第二十九話 「Побег(逃避行)」

"ドルッ ドルッ ドルッ ドルッ....


「オッ ――――ゴウナッ 


 "カンヅメ"、アルゼッ!?」


"ガシッ!"


「・・・ああ...」


"ドルッ ドルッ ドルッ ドルッ...."


「イヤー ソウカイ、ジャネェカッ


 "ゴウナ"スワンヨオオオッ」


「・・・ずい分、上機嫌だな...」


「ヘヘッ―――――、 


 フフェフェフェフェ....ッ」


「(・・・・)」


河野達は、遺跡で見つけた"乗り物"に跨ると


しばらくその乗り物を走らせ、たまたま見つけた


建物の影にエンジンを掛けたまま停まり、


河野とスサケフスキの二人は


先程の遺跡で見つけた缶詰を


二人で分け合う――――


"ドルッ ドルッ ドルッ ドルッ.....


「(・・・・)」


"ヒュォォォオオオオオオ―――――


建物の壁に背中を預け座り込むと、雪混じりの


缶詰の中身を自分の口の中に放り込みながら、


河野は今自分の目の前で静かに


エンジンの音の様な物を上げている


この奇妙な "乗り物"に目を向ける――――


「(何なんだ、コイツは....)」


【オイッ、オイッ、バイク....!】


【ウ、ウカンデヤガルズゥエ――――.....!】


「(・・・銀の瓶...)」


"ガサッ"


「・・・・!」


先程の施設で拾った飼料袋の様な物の中に入れた


隆和のプラスチックの剣、そして


その剣の柄の部分に括り付けられている


"銀の瓶"を取り出すと、河野はその銀の瓶を


じっと見る....


「(この瓶が何か妙な音を上げた途端


  この....バイクみたいな乗り物の


  エンジンがかかって、そしてこの乗り物は


  空中に、"浮かび"上がった....)」


"ドルッ ドルッ ドルッ ドルッ.....!


「イヤア、ユキノナカデ


 "バイク"ニノルッテノモナカナカ、


 オツジャネエカ・・・・!」


「(・・・・)」


"観光気分か"


「(・・・さっきの建物の中にあったバイク....


  そう言えば、おかしな


  "金属"の様な物もあったよな....)」


【き、金属か何かか】


【ワカラネェ――――


 "ワカラ"、ネェヨ―――――


 ゴウナスワン・・・・】


「(・・・・)」


「コッカラサキハ、ドコヘイクンダイ―――?」


「――――.... あ、ああ。


 これから、先....」


「オメェハ、レベデワニオワレテルンダロウッ?


 ソレバラバ、サッキノバショニモドッタラ


 マズインジャネエクワッ」


「(・・・・)」


「レベデワカラニゲルンダットゥアナルァ


 オメェハ、ココカラハナルゥエトゥエ


 イリグチカルァハナレナキャイケネウェ....


 チガウクワイ? ゴウナスワンッ?」


「(・・・この先....)」


いまいち、スサケフスキの言葉に何か


妙な引っ掛かりを感じるが、


確かに今自分がレベデワ、N/Sの捜査員に


追われている事を考えれば


この地図も無い雪の世界を


ただ、奥へと進んで行くしかない―――――


「オレムオ、 "カゾク"グワ


 タイホサレルナントゥエ、


 ソンナムェニアイタクヌゥエ....


 クソヤロウ...イヤ、ゴウナ... オムェウァ


 ブジニレベデワクァルァニゲテ


 "ジユウ"ヲツカミトルヴェキ


 ナンジャネェノクワ....?」


「(・・・・)」


"カパッ"


「ジユウ...ジユウ...」


"グッ グッ グッ グッ...."


楕円形の缶詰の蓋を開けると、


それを顔の上に掲げ缶を振りながら、


スサケフスキはその缶の中に入った


ソースのかかった魚の様な物を


自分の口の中へと流し込む――――


「ジユウッテノハ――――


 ニンゲンダレニモ―――― グッ ウメェ...


 ア、アタエラレタ... ケンリダッ... グゥ...


 ニスィンクワ コイツハヨオッ


 ゴウナ――― テメェハ、ジユウ....


 ジユウナンドゥワ....!」


"グッ グッ"


「(・・・・)」


「オメェニハ、テメエノジンセイヲ


 イキルケンリガアル――――


 ソウダロウ... ゴウナッ.... 


 ――――カタマリカ...?」


"ゴクッ ゴクッ"


「(・・・・)」


魚の缶詰を頬張りながら、自由と権利について


まくし立てるスサケフスキを見て


河野は、一抹の不安を感じ取る――――


「ケンリ... ケンリドゥワ....」


「(・・・・)」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る