宇宙警察

長島芳明

宇宙警察

 我々は宇宙警察である。宇宙の平和を守るために、いつでもどこでも無数の銀河の監視を怠らない。我が惑星の文明はどの惑星よりも優れていると自負している。



 なぜなら今まで対外戦争に負けたことがないのだからだ。



 だからといって侵略戦争ではない。ある惑星が一定の科学水準を持ち、とてつもない軍事力を持ち、なおかつ他の惑星を侵略しようとする考え持つ惑星と戦うのである。宇宙の平和を脅かす、ならず者は我々が倒さなければいけない。



 したがってこれは宇宙の平和を築くための防衛戦争である。



 たが、ただ戦うだけではない。大事なのは戦後処理である。正義に反する科学技術の使い方や、放っておけば宇宙の脅威になる思想信条を改めるのだ。



 我が惑星の政治体制を教え、我が惑星と同盟を結べばその星は平和になるのだ。そしていかに我が惑星の文化が素晴らしく、いかに自分の惑星が品性下劣な文化と知るのだ。



 間違えを正してあげるのが、我々の使命だ。いや、神の使命だ。我が惑星の宗教は素晴らしい。この教えを未開発人に教えないと、彼らは一生救われない運命であろう。



 ああ。我々宇宙警察はなんて慈悲深い精神なのであろうか。



「隊長。256銀河で戦争が起きています。その星の一つだけではなく、いくつもの惑星を巻き込んでの戦争です」



 部下が撮影してきた映像を見た。



 うん、これは酷い。宇宙船を建造できるほどの技術を持ちながら、宇宙に出てまでもドンパチやっている。これは資源の奪い合いか。それとも宗教にもとづいての殺しあいか。



 何にせよ少数の欲望によって大勢の尊い命が奪われていくのだ。これほど不条理なものはない。これ以上の犠牲を増やさないためにも、我が宇宙警察を出動しなければならない。



「よし。256銀河に出動するぞ」

「はい」



 宇宙警察は未来の愛する同志のために、出動したのであった。



 正義の血が騒ぐぜ。



 そして戦場現場に到着した。



 おびただしいほどの戦艦が撃ち合っている。このおびただしい戦艦が我が同盟星に攻め込むと思うと悪寒が走る。



「よし。和平爆弾を発射せよ」

「はい」



 和平爆弾が発射され、おびただしい戦艦数々は灰燼に帰した。



 これで宇宙の平和はまた守られたのであった。尊い命がこれで救われた。戦艦を操る者にも命はあるが、改革のためなら多少の犠牲は仕方がない。それに我々のおかげで未来は保障される。後世の人のためを思えば、彼らは犠牲のようなもの。



 痛いのは始めのうちで、慣れてしまえば大丈夫なのだ。



 そして我々宇宙警察に一隻の宇宙船がやってきた。



 和平の使者であろう。それとも抗議の使者か。とにかく下らん戦争をする指導者が悪いのだ。それを扇動する宗教家が悪いのだ。



 それを改めるのが宇宙警察の役目なのだ。



「よし。使者を迎え入れろ」



 使者と対面すると、使者は怒りの形相をしていた。



 どうやら下劣な文明人のようだ。多くの文明人は我々の武力を知り、必死になって命乞いをするのだ。



 しかし下劣な文明人とはいえ、高慢に接してはならない。彼らは未来の同志なのだ。同じ目線で話してあげなければならない。



 ああ。何て寛大な心であろうか。



「あんたら、何てことをしてくれるんだ。突然現れて邪魔しやがって」

「よく考えてください。それが終わったんですよ。素晴らしいではないですか」

「冗談じゃない。まだまだ途中だ。莫大の予算を投資したのに」



 どうやらこの文明人は戦争を金儲けにしているようだ。可哀想な連中だ。



「ご安心を。貴方が損した分を、我々が違った形で補いますよ」



 無論、戦争には加担しないが。



「ならば君たちの艦隊で映画の撮影を続行しよう」

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宇宙警察 長島芳明 @gunmaNovelist

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