第10話 永遠の部下❤️ユアール・プライツ登場!

 何も俺たちは毎日講義ばかりを受けているわけではない。

 講義は週2回くらいで、あとは伍長ごちょうとしての任務に当たっている。


 第142番伍長がひきいるのは、第142番隊である。

 隊員はたったの4人。

 ツーツンツ王国魔術軍では伍長は自分を含めてたった5人の隊の隊長なのだ。

 

 その日は、初めて142番隊の隊員たちと顔を会わせることになっていた。


 その小一時間ほど前に、ヤーバス・ロダノ第139番伍長から俺はこんな話を聞かされていた。


「とにかくユアール・プライツというやつには気をつけるんだぞ! 前の第142番伍長だったやつはのせいで軍をクビになっちまったんだからな!」


 そんな前情報を得ていたので、ユアール・プライツを初めて見た時には驚いた。


 どう見ても女にしか見えなかったからだ。


 黒髪ボブの超絶美少女。


 それが、ユアール・プライツという部下を直接見た上での第一印象だった。


 前世で俺が高校生だった頃、好きだった女優やアイドルはみんな黒髪ボブが似合う美少女だった。


 そのどの女優やアイドルよりも圧倒的にユアール・プライツの方が美しかった。


 だから、ユアール・プライツに、


「ルーフェンス・マークス第142番伍長! 敬愛の念を込めて、と呼んでもいいですか?」


 と言われた時、俺はうっかり、


「ああ」


 と答えてしまったのだ。


 これは後でヤーバス・ロダノ第139番伍長に聞いた話なのだが、前の第142番伍長はこのユアール・プライツに何度もしつこく交際を申し込んだために(上官と部下の恋愛はもちろん禁止されている)軍を追われることになったのだそうだ。


 それを聞いた時に、情けないことに一瞬俺は、自分は大丈夫だろうかと思ってしまった。


 それほどユアール・プライツの容姿は誰がどう見ても圧倒的だったのである。


 それでユアール・プライツの方に悪意というか、相手を破滅させようという意志があるのかと言えば、どうもなさそうなのである。


 ただ人懐っこいだけで、別にそこに企みのようなものは一切感じられないのだ。


「兄さん! 聞きましたよ! あの女・・・・・・ジュナ・ヘッケルトにベッドの上で誘われたのにキッパリ断ったんですよね! すごいですよ! 今までベッドであの女に誘われて断った男なんてひとりもいないんですから! 兄さんは英雄ですよ! ・・・・・・でも、なんでキッパリ断ったのに、まだあの女とちゃんと別れてないんですか? まだあの女に未練があるんですか? あんな少しばかり顔がいいだけの乳おばけのどこがいいんですか? 悪い噂しか聞きませんよ、あの女は! 兄さんにはもっといい人がいるはずです! ・・・・・・たとえばすぐ近くに! ・・・・・・そもそも兄さんはどんなタイプの人が好きなんですか? もしかして大きいおっぱいが好きなんですか? おっぱい星人なんですか? それでもボクは兄さんのことを軽蔑したりしませんけど・・・・・・胸なんかなくても兄さんを満足させてくれる人と付き合った方が絶対いいですよ!」


 あれ?


 今もう一度、ユアール・プライツに言われたことを思い返してみたけど、俺のことをちょっと誘惑してないか?


 なんかあのユアール・プライツという男に見つめられると、疑おうという気持ちがその場では一切湧いてこないのだ。


 もしかしたらこれはとても危険なことかもしれない。



 まあ、ユアール・プライツ個人の話はこれくらいにして、第142番隊全体の話をしたいと思う。


 今は有事ではないので、伍長が率いる全ての隊は実戦の経験を積むために冒険者 世界組合ワールド・ユニオンに登録している。


 そして、そこでこなした任務ミッションの数とレベルによって隊の評価は決まり、個人ではなく隊という集団として昇格することもごくまれにある。


「兄さん! ボクらはずっと一緒に昇格していきましょうね!」


 ユアール・プライツにそう言われて、またうっかり、


「ああ」


 と答えてしまうと、残りの隊員A、B、C(みんな同じような外見をしているのだ!)が冷たい目で俺を見てくる。


 俺がその刺すような視線に耐えきれなくて、

 

「・・・・・・じゃあ、今回の迷宮ダンジョン任務ミッションの難易度はどうしようか? 前はどんなレベルの依頼を受けたんだ?」


 と質問すると、すぐにユアール・プライツが答えてくれる。


「前はF級の依頼で、その前も、その前の前もFでした。どうやら前の伍長さんはこの隊ごと昇格する気はさらさらなかったみたいです。・・・・・・兄さんはそんなことありませんよね? ・・・・・・たとえばの話ですけど、この隊でC級の任務をやり遂げれば即昇格も十分あり得ますよ!」


「じゃあ、プライツは次はC級の依頼を受けるべきだと思っているんだな」


「そうです! 兄さん! ・・・・・・えっと、あと」


「あと、なんだ?」


 と訊くと、ユアール・プライツは俺の耳元にピンクのツヤツヤの小さな口を近づけて小声でこんなことを言ったのだ。


「これは軍の誰にも言ってないんですけど・・・・・・ボクは女ですから。だから・・・・・・でも、やわらかさとかたちの良さには自信あります」


 そして、俺から少し離れてから今度は普通の声で、


「兄さんならボクのことって呼んでくれてもいいですよ!」


 と言ったのだった(なんかまたユアール・プライツ個人の話になってしまってる気がするが)。


 ボクっかよ!


 と思った後で、チラッとABCの方を見ると、なんか冷たい目で俺をじっと見ていた。


 さすがにここで即なんて呼んだら隊が崩壊しかねないので、俺はその件は一旦スルーしてこう言った。


「じゃあ、他に意見はないか? ・・・・・・なければ、今回は、C級の依頼を受けようと思うんだが」


 それに対してABCの誰も反対しなかったので、俺たちは次にC級の依頼を受けることになったのだった。



※※※

第10話も最後までお読みくださりありがとうございます!


ここまでで、俺(ルーフェンス・マークス第142番伍長)のことを応援してやろう、もう少し見守ってやろうと思われたら、作品フォローや★評価をしてもらえるとすごくうれしいです!(応援コメントやレビューコメントもお待ちしております!)


【次回予告】

第11話 隙だらけの女上官❤️


俺(ルーフェンス・マークス第142番伍長)の前に現れた上官は隙だらけ?


何だか気になる11話っ!


どうぞ続けてお読みくださいませ

m(__)m



 

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