第7話 3人目が合流。一段落ついたので色々聞いてみる(経験値の話)

明日乃あすの、悪いんだけど、今、ちょうど、秘書子さんが来てくれたみたいだから少しこの世界の話聞いてみるわ。その間に一角いずみにこの世界のことや神様の事を説明しておいてくれ」

俺はそう言って神様の秘書? 的な存在の秘書子さんと向き合う。


「えー、私も秘書子さんに聞きたいこといっぱいあるのに」

明日乃あすのが本当に残念そうに騒ぐ。


「私も聞きたいことは山ほどある」

一角いずみも不満を言う。


「とりあえず、一角いずみへの説明が終わったら俺に聞きたいことを言ってくれれば俺が聞いて答えるから、な。それに一角いずみが今の何も知らない状態で質問始めたら二度手間、三度手間になるから」

俺はそう言って、明日乃あすの一角いずみへの説明をお願いする。


「しょうがないな。じゃあ、こっちで、私達が知っていること説明してあげるね、一角いずみちゃん」

そう言って少し離れたところに座り雑談を始める二人。


「秘書子さん、すみません、お待たせしました」

俺は秘書子さんに敬意を示し、なるべく敬語で話す。

 前回は秘書子さんが現れたのがいきなりだったし、明日乃あすのが突然倒れ、切羽詰まった状態だったので、かなり失礼な口調で会話してしまったことを思い出す。


「いいえ、それでは、聞きたいことがあればお答えします。あくまでも聞きたいことだけです。私は人の脳では把握しきれない多くの知識を持っているので、すべてを教えるとあなたの脳が何度も壊れるくらいの知識量になってしまう、それゆえ、このような対応になります」

秘書子さんが無表情で無感情な声と顔でそう言う。

 なるほど、俺の体への配慮もあったのか。まあ、無表情で無感情なのは元々っぽいけどな。


 俺は改めて、仕事のできるOLさんみたいな。ボブカットでメガネをかけた真面目そうな秘書子さんに話しかける。顔の作りとかはめちゃくちゃ美人なんだけどな。


「とりあえず、今やりたいのは、レベルアップです。どうすれば、RPGみたいに経験値が稼げてレベルアップができますか?」

俺は心の中で秘書子さんに問いかける。なるべく敬語で。


「動物や魔物を倒し、『全能神様にマナをお返しします』とお祈りすれば魔物達の体を構成するマナが全能神様に還り、浄化されて、半分があなたたちに戻ります。そのマナが経験値となり一定の経験値がたまるとレベルアップすることができます。あくまでもレベルアップというのは全能神様があなた方に分かりやすく認識させるために作ったシステムで、実際は受け取ったマナで筋肉などを再構成して体が強くなる。そんなニュアンスです」

そう答える秘書子さん。

 なるほど、動物や魔物を倒して全能神様に祈ると経験値に還元してくれる感じか。


「さきほど倒したオオカミとかでも同じことができるのですか?」

俺はついさっき倒したオオカミを思い出しそう聞く。


「可能です。ただし、食べられる動物は食べた方がマナの上昇率が高いので、食べられる動物は解体して食べることをお勧めします。それと、毛皮など素材を解体してから全能神に祈れば必要な素材は手元に残るので毛皮などは剥いでからお祈りすることをお勧めします。残った骨や使わない臓物などは祈れば経験値に変わりますのでお祈りは忘れずにすることをお勧めします」

と秘書子さん。

 なるほど。取れる素材はとってから経験値化する。食べられる動物は食べるとマナとして吸収されて肉体になるって感じか。


「というか、オオカミの毛皮の剥ぎ方なんて知らないぞ」

俺は思わず口にする。


「必要であれば私が毛皮の剥ぎ方をレクチャーすることはできます。ただし、現在、道具がないので、皮を剥ぐのは難しいです。昨日の夜、明日乃あすの様と話をしたように黒曜石を入手してナイフを作ることをおすすめします」

と秘書子さん。

 すごいな。明日乃あすのの本の知識と秘書子さんの無限の知識があればなんとかなるような気がしてきたぞ。

 とりあえず、今日は毛皮を無視して経験値化する感じかな。

 

「そういえば、経験値って、祈った人が全部手に入れる感じなのですか?」

俺は思いついたことを言う。さっきの場合、俺がオオカミを2匹、一角いずみも1匹倒している。そして明日乃あすのも倒しはしなかったが戦いには参加したし、オオカミをひきつけてくれたから何とかなった部分はあるしな。


「経験値の分配は、戦闘に参加した全員の意識を平均して、貢献度で分配します。なので、戦闘に参加していない人への経験値の分配はできませんし、魔物を倒していなくても貢献していたと仲間が感じれば経験値は貢献度に応じて分配されます。ちなみにその分配も私の仕事となっております」

と秘書子さん。

 なるほどな。秘書子さんが俺たちの心を読んで一番頑張ったと思った人に多めに分配していく感じか。


「それと、一番、気になったんですが、マナって何ですか?」

俺は一番大事なことを聞いてみる。昨日、明日乃あすのもマナは経験値でありMPでありスキルポイントでもあるかもしれないって言っていたしな。


明日乃あすの様が言っている通りです。マナはこの世のすべてを構成する素となるものであり、人はもちろん、動物、魔物、石や木にあたるまでマナで構成されています。よって、レベルアップ、体を構成し直す場合もマナが必要となり、魔法を使う場合もその原動力としてマナが必要となり、スキルを覚える場合も、脳や体に経験や知識を植え付けるための動力や素材としてマナが必要になります」

秘書子さんがそう言う。

 なんか、科学で習った分子とか原子って話かな?


「分子や原子や電子、それをさらに分解した物、神様の力となる『信仰心』や『願い』に近い、より精神世界エレメンタル的なエネルギーとお考え下さい」

と秘書子さんが補足してくれた。

 電子よりもっと細かい物ってことか。よく分からないけど。 


「りゅう君、一角いずみちゃんに説明終わったよ」

そこで明日乃あすのから声がかかる。


「ああ、ちょうどよかった。いま、動物や、魔物を倒した時の経験値の入手方法を聞いたから試してみよう」

俺はそう言って、オオカミの死骸に向かうと、


「全能神様にマナをお返しします」

俺はそう口ずさみ、祈りをささげる。


 すると、3匹のオオカミの死骸が輝き出し、神様が消えていくときのように透明になっていき、最後は消え去る。


「ステータスオープン」

俺は声に出してステータスを見る。



名前:りゅうじ

職業:ノービス


レベル 6(ステータス合計36)


ちから   9

すばやさ  8

ちりょく  4

たいりょく 9

きようさ  6


信仰心 低


HP 9


マナ/レベルアップに必要なマナ 9/36

スキル使用枠/スキル習得可能枠(0/36)


スキル

①生活級 なし



「経験値9? 少な!!」

俺はステータスを見て驚く。


「私なんて3だよ。まあ、オオカミ倒してないけど」

明日乃あすのが寂しそうにそう言う。


「私は6だな。あれだけ命がけだったわりには確かに少ないな」

一角いずみも少しがっかりした感じでそう言う。


 明日乃あすのがちゃんと説明してくれたのか、当たり前のようにステータスウインドウを見ている一角いずみ。順応性が高いな。この子は。


「経験値の計算式を説明しますか?」

秘書子さんが俺たちの不満の声に抗議するようにそう声をかけてくる。無感情だけど。


「一応聞いておこうかな」

俺は心の中で秘書子さんに声をかける。


「今回、倒した相手はオオカミ。相手が動物なので1/2の補正がかかります。魔物の場合この補正はありません。また、先ほど説明の通り、倒した敵のマナの半分は全能神に返されますのでさらに1/2されます。そして、倒した敵の基本マナ量はレベルと肉体を構成するマナ、要はステータス総計に準じたものになりますので、今回倒したオオカミは全てレベル5。ステータス総計は25となり、25÷2(動物補正)÷2(全能神補正)=6となり、1匹の経験値は6です。それを3匹ですので、パーティに入る経験値は18。それを戦闘に参加した3人の貢献度で分配すると、流司りゅうじ様=9、明日乃あすの様=3、一角いずみ様=6となります」

秘書子さんが経験値の計算方法を丁寧に説明してくれる。口調は変わらず無感情だけど。


 とりあえず、明日乃あすの一角いずみにも経験値の入手方法と計算式を口頭で教えてあげる。


「なるほど。動物の場合経験値が少ないのか。魔物? 見たことはないがRPGに出てくるような敵を倒すともっと経験値は高くなるわけか」

一角いずみが俺の話を聞いて一応納得する。


一角いずみちゃん、この島には魔物はいないらしいから、当分は魔物退治はいらないらしいよ」

明日乃あすのがそう付け足す。


「とりあえず、やたら、リアルな割には、こういう部分はゲームっぽいんだな」

呆れるようにそう言う一角いずみ

 俺も明日乃あすのも呆れるように半笑いして同意する。


「まあ、明日乃あすのから聞いたと思うが、とりあえずサバイバル生活を続けて衣食住を充実させて生活レベルを向上させるのが俺たちの今の仕事らしい」

俺はそう一角いずみに言う。


「流司、お前とは子作りなんてしないからな。できるなら私は明日乃あすのと子作りする」

一角いずみが俺に向かってそう言う。

 明日乃あすの、そこまで説明しちゃったのか。というか、明日乃あすのと女同士で子作りって発想が意味不明だ。


「まあ、これから、別の仲間が来た時に男も増えるかもしれないし、そのあたりは後々考えればいいんじゃないか?」

俺は呆れるように、そして明日乃あすのに勘違いさせないようにそう言う。


「仲間に男性は含まれません。現在、遺伝子の多様性は必要ありませんし、恒常性を高めるうえで男性は一人としました。なにより、男性が二人以上になると、戦いが起き、人口減少の理由になるからです。全能神様曰く、NTR(ネトラレ)防止対策だという事です。新たな男性は次世代以降に転生、導入させる予定です」

秘書子さんが、しれっ、と余計な情報を入れる。というか、全能神、本当に神様か? 元の世界の変な知識もありすぎる。


「なんだそりゃ? つまり、一角いずみとも将来的には子作りしないといけないってことか?」

俺は慌てて、心の中で秘書子さんに抗議する。


「二人の同意があればの話です。一応、仲間として準備した6名の女性はみな、流司様と相性がいい女性を選んでありますので、できれば子孫繁栄の為に子作りを推奨します」

秘書子さんが、しれっ、と一角いずみにもその気がありそうなことを言う。

 いやいや、それはないだろ? 一角いずみにはいつも怒鳴られているし。


 俺は頭が痛くなったので、その話題から避ける。


 その後、明日乃あすのが秘書子さんに聞きたいことを伝言ゲームのように伝えて解答を貰う。これって、明日乃あすのが秘書子さんと直接話せた方が正解なんじゃないか? 頭いいし。


 とりあえず、明日乃あすのの妙案で、マッピング機能があることが分かり、歩いて探索するとマップが埋まるオートマッピングのウインドウが追加された。

 まあ、ほとんど歩いていないのでマップは真っ黒だけど。


 あと、緊急チャット機能もあるらしい。ただしこれは送信者側のマナを消費するので緊急時以外の使用は推奨されないそうだ。レベルアップが遅れちゃうからな。


 それと、アイテムボックスというスキルとチートスキルやチートステータスみたいなものはないらしい。特にアイテムボックスは時空を歪めたり、時間を止めたりする、結構この世界に悪影響を与えるような原理らしいので神様でも避ける禁断のスキル扱いだそうだ。

 まあ、確かにそうだ。RPGで最後のボス相手に頭からアイテムボックスをかぶせて入口を締めたら最強のギロチン武器だもんな。大量に石入れて頭から降らせたり、水を大量に入れて洪水をおこしたり、頭のよくない俺が考えてもいくらでも危険な使い方は思いつくし。

 とにかく地道にレベルを上げて、地道に素材を集めろということらしい。


 あと、この島にも季節があるらしいので注意された。1年が360日で1月が30日の12カ月。今は4月2日の春らしいが、冬が来る前に冬支度か、夏冬が逆転する北半球に移り住む必要があるらしい。気候は日本の沖縄というか九州のあたり? 冬場、山やふもとには雪も降るそうだ。

 気候とか、なんか、そのあたり? 無理やり島を渡らせて魔物と戦わせよう的な魂胆? 鉄鉱石など貴重な資源も北の方の島にあるらしい。あからさま過ぎる。


「とりあえず、冬になるまでに、お祈りを沢山して、仲間を集めて、この島を探索して、衣食住を充実させる感じかな? で、必要だったら他の島を探索することも考える感じ?」

明日乃あすのが聞きたいことを大体聞けたみたいで満足顔でそう言う。

 明日乃あすのは頭の切り替えも早いな。


「とりあえず、何をすればいい?」

一角いずみが俺と明日乃あすのにそう聞く。


「そうだな。とりあえず陽も登ってきたし、今日の食料と水の確保をして、薪も確保して、オオカミに襲われた時に対応しやすいように柵で家を囲う感じかな? あと、一角いずみの家も作らないといけないな」

俺はそう言って今日の予定を立てる。


「私は明日乃あすのと一緒の家でもいいぞ」

一角いずみがそう言うが、明日乃あすのがあからさまに嫌な顔をする。

 確かに身の危険を感じるよな。女同士でも。さっきの発言を聞けば。


「まあ、プライベートスペースは必要だ。一応一人1個のシェルターを確保しよう」

俺はそう言って作業に入ろうとする。


「あと、紐も欲しいよね。雑草を編んで荒縄みたいな感じ? たぶん、そういうのがあった方が柵とかも作りやすいだろうし」

明日乃あすのがそうアドバイスする。


「じゃあ、とりあえず、バナナとヤシの実を確保したら、藁みたいな雑草を集めて紐づくり? で、紐作っている間に俺が柵の材料や一角いずみの家づくりの材料を探してくるよ。あと、川と竹と黒曜石探しだな。黒曜石はちょっと遠くにありそうだから竹と川を今日は探す感じかな?」

俺は今日の指針をそう発表する。


「川にお魚さんとかいたらいいね。かにさんとかでもいいけど」

明日乃あすのが楽しそうにそう言う。


 苦労が絶えないサバイバル生活だけど、楽しむ気持ちも大事だよな。


 次話に続く。

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