24 学園に復帰
ソフィアは結局1週間程休んで学園に復帰した。
朝、校舎の入り口で、イベント7班の後輩たち3人が待っていてくれて、ソフィアの回復を喜んでくれた。
イーサンがソフィアに話しかける。
「ソフィア様の護符ももらってきました」
3人はソフィアが休んでいる間に、ソフィアやレオナルドの分まで神殿に護符を受け取りに行ってくれたのだ。
「うれしいわ。ありがとう」
イーサンから護符を受け取る時に、その隣にいたジャスティンとジェシカがこっそり手を繋いでいることにも気づいたが、今はスルーしておくことにする。
近々、お礼を兼ねて彼らを侯爵家のスイーツ会に招待したら、いろいろ話が聞きたいなと思うソフィアだった。
教室に入ると、クラスのみんなもほっとした表情で迎えててくれた。
「ベス、マリィ、お見舞いに来てくれてありがとう」
「復帰が早くてよかったわ」
「本当ね」
二人がお見舞いに来てくれた時に、カチューシャの件がレオナルドに知られてしまったことは伝えている。
ソフィアはいつもの学園生活に戻れると思っていた。
思っていたのだが……
フィフィがソフィアだと知ってしまったレオナルドの行動がとにかく不自然なのだ。
休み時間に何かと(至近距離で)話しかけてきたり、カフェテリアへの移動中はソフィアの斜め後ろ(至近距離)を歩いていたり、自由席の特別教室ではすぐ隣(至近距離)に座ったりという感じだ。
ソフィアも嫌というわけではないのだが、いま学園中の生徒たちの認識では、レオナルドは『謎の美少女を見初めた』ことになっているため、かすみ令嬢のソフィアに近づこうとしているレオナルドが違和感を持たれてしまう可能性があるのだ。
今までより、距離感が難しいわ。
カチューシャを外して元の姿に戻ればいいのかもしれないけど、それは例えばレオナルドの正式な婚約者になるなど、ソフィアの立場が安定し、安全な状態にならない限り外せないのだ。
その日の午後のこと、早くも限界を感じたルイスが話しかける。
「ちょっとレオ様、何をしているんですか?」
「見てわからないか? メッセージカードを書いているんだ。フィフィをサロンに誘うんだ」
「は? サロンは毎週水・金って決めたじゃないですか」
「今日は月曜日だろう、水曜日まであと二日もある。耐えられる気がしない」
「あまりしつこいと嫌われますよ」
「だが、同じクラスにフィフィがいると思うと、気持ちがそっちに行ってしまうんだ」
「……確かに、朝からずっと挙動不審でしたよ。フィフィ様に近づきすぎです。あれではただの変質者じゃないですか」
「好きな女が同じクラスにいるっていいな」
もはや会話も噛み合わない。
「……椅子に座っていても体はフィフィ様の方を向いていますし。今も、ですが」
「なあ、フィフィは俺の膝の上で授業を受けてもいいと思わないか?」
「……」
そんなこと考えていたのか
レオナルドは帝国の皇太子として、留学中も外交上の政務を一部こなしており、次期皇帝としての評判を上げていたのだが、フィフィのことになると別人であるかのようなポンコツぶりなのだった。
「レオ様がいまやるべきことは……」
ソフィア嬢がカチューシャを外せるように、早くプロポーズして、精霊に選ばれし婚約者として内外に知らしめ、守りの態勢を整えることだと思うのだが……
面白いから様子を見よう!
「えっと、では今日は買い物に行きましょうか?」
「は? なぜ買い物?」
「レオ様、フィフィ様に何か贈り物をしたことは?」
「……はっ! ……ない。さっそく行くぞ!!」
やはり、プレゼントすらまだだったか。
「この国の王家御用達のジュエリーショップに行きましょう」
「フィフィに指輪を買おう」
「まずは受け取ってもらえそうな軽めのものがいいと思いますよ」
この後、レオナルドはフィフィに会うたびにプレゼントを贈るようになり、フィフィから過度な贈り物は困りますと叱られて凹むのはまた別の話。
「そういえば今週末、僕の両親がこの国に来ることになりまして」
「クラーク公爵夫妻が? 仕事か?」
「ほぼプライベートですよ。婚約の挨拶です」
「……えっ? 婚約の挨拶? 誰と誰の?」
「僕とマリアベル嬢です。もう書類も整っているので、両家の顔合わせですよ。今日は、そのジュエリーショップに注文していた婚約指輪を受け取りに行くんです。だからついでにレオ様の買い物に付き合いますよ」
「は? ……ルイスとマリアベル嬢が!? お似合いではあるが……一体いつから?」
「婚約白紙の後ぐらいから結婚を前提としてお付き合いしてました」
「聞いてないぞ」
「それはそうです。今初めて言ったんですから。レオ様よりだいぶ先に進んでしまっていたので追いついてくるのを待っていたんですよ」
「……どうやってアプローチしたか教えてくれ」
「僕のやり方はあまり参考にならないと思いますよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます