第24話 山へ進め 10

「「大魔王!!」」


「誰が大魔王ですか!勝手に出世させないでくださいよ!」


「ポコちゃんまで口を揃えてなんなんですか!……って気絶してる。……ポコちゃん!……しっかりしてください!」


  ああ……こうなってしまいましたか。でも気絶しているのは丁度いいので、ポイっと私の異空間部屋へご招待。「お茶とおせんべいをちゃぶ台に用意してありますからご自由にどうぞ」と紙に書いてこれもポイっと。これで安心ですね。


「待ってくれてたんですか?……随分と余裕ですね」


「逃げる必要がないからな……噂の魔王とやらも女である限り……いっひっひ……俺の目をよく見てみろ!」


 あ……邪眼と言うものでしたね。


「あれ?……変ですね?……身体が動きませんね?」


 悪鬼もそうでした。だから気配が少しですが似ていたのですね。


「掛ったな……もう動けないだろ……いっひっひっひっひっ……先ずはその大きな胸を……ぐげっ!」


 私を手にしていれば悪鬼の邪眼も毒も咆哮ほうこうも効かない。そういう剣として造られましたからね。


「ここは撤退だ。覚えてろよ魔王!……」


 もう逃げても無駄なんですよ。……もう終わっているんです。







「危なかった。俺の邪眼が効かない女が居るとは……うっ……魔王に打たれた腹が痛え……回復薬だ。さてこれからどうするか?……ぐっ……腹が益々痛くなってくる。薬が効いていないのか?……」


「薬が効く訳がありませんよ。」


「魔王!……何で……ぐっ……身体も動かない……何かしやがったのか」


「貴方の気配はもう完全に把握済みです。誰に頼まれたのですか?」


「……知るか!……ぐっ……」


「まあ、尋ねる必要は無いんですけどね。あ……ありましたね。この黒い石さえあればもう用はありません」


「……何だ……その石は……」


「貴方の身体のかくですよ。これを読み取れば記憶が分かりますし、それに……」


「何で……そんなもの……が………………………………」


「……完全に灰になってしまいましたか。……苦しめたくは無かったんですよ。……でもこれは仕方が無い事なんです。……どうか風に乗って神の御許みもとへ」


 元は人間だった悪鬼の下級眷属は、かすり傷一つでも負わせてしまえばもう終わりでした。灰になりながら苦しんで消えて行きました。黒い石一つを残して。


 私は邪気を祓う為に打たれた剣でしたから。

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