませんから、友達になりましょうよ緋色。それと私の神気のせいで赤と金になってしまった様で申し訳ありませんけど、片方だけでも緋色に近い色ですし、黒い濁りは無くなったのでどうか我慢してくださいね」


「……私の事を思い出して貰えたのですカ?……ひぐっ……何という奇跡でス……う……ひぐっ……」

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