8.追憶
8.追憶
インターホンが鳴った。
はい、いま開けますね。
2人が入ってきてすぐ、お互いの捜査結果を報告しあった。
じゃあメライ、警察と"上"に連絡を頼む。
わかったわ。
警察?このあとの捜査はどうなるのですか?
はい。結論を申し上げますと、私たちはこちらでこの事件から手を引かせていただきます。しかし、ご主人様にきちんとお代を頂戴していますので、私たちの代さわりに親会社が最後まで対応いたします。ご安心ください。一度ソウルへ戻り、連絡をお待ちいただければと思います。
あなたたちには、やるべきことがありますもんね…わかりました。きっと、事件はもうすぐ解決するんですよね?
ご理解に感謝します。ええ、事件の解決をお約束しますよ。"事件コンサルタント"として。それでは、行きましょう。
はい。
事件当日の監視カメラの映像で、犯人と思われる男が主人の車でソウルの山へ向かってる姿が確認された。車内に主人の姿がなかったことから、別荘で身動きのできない状態にされ、トランクか後部座席に乗せられたと考えられた。そして、犯人はソウルの山で遺体を遺棄したと見られ、映像の解析結果や別荘付近の足跡などから捜査は急速に進展し、やがて犯人は逮捕された。いくつもの様々な前科がある現在無職の人間であった。
主人は15日に自身の車で別荘へ向かい一泊し、翌日食事に出かけた際、夕刊を購入した。犯人が指定した16日の夜まで待つも誰も現れないことから、例の手記を綴ったが、不審に思った主人は念のため"ナイル"の文字を悟られないよう残した。案の定、自宅へ帰ろうと別荘を出たところで犯人に襲われたのだった。犯人は手記を処分することを考えたが、1年前のページとすり替えることで逆手に取り、捜査の撹乱を企てた。結果として、それが仇となり早期解決に至った。
しかし、主人は犯人と面識がなく、指示どおりにわざわざ出向く理由もない。手記の存在を知っていることや、ページをすり替えるという狡猾な犯人像と、逮捕された人物がマッチしないことにも大きな違和感がある。これらの要因から、彼は実行犯にすぎず、黒幕がいるのではないかとの推論が立ち、親会社と警察は連携してさらに捜査を続けた。最終的に、主人と敵対する派閥の政治家にたどり着き、真犯人が逮捕され、この事件はようやく本当の終幕を迎えたのだった。
このとき使用人は、目を覆い静かに天を仰ぎ、小さな声で感謝の言葉を述べ、すぐに仕事に戻った。
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