私はやっぱり人間が好き!

第50話 魔将ライガスの微笑

 翌朝。

 学院寮で朝ご飯。


 特Aクラスの野外演習の時に作ったお料理が、口コミで広まっていてねー。寮食堂の料理人からレシピ頼まれて。

 でも、錬金術の撹拌錬成が必要だからって、暗に断ったつもりだったけど、料理長さん、晴々とした笑顔でスルーしちゃったよー。


 まぁ、朝食なら軽めでいいよねー。

 スープと自家製ドレッシングかけたサラダ。

 スープは薬効入りで、地力ステータスちょいUP1~2程のボア肉入ったベジタブルスープ。


 定番にしたいって言われちゃったよー。

 朝の日課にスープ作りが加わった。何でー?


 私、従魔達タラちゃん・キラちゃん人工餌ペレット作りもあるのにー。


 まぁ、撹拌錬成は同じ錬成生成陣だし。

 ペレットとスープ、同時進行でちょいとねー。


「錬金術がコレ程料理に必要だとは…」


 えと?料理長さん?


「ね、ミルキィ以外に料理の手伝い出来る錬金術科の生徒は居ないからね。変な前例作らないでくれる?」

 美味しいって平らげて、それは無くない?ヘルヴァ先輩。錬金術科最上級生で科のまとめ役。

 面倒見の良い侯爵令嬢で、亜人平民の私にも何の拘りもなく只の先輩後輩として接してくれる。


 んだけど…。

 女子でも料理経験無しってのは…。

 私が辺鄙な村育ちだからか?

 私は5歳位からお手伝いで台所に立ったし、7つん時には包丁持ってたよ?

 冒険者として野宿もしてたしー。お料理出来るの必須だったけどなー?


「ゴメン、ミルキィ。私も賛同出来ない」

 ドリスにも言われちゃったよー。

 準男爵家も、やっぱり大貴族なんだー。

「騎士爵位でも使用人はいるから。料理は趣味嗜みの範疇だから」


 マジですか~?


 まぁ、コレは王都ならばこそらしい。

 地方貴族ならば、当主の妻も料理する事あるし、内職に近い事もする場合も有るとか。


 平民は勿論、地方出身って事も珍しい存在。私ってイレギュラーだとへルヴァ先輩やドリスから懇々と説明されちゃったよー。



 王都郊外。

 貴族街って言えば一応貴族街なんだけどねー。

 近衛騎士官舎もあるこの辺りは、もう平民居住地と差程変わらないレベルの住宅が並んでる。

 あくまでも家そのものの大きさレベルに於いて…だけどねー。


 一見して大違いが分かるのは庭の有無。

 つまり敷地の広さ。門構えがあり人の背よりちょい高めの塀が有るのが、やっぱ貴族宅なんだよねー。

 平民住宅だと庭の共有とかあるし。

 ってか庭有るだけ凄い!話。


 まぁ、そんな貴族街の外縁部にエリーの家、オズボーン家はあるんだ。


「ミルキィ!ドリス‼︎」

「エリー!来たよー‼︎」

「私も来ちゃった」

「勿論、大歓迎よ」


 エリーの家にライザはもう来ていた。

 昨晩から泊まりで来ているんだって。元々エリーのオズボーン家とライザのバークレイ家は同じ子爵家に仕える騎士同士で、古くから付き合いあるんだって。エリーのトコは弟さんが、ライザんトコはお兄さんがそれぞれ継ぐ事になっていて、この2人の職は『戦士』だとか。

 いづれ何処かの騎士家に嫁げれはいいからと多少の放任もあるみたいだけど、それでも両家は『錬金術師』という女神に与えられし職の勉学精進を是として王立学院への進学を認めてくれたみたい。

 この辺りも、レクサンダル王国の緩い気風が漂ってるよねー。貴族としても花嫁修行としても『錬金術』は何の役にも立たないって考えるのが普通な気もするし。


 平民の私は、生きる為の術として手に職を付ける必要あったし。冒険者としても役に立ってるし。


 勇者の立てし実力主義の王国は、冒険者の自由なる気風も受け継いで。


 この国に転生させてくれた女神サンディアに、ホント、それだけは大感謝だよー!


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「王都郊外。本当に都合がいい。クックックッ。いささか出来過ぎですね。では、わかってますね。あの小さな少女の作りし薬で、貴方達の家は断絶されたのです。そう、貴方達はもはや、犯罪者の家系としか王国の史に刻まれません。さぁ、自らの手で家の栄光を取り戻しなさい!」


 クックックッ、フ、フハハハハハ‼︎


 犯罪者の上塗りにしかならぬと言うのに、何と愚か者の多い事よ。自分の見たい夢だけを追える、そんな戯けは人族だけなのですよ?


 それでも、貴女は人族の側にいますか?


 レベッカ様。

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