AVデビューした双子の姉。妹は泣き付く。

夕日ゆうや

AV風評被害

 卑猥な映像とともに嬌声が耳朶を打つ。

「これは、マズいな……」

 知り合いの顔が、そこにはあった。


 翌日、俺は高校へと向かう。

 その途中で知り合いの顔を見て、立ち止まる。

 その少女はぷるぷると震えていた。

「一緒に行こう」

 俺は彼女の手をとり、走り始める。

 ほくろの位置が昨日の顔とは違う。

 姉妹なのだ。

 でもその姉はAVデビューをしてしまった。

 一卵性双生児である彼女の妹はSNSで叩かれていた。

 見分けることもできない人々によって傷つけられたのだ。

 学校につくなり、冷たい視線が彼女に降り注ぐ。

乃愛のあ、気にするな」

 て言っても気にするよな……。

櫻井さくらいちょっといいか?」

 ホームルームの前に先生が乃愛を呼びつける。

 素直に応じる乃愛。

 そのことに、ざわめくクラスメイトたち。

 というか、18禁なのに見たのかよ……。

 俺は嘆息の息を漏らす。

「乃愛っちやばくない?」

「ほんと、ほんと」

 後ろの席の祈里いのりが俺の背中をつつく。

「乃愛ちゃん、どうしたの?」

「あー。姉がやらかしたんだ」

「そう」

 興味なさそうに呟く祈里。

 彼女くらいドライな方が接しやすいのかもしれない。

 帰ってきた乃愛は顔を青ざめていた。

「大丈夫か? 乃愛」

 俺が立ち上がり、真っ先に近寄る。

「あいつ誰だよ」「セフレじゃない?」「あいつともやっているのかな」

 周りの言葉が痛いほど聞こえてくる。

「心配するな。お前はどこまでも清純で優しい子だ」

 こんな評価をされる乃愛が可哀想に思えた。

「うん。ありがとう」

 それだけを答えると、座席につく乃愛。

 昨日まではなんともなかったのに。


 俺は人間の汚さに反吐を吐く。


                           ~完?~


――――――――

 いつか、長編で書いてみたいと思っている作品です。

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