第三十七話 「певческий голос(歌声)」

"ガッ、ガッ、ガッ、ガッ!"


「動かなくなっちまったぞ....っ」


"ビュオオオオオオオオオオオオ――――"


「フェフェッ、ヨクイウジャネェカ――――


 "アブフェチ、トラズ"ッテヨ....!


 ゴウナスワン...ッ??」


"カパッ


「カーッ ウ、ウメェ


 "ボルシチ"クゥアィ


 ・・・・コイツハヨォー ッ」


「(・・・・)」


"ビュオオオオオオオオ――――


目の前で、缶詰の蓋を開けその中身を


口の中へと流し込んでいるスサケフスキの様子に


軽く不快感を覚えながら、河野は


辿り着いた雪山の上で周りの雪を見渡しながら、


"この場所"について考える――――


「(とりあえず、高台に移動してみたが....)」


「―――――」


N/Sの捜査から逃れるため、そして


この世界のどこかへと姿を消した


ツベフォフ 隆和の後を追うため


河野は少し前に立ち寄った遺跡の中で見つけた


バイクの様な物に跨り、アテも無く走り続け、


とりあえずこの岩肌の先の世界が


見渡せるよう、自分の近くに見えていた


"山"の様な高台へと辿り着いていた....


「―――フンッ、フンッッ!!」


"ガスッ!! ガスッッ!!


「アゥァァア~。 ゴウナスワ~ン


 チカラジャダメダ、"チカラ"ジャアヨー...」


「(・・・・)


 ――――フンッ!? フンっッッ!」


"ガキッ!!"


"ガッ! ガッ!


かなり高い雪山の上まで移動して来た


河野、スサケフスキだったが、調子がおかしいのか


バイクが山の頂上付近で止まり、


何とか修理しようと試みるが、バイクは


一度エンジンの動きを止めると


そのまま動かなくなり、河野は


自分の自信のある空手の前蹴りで


力任せにバイクを何度も蹴り飛ばすが、


靴の踵での前蹴りにバイクはただその金属部を


ヘコませるだけで、特にエンジンがかかる様な


気配もない


「――――フンッ、フンッ!!」


"ゴッ、ゴッッ!!"


「アァ~.... ダメ、ダメ、ゴウナスワンッ....!


 ソンナ、チカライレタラ


 バイクコワレチャウヨッ....!」


「(・・・ダメか)」


"ビュオオオオオオオオオオ―――――"


「(・・・・っ)」


バイクを直す事に意識を取られていたせいか


ふと、周りを見渡すとこの山頂の場所に


かなりの雪が吹きつけて来ている


「(・・・・一反、この場所を


  離れた方が良さそうだな...)


 オイ、スサケフスキ。」


「ヘイッ ゴウナスワンッ


 ――――ナニカゴヨウデッ!?」


「・・・・


 とりあえず、向こうの方に、


 建物みたいな場所があっただろう?」


「ア~ ア~ チョイトクラァー


 イワレリャ、ソンナバショモ


 アタヨウナキモスルゼッ」


"カキッ!"


「(何なんだ、こいつの、この感じ....)」


「ア~ ア~ 


 ♪ チョイトクラ、 チョイトクラ~...


 ヨ、ット...」


「(・・・・)」


雪が大分強くなって来た事に、


少し先にある小屋の様な建物に移動しようと


スサケフスキの方を見ると、目の前にいるこの男は


缶詰を片手に何か、調子の良い


長唄の様な物を口ずさみながら


この雪の中器用に缶詰の雪を払い、


それを口へと運んでいる....


「(・・・・)」


"――――ザシャッ ザシャッ 


       ザシャッ ザシャッ....


「ア オイ ゴウナッ


 マテクレヨッ――――」


「(・・・・)」


何かふざけ半分で歌を唄っている


スサケフスキに背を向け


「♪ ア~ ア~ アアアアア~ア


 アア~ アアアアア~」


「(まずいな・・・・)」


動かなくなった"乗り物"を横目に見ながら、


この場所から離れて行く―――――


「チョ、チョ、チョイトクラァー ヨォ、ト...!」


"ビュウウウウウウウウウウッ―――――"

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る