小さい頃から、ずっと自分のハスキーボイスが嫌だった。
そんな女の子和歌でしたが、高校での出会いをきっかけにある変化が。
自分の声を良いと言ってくれる人がいた。声に惚れたと言ってくれた。一緒にバンドを組もうと誘ってくれた。
ずっと自分の声が嫌いだっただけに、その言葉は衝撃で、和歌はそう言ってくれた彼に強く惹かれていきます。
本作の見どころは、そんな淡く純粋な恋心──だけでは終わらないところです。
もちろん、彼に惹かれるところも恋していくところもとっても素敵。ですがこの恋は、楽しいまま、きれいなままではいられません。
恋をするなら、もちろん楽しくハッピーエンドを迎えた方がいい。だけどそうはならない辛さ、モヤモヤが胸に突き刺さります。だけどどうしてでしょう。そんな和歌の姿に、読んでいてどうしても惹かれてしまうのです。
切なく苦しく、だけど心を捕らえて離さない。そんなビターな恋の物語です。
ハスキーな声にコンプレックスを持っている女の子、和歌。
小学校中学校と、低い声のせいでからかわれてきましたけど、高校生になって友達の男の子、景大に言われました。お前の声に惚れた、一緒にバンドを組んでほしいと。
自分も声好きなので声に惚れ込む気持ちはよくわかります。
今までコンプレックスだったハスキーボイスですけど、好きだって言ってくれる人がいると、嬉しくなりますね。
しかしバンドを組んでハッピーエンドとはなりません。
和歌が景大に恋心を抱いていたこと。そしてその想いをくすぶらせたまま音楽活動を続けることで、彼女達の関係は複雑になっていきます。
歌うのは好き。一緒にいたら楽しい。だけど実らない恋心が、胸のモヤモヤを広げていく。
複雑で切ない、音楽と恋の物語です。