第19話 シュリンバー・シュトレイという男

 シュリンバー・シュトレイ大尉たいいは、ヘッケルト教授奪還隊に参加することによっての昇格を断固 こばんだのだそうだ。


 何でも、そうやってまだ何も成し遂げていないのに自動的に昇格するのはおもしろくもなんともないと上層部の幹部連中に言い放ったらしいのだ。


 だから、シュリンバー・シュトレイ大尉と隊長同士の挨拶をする時はかなり緊張した。

 何か嫌みのひとつでも言われるんじゃないかと思ったからだ。


 しかし、その心配は杞憂きゆうに終わった。


「ルーフェンス・マークス准尉じゅんい! キミのところの隊員はみんな個性的で実にいいですね! 本当にうらやましいくらいですよ! ハッハッハッ! とにかくお互い頑張りましょう! さぁ、手を出して、握手、握手!」


 勝手に昇格拒否の件で気難しい人だと思い込んでいたのだが、シュリンバー・シュトレイ大尉はとても大きな声で笑う裏表のない快活かいかつな性格の人のようだった。


 それに金髪、碧眼へきがんの優しい雰囲気のイケメンで、性格も見た目もほぼ完璧だとこの時すでに俺は感じていた。


「ツーツンツ王国一の剣士ソーズマンであられるシュトレイ大尉とお話しできて大変光栄です!」 


「まあ、そんなに固くならないで! 隊長同士仲良くやっていきましょう! でも、隊長だからって気負きおう必要なんかないんですよ! 隊員はみんな仲間だと思っていればそれでいいんです! ハッハッハッ!」


「はいっ!」


「ハッハッハッ! いい返事ですね!」


「ありがとうございます!」


「その返事ができるだけでキミは将来有望ですよ!」


「本当ですか?」


「もちろん本当です! ワタシは嘘が大嫌いですからね! ハッハッハッ!」


 だが、本当に裏表がなさすぎるので、


「・・・・・・ところでキミはあの噂のジュナ・ヘッケルトと付き合っているらしいですね! 隠さなくても大丈夫です! 幹部連中には内緒にしてあげますから! ・・・・・・実は、ワタシの同期も彼女と3日間だけ付き合って、なぜかその直後に軍を辞めてしまったんですよ。とても有望な人材だったんですけどねぇ。そういえば最後に会った時には別人みたいにげっそり痩せていたっけ? 相当激しい3日間だったんでしょうね! ハッハッハッハッ!」  


 などと、少し遠くでみんなといるジュナ・ヘッケルト本人にもひょっとしたら聞こえてるんじゃないかというような大声で言ったりするのでこちらがヒヤヒヤしてしまう。


 それで俺は話題を変えようとこんなことを言ったのだ。


「でも、こんな呑気に結成パーティーをしてて大丈夫なんでしょうか? 今頃ヘッケルト教授はひどい目に遭ってるんじゃ・・・・・・?」


「ハッハッハッハッ! ヘッケルト教授のことをナメてはいけない! あの人はきっと今の状況を楽しんでいるはずですよ! だって魔王に体を乗っ取られるなんてなかなか経験できないことなんだから! ワタシも1度は体験したいものです! ほんとヘッケルト教授がうらやましい!」


 この人はどこまで本気で言っているのかよくわからない。

 でも、ヘッケルト教授のことを認めているというのは確かなようだ。


「だからキミたちもヘッケルト教授のことは一旦忘れてこの世界を旅することを楽しんでください!」


「一旦忘れて・・・・・・?」


「そうです! 何と言ってもキミたちは我々の秘密兵器なんですから! まずはワタシたちが全力でヘッケルト教授の捜索をしますから、まだまだ伸びしろのあるキミたちはこの世界を旅することを楽しみながらゆっくり力をつけていってください!」


「はぁ・・・・・・」 


 つい納得できない気持ちが声に出てしまった。


「なんですか? 元気がないですねぇ? ほら、さっきみたいに元気よく!」


「はいっ!」


 と、俺は慌てて元気よく返事をする。


「よろしい! では、くれぐれも気を付けて楽しんできてくださいね!」


「はい! そちらもお気をつけて!」


「ありがとう! ああ、そうそう、ワタシの隊のヤーバス・ロダノ第139番伍長ごちょうはキミの親友らしいですね。彼はワタシがしっかりきたえてあげるつもりですから、今度会う時には別人みたいにたくましくなっていると思いますよ!」


「楽しみにしています! ヤーバスのことをよろしくお願いします!」


 そう言って、シュリンバー・シュトレイ大尉たいいとの隊長同士の挨拶を終え、みんなのところに戻ってくるとなぜか全員でじゃんけんをしていた。


「なんでじゃんけんなんかしてるんだ? 何か決めてるんだったら俺もまぜてくれよ!」


 と、俺が言うと、


「駄目です! 兄さんはこのじゃんけんには入れません!」


 とユアール・プライツに言われてしまう。


「何でだよ?」


 と訊くと、女子たちみんなにこう言われた。


「「「「「「だって、だから!」」」」」」



※※※

第19話も最後までお読みくださりありがとうございます!


もし少しでもおもしろいと思っていただけたら、作品フォローや★評価をしてもらえるとすごくうれしいです!


【次回予告】

第20話 隠れ職業と最後の夜!


隠れ職業とは?


そしてついにツーツンツ王国での最後の夜!


旅立ちを前に何を思う?第20話っ!


どうぞ続けてお読みくださいませ

m(__)m





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