第13話 魅惑のダンジョンマスター❤️

 そのダンジョンマスターは迷宮ダンジョンの第4層にいた。


 ダンジョンマスターとは、その迷宮ダンジョンを支配するボスキャラようなものだというのがこの世界に来る前の俺の認識だった。


 この世界では、ダンジョンマスターを倒すと、魔物はいなくなり、その迷宮ダンジョンは聖なる洞窟、聖洞せいどうという名前で呼ばれるようになる。


 すると周辺地域の治安は劇的に良くなり、地価は上がり、観光客は激増し、地域経済はものすごい速度で潤っていく。


 だから冒険者は必ずダンジョンマスターを倒すことを義務づけられているのだ。




 その時、俺たちの目の前にはその迷宮ダンジョンを支配しているらしいダンジョンマスターがいて、そいつは俺たちにこんなことを言ってきたのである。


「冒険者さん達、目的であるあたしを見つけ出すまで大変だった? 疲れたでしょう? 早くママのおっぱいにおいで! いっぱいバブバブさせてあげるから! ママのおっぱいにいっぱい甘えちゃおう!」


 その迷宮ダンジョンのダンジョンマスターは妖艶な超美形の巨乳サキュバスだったのだ。


 だが、俺はそのダンジョンマスターのサキュバスにそれほど魅力を感じなかった。


 同じ男を甘えさせて駄目にするタイプならば、あの図書館司書のテス・ハミンの方が余程色っぽい(サキュバスより色っぽい人間の女ってかなり怖い気もするが)と正直思ったし、何と言うか、そのサキュバスは見た目はめちゃくちゃ色っぽいのだが、喋る内容やその声音があんまり色っぽくなくて、なんとなくやらされてるような(誰に?)感じがあって、自分で好きでノリノリでやっているという感じでは全然ないのだ。


 そういうのっていくらエロくてもしらけちゃうだろ?


 それなのにABCはまんまとおびき寄せられて、手を伸ばせばそのサキュバスのぷるぷるの巨乳に触れられそうなところで、落とし穴のようなのものに引っ掛かって奈落の底に落ちていってしまった。


「 「 「うわぁぁあああああっ!」」」


 という情けないユニゾンの叫び声だけを残して。


「君も一緒に落ちれば気持ちよくなれたのに! おいでぇ! 今からでも気持ちよくなろ! ママのおっぱいで頭ん中トロトロになっちゃおう!」


 俺がその誘惑にも何の反応も示さないでいると、アレーシャ・シャーベ軍曹がそのサキュバスに向かってこんなことを言った。


「ハッハッハッハッ! 残念だったな、魔物よ! われの部下は貴様のつまらん胸なんかよりこの我のおっぱいが好きなのだ! ・・・・・・そうですよね? ご主人様?」


 ご主人様?


 と俺が頭の中をクエスチョンマークでいっぱいにしていると、ユアール・プライツがアレーシャ・シャーベ軍曹に続いてこんなことを言ったのである。


「違いますよ、アレーシャ・シャーベ軍曹! 兄さんが気になって気になって仕方ないのはボクのこのかたちのいいちっぱいなんですからね! そうですよねぇ、兄さん?」


 そして、さらに俺が両手で握っていた剣までが喋り始める。


「違う、違う! お兄さんの好きなのはカリスマギャルモデルの美巨乳だから! JK卒業したてのギャルのおっぱいが見たいんだもんねー、お兄さん!」


 これには、さすがのサキュバスも驚いたようで、俺に向かって半ば感心したような声でこう言ってきた。


「君は見かけによらず複雑な性癖を持っているんだね。ネットで男の子はみんなマザコンだって読んだことあったからやってみたんだけど、あたしにはやっぱり合わないみたい・・・・・・。そもそもあたしに男の子をエッチに誘惑するなんてことできるはずないんだもん!」


 そして、なんとそのサキュバスはメソメソと泣き出したのだ。


「14からずっとアイドルしてて、やっと二十歳はたちでセンターになれたのに・・・・・・歌番組の収録前日にこんなに転生しちゃうなんて・・・・・・やっぱりラノベ読みすぎたのがいけなかったのかな? 早く戻りたいよ、アイドルに! でも、今から戻ってももう歌番組の収録終わっちゃってるんだろうな。・・・・・・もう、死にたいよ、あたし! ねぇ、君があたしのこと殺してくれる? ・・・・・・君だったら別にいいかな? ・・・・・・ねぇ、あたしのこと殺して! こんなサキュバスのおばさんでいるくらいなら君に殺された方が幸せだよ、あたし!」


 その投げやりな言い方にカチンときて俺は妙なスイッチが入ってしまったのだと思う。


「甘えるなよ! 辛いのはお前だけじゃないんだ! 殺してとかそんな簡単に言うなよ! 俺が相談に乗ってやるから、簡単に命を諦めるなよ! まだお前はちゃんと生きてるじゃないか! 俺の部下のあの3人はもう死んでるかもしれないんだぞ! あいつらの分までちゃんと生きろよ!」


 今思い返しても訳のわからないことを言っているなぁと思う(ABCは死んでなかったし)のだが、相手にはなぜか刺さったようだった。


「ありがとうっ! こっちに転生してからそんな優しい言葉掛けられたの初めてだよ! それに、あたし、お前って言われたのも初めて! なんかゾクゾクしちゃった! あたし、ソフトMなのかな? 君のこと好きになっちゃったみたい! ・・・・・・決めた! あたし、君に振り向いてもらうために、サキュバスなんか辞めて、こっちでもアイドル目指すね! 君がどうしても自分のものにしたいって思っちゃうくらい素敵なアイドルになっちゃうんだからね! 覚悟しといてよね! 言い忘れてたけど、あたしの名前は野々宮ののみやみふゆ! これから君が大好きになっちゃうアイドルの名前だからよーく憶えといてね!」


 不思議なことにそう言い終わると、彼女は妖艶なサキュバスから清純派のアイドルの見た目に一瞬で変わってしまった(でもなぜかおっぱいは巨乳のままだった!)。




         ⚫




 大闘技場で行われた伍長順位戦の俺の初戦の相手は、なんとの第1番伍長のロキヤン・ガタラだった。


「じゃあ、第1回戦 第1試合を今から始めようと思うのですが・・・・・・時に、ルーフェンスくん! 横断幕を持って君のことを応援しているわたしの娘とその親友の横にいる人たちは誰なのですか?」


 そう言うヘッケルト教授の見ている方に目を遣ると、なんとジュナ・ヘッケルトとテス・ハミンが仲良く並んで談笑していた。

 

 そして、そのテス・ハミンのさらに隣にはアレーシャ・シャーベとユアール・プライツと野々宮みふゆが並んで座っていた。


 それで、俺はどうしようかと少し思ったのだが、正直にこう説明した。


「あれは、俺の上官と部下と・・・・・・アイドル志望の元サキュバスです」



※※※

第13話も最後までお読みくださりありがとうございます!


ここまでで、俺(ルーフェンス・マークス第142番伍長)のことを応援してやろう、もう少し見守ってやろうと思われたら、作品フォローや★評価をしてもらえるとすごくうれしいです(応援コメントやレビューコメントもお待ちしております!

)!


【次回予告】

第14話 ギャル💕とトラブル発生!


 伍長順位戦初戦が始まっているのにトラブル発生!

 ちゃんと戦えるのか? な第14話っ!


 どうぞご期待くださいませm(__)m





         

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