2日目 薪ストーブの部屋の夜「米粒」

 



 白い部屋から帰って来ると、雪が積もっている庭は薄ら暗くなっていた。


 季節が冬、というのはわかるが、今がいったい何月なのかはわからない。

 12月なのか、1月なのか、2月なのか…

 せめて、時計があれば、夕暮れの時間でおおよその見当が付くのだが、この部屋の環境がそれを許していない。


 私は、キッチンに行って、米びつから2粒の米を取り出して、調理の邪魔にならないテーブルに並べて置いた。


(今日で、二日目…)


 カレンダーが無い代わりに、この部屋で暮らした日数を忘れないように米粒を置いてカウントすることにした。


 私のこの生活では、今日が何月何日だろうと、天気が良かろうと悪かろうと、この部屋で過ごす限りにおいては影響は、ほぼない。時計もないが、行わなければならないことを時間に追われてやる必要もないから特に不便はない。

 しかし、カレンダーがないだけで、どうにも、未来に向かって進んでいく、という実感が持てない。まさしく、その日暮らし、だ。


 そういえば、月火水木金土日の順番は、西洋の占星術が由来だったろうか。その日の最初の時間を司る星を順番に並べていくとその曜日の順番になる…と聞いたことがある。そんな西洋の考えをよくもまあ明治時代の日本は取り入れたものだ。まあ、それ以前の江戸時代までは、「月」はあっても「週」の考えは無かったんだろうから、良かったのか。


 まあ、私が始める米粒カレンダーなんて、お日様が出てひとつカウントする、という初歩中の初歩のカレンダーだ。しかも、カレンダーと言いながら、結局は、終わった過去が何日あるのかを後ろを向きながらカウントするだけのものだ。




 今日は、なんだかひどく疲れを感じた。朝のあの薪事件のせいもあるかもしれない。

 私は、浴槽に湯を張って入浴し、夕食は、卵かけご飯だけにして、あとは、ベッドの背もたれがせり上がってくるまで長いソファに寝ころんで薪が燃える様子を見るだけにした。


 もっとも、ベッドの合図の前に、ソファで深い眠りに入ってしまったのだが…




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る