2日目 白い部屋の午後「青いペンキ」




 朝飯と昼飯を一緒にとることにした私は、冷蔵庫にある材料でラーメンを作って食べた。

 冷蔵庫の中には、ラーメンの生麵と醤油ベースのスープ、あらかじめ切ってあるチャーシュー、メンマ、ネギ、なるとが一つのタッパーに入っていた。インスタントや、カップ麺でもよさそうなところなのに、ラーメンだけはちゃんと調理して食べろ、と言わんばかりの特別扱いである。



 食後、薪ストーブに薪を3本入れてから、白いドアを開けて白い部屋に向かうべく廊下を歩いた。

 昨日と同じように、青いペンキの入った白いバケツの絵を頼りに歩いたが、開けるドアの場所が昨日とは違っていることに途中で気が付いた。


(ということは、この廊下に、私以外の者が入って進路に手を加えている、ということなのか…)


 と思ったが、それに何の意味があるのかを考えても、何かが分かるわけではないので、何も考えずに、ドアを開けたり、廊下を歩いたりして白い部屋に行き着いた。

 自動で天井の電気が点いて部屋が明るくなったが、部屋の様子は昨日と全く変わりがない、木製の椅子一つと、青いペンキが入った白いバケツひとつの空間だった。



 木製の椅子に座る。

 目を瞑らない限り、2m手前にある青いペンキが入った白いバケツに自然に目線が行く。

 部屋も白、バケツも白、自分が着ている服も白という環境だと、俄然、バケツの中の液体の青が際立つ。青という色が視覚に入り込んで、脳内の隅々まで染み渡っていく感じがする。


 このルーティーンを課せている人は、私に、此処でどんな振る舞いを期待しているのだろうか。

 このバケツを見つめながら何か瞑想にふけることを期待しているのか。

 それとも、キャンバスに見立てたこの真っ白な部屋にこのバケツの中の青いペンキをぶちまけろ、とでも思っているのだろうか。

 それとも、この青い液体を頭からかぶってこの白い床を転がったり、壁に体を押し付けたりして何かを描かせようと思っているのか。


 いやいや、私に何かをさせようとか、期待しているとか、そんなふうに相手の意図を読もうとすること自体が酷い疲労感を呼びそうな感じがする。

 それに、何もかも真っ白なこの特異な空間に、この青いペンキが入ったバケツの存在自体を私は美しいと思える。とても、この白い空間を青でことは今の私には考えられない。


 それが、今日、この部屋での結論だ。





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