第三十四話 「Сложность(難航)」

"ザシャッ ザシャッ ザシャッ ザシャッ....


「(русский человек,)

(ロシアマン...)」


「Горб 3, нет через 6


 часов также Такью

(コブ... 3...いや、6時間で...


 также タークジュ....)」


「(・・・・・)」


"ザシャッ ザシャッ ザシャッ ザシャッ...."


「На другой стороне

(向こうにも――――)」


"ヒュオオオオオオオオオオ―――――


アハルテケに揺られながら、レベデワが


このZATO、雪が降る冷たい閉ざされた世界を


進んで行くと、辺りは暗い景色に包まれ、


先程入り口の付近で見かけた、軍事施設の跡なのか


自分達の視界から遠くの方に散らばる様に


いくつかの建物の様な影が見える....


「Ой Эй, ты сказал


 что идешь туда,

(オイッ――――


 おめえ、向こう行くったって...)」


雪を避けるためか自分の口元を布の様な物で


塞いでいたアントンが、その布を外し


レベデワを見る


「Эй пока другая сторона


 Ты собираешься в


 какое-то здание или


 что-то там верно?

(よぉっ ・・・とりあえず、向こうの――――


 何か、向こうに見える建物だか何だかの場所に


 行くってんだろ?)」


「Верно,

(――――そうなるわね...)」


"ビュオオオオオオオオッ"


猛吹雪、と言う程でも無いが


かなり身に応える雪が


吹き付けて来るのを感じながら、アントンは


自分達のかなり先の方に見える


建物らしき"影"に目を向ける―――――


「Возьми это, Дайте час


 вы идете вперед


 Лебедева-сан! Как


 далеко до другой


 стороны!?

(つったって――――


 1時間くれえ進んでんだろっ 


 レベデワさんよォっ


 ・・・"向こう"までは、一体


 どれくらいあるってんだっ!?)」


「(Я думал, что это


  недалеко,)

(・・・そこまで遠くないと思ったけど...)」


「Снега совсем немного и


 лошади даже не могут


 двигаться вперед


 потому что снег


 цепляет им ноги. Я не


 знаю как далеко это


 будет но, может быть


 мне стоит


 отправиться в


 другое место!?

(そこそこ雪も降ってやがるし、


 雪に足を取られて馬も進むにも進めねえっ!


 向こうまでどれくらい距離が


 あんだかどうか分からねえがっ


 別の場所に向かった方が


 いいんじゃねえかっ!?)」


「・・・・」


"ヒュオオオオオオオォォォォォ――――"


今、自分達が目指している遥か先に見える


高い、塔の様にも見える建物の影....


「(Поскольку вокруг


 почти ничего нет я


 думал что это где-то


 рядом,)

(周りに殆ど何もないせいか、


 近い場所にあると思ったけど...)」


「Некоторое время назад


 вы сказали Я скоро


 буду но даже если вы


 будете продолжать в


 течение часа, это


 почти так как будто


 вас там нет!?

(さっきから「もうすぐ着く」とか


 言ってやがるがっ!


 1時間ばっかり進んでもまるで向こうまで


 着きやがらねえじゃねえかっ!?)」


「(・・・・)」


――――距離感がよく分からない


「Эй, Лебедева! Не лучше


 ли пойти в другое


 место чем туда?


 Похоже есть много


 других мест для


 построек!

(レベデワさんよォー


 向こうじゃなくて、別の場所


 行った方がいいんじゃねえかっ?


 他にも建物の場所は


 色々あるみてえだしよー...)」


「Джучи что ты думаешь!?

(・・・ジュチ、どう思うっ!?)」


"ザッ ザッ ザッ ザッ


「Ах… что?

(―――ああ ・・・何だ?)」


後ろにいたラバに跨っているジュチに


これからどうすべきかと尋ねると、


吹きつけて来る吹雪にそれどころでは無いのか、


ジュチは覚束(おぼつか)ない顔つきで自分の前を


馬で進んで行く二人を見る


「Вообще даже Цувефов и


 другие были здесь за


 три дня до того как


 мы вошли в ЗАТО.

(大体よぉっ ツベフォフとかだって


 俺達がこのZATOに入るより三日もめぇに


 ここに入ってんだろっ!?)」


「верно

(・・・そうね)」


「Тогда даже если бы мы


 какое-то время


 преследовали его он


 не смог бы нас сразу


 догнать!?

(―――だったら、俺達が


 ちょっと追っかけてったとこで


 すぐに追いつくモンでもねえだろうがっ!?)」


「・・・・」


"ガサッ!"


アントンの言葉に取り合わず、


厚手のコートのポケットに入っていた携帯を


レベデワが取り出すと、その携帯には


"20:15"


が表示されている


「После входа в ЗАТО,


 9 часов, нет около


 10 часов, Я был в


 нескольких других


 учреждениях в


 этом месте так что не


 то чтобы я был здесь


 все время но это было


 давно.

(この、ZATOに入ってから...9時間....


 いえ10時間くらい...


 この場所の他の施設にも


 何カ所か入ったりしてたから、ここをずっと


 進み続けて来た訳でも無いけど


 かなり時間も経ってるわよね...)


「(・・・・)」


ふと、周りに目を向けると自分達の左側、


かなり遠めの場所に高い、


電波塔の様な物が立っているのが見える


「・・・・」


そしてその反対側、


自分の右側の方へ視線を向けると


おそらくこのZATOに設置されている


共通の施設なのか、その遥か先、視界の右側にも


同じ様な電波塔の形をした


建物が立っているのが見える...


「Вообще сколько этот


 парень продержится!?


 Я позволю Цувефову и


 остальным сбежать!?

(大体、こいつ(ZATO)は


 どこまで続いてんだっ!?


 ・・・ちっとは頭使わねえと


 ツベフォフ達を逃がしちまうぜっ!?)」


"ビュオオオオオオオオオオオ―――――ッ


「(・・・・)」

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