1-2 学校と四聖星①
学校はとにかく大きく、お城のようだった。
薄茶色の壁に深緑色の屋根のその建物はいかにも歴史が長いような感じがする。
小学生のエレンの身長の四倍近くの高さがある
どうやらこの学校のシンボルは太陽と月みたいだ。
月の石が乗っている右側の柱には『スペクタル・フェリック学園』と彫られていて、左側の太陽の柱は学生証をあてる四角形のマークが自分の存在を主張するかのように光っている。
エレンが学生証をあてるとギギギ…と音をたてながら門が開いた。エレンはこれから始まる生活に期待し、目を輝かせながら門をくぐった。
門をくぐる前から建物の大きさや色は見えていたが、くぐる前後ではまた違う景色が楽しめる。
”コ”の字の校舎の中央校舎の真ん中にはロンドンのビックベンと呼ばれる鐘の塔のようなものがあり、その塔には太陽の光を取り込んで煌めくステンドグラスの窓や時計がついている。
「すごい……綺麗……」
エレンは学生証を仕舞い、視線を左右に泳がせて学校の装飾を視界に入れながら職員室を目指した。
校舎の中は明るく、外の例年より少し暖かい四月の気候を忘れてしまうような快適な温度だった。
廊下を歩いていくと、突き当たりに『職員室』と書かれた木札がドアの上に固定された部屋があった。
エレンがドアを開けようと、ドアのふちに手をかけた瞬間、勢いよくドアが開き、大人の女性が目の前に飛び出してきた。
二人とも直ぐに「うわぁぁぁ!?」と大きな声を出し、数秒間互いに硬直した。
先に口を開けたのは女性だった。
「ん?初めましての顔だね。あっ!もしかして転校生ちゃんかな?」
「あっ、えっと、初等部の2-Aに転校してきたエレンと申します」
「おお!私の担当するクラスよ!私のクラスに女の子が来るとは聞いていたけど、あなただったのね!私は2年A組の担任の
長月と名乗る先生がぱっちりした目に艶のある茶髪を揺らして微笑みながら言った。
見る限り、厳しい人では無さそう。
「よろしくお願いします」
エレンも、幼い子らしい、くりっとした黒い目を先生に向けて薄ピンク色の髪をそよ風の流れに任せ、ぺこりと頭を下げた。
花先生は周りに花々が飛んで見えるような、ほんわかとした優しい先生だった。
石鹸のいい匂いがするこの先生はきっと自然や小動物を操る魔術師だろうなとエレンは思った。この先生がドラゴンを操るとはとても思えなかった。
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