任命式
第19話 アシュレイ
今日は五月二日。エスペランスバトルの翌日だ。
守り神とされる
その名をアシュレイ・トーネソルといった。
アシュレイには小さな頃から抱いている夢があった。
彼の実家があるピュルテは自然が豊かで夜になると数え切れない程の星々が木々の間から瞬き輝く。
この惑星の中でも一番、星が綺麗に見える場所として有名なピュルテだが、その中でも特に星空が綺麗と言われているのが『ピュルテの丘』であり、その丘は神聖な場所として扱われ、四聖星以外立ち入り禁止になっている。
アシュレイは四聖星になって丘に登り、その世界一綺麗な星空を写真に撮って家族に見せたいと思っていた。
朝から早起きし、今日の任命式が待ちきれないとそわそわしていた彼は朝ごはんを食べ身支度を済ませ、ワクワクした気持ちで勢いよくドアから飛び出した。
「いってきまーす!!」
彼の母と兄が行ってらっしゃいというのを聞いて前を向いた瞬間に地面に転がっていた大きな石につまづいて転倒した。
「痛っっ!!」
な、何……?と石の方に目を向けるとフハッと鼻で笑う声がした。
「今年中学二年生になった奴が石で思いっきりコケてやんの、おっかしいや。転んだ瞬間撮っとけば良かったなぁ」
アシュレイの兄が玄関のドアに寄りかかりながらヤギのようにニタニタ笑って彼を見ていた。
アシュレイの兄はとてもイタズラ好きなため、アシュレイはこの大きな石は兄が仕掛けたものだと悟った。
数日前には、兄が塩と砂糖のそれぞれのシールを剥がして逆にし、アシュレイはそれに気づかずにコーヒーに塩を入れてしまった。
ごくりと飲んだと同時に
「ぶっ!!げっほごっほ…しょっぺ!!」
と吹き出した彼を見て兄は腹を抱えて笑い泣きしていた。
今回も弟を犠牲にした兄に腹を立ててアシュレイが言う。
「兄さん、こんなくだらない事してないで今年高校三年生になったんだから勉強でもしたらどぉですか?」
「まぁまぁそう怒らないで。兄さんが構ってあげてんだからちょっとは喜べよ」
と兄は猫撫で声で返した。
アシュレイはふんっと短く言って踵を返し、任命式が行われるアンヴァンシーブル城のある都市──スぺクタルフェリックへ小走りで向かった。
途中何度か転びそうになりながら。
アシュレイが城の方向に向かって走っていったことを確認して、アシュレイの兄は溜息をつきながらドアを閉めた。
「
ぼそっと口から出たその言葉は言った兄以外の誰の耳にも入らなかった。
【お知らせ】アシュレイら四聖星のイラストを近況ノートの方に載せているのでそれと合わせてご覧下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます