第45話 王宮からの依頼
翌日の昼食。
ボア肉の味付けに使った触媒は、料理長に勿論の事、騎士達にも大好評だったのー!
「信じられない。此奴は魔物避けとしか考えていませんでした」
「それが普通です。匂いが凄いし。後口残ります。もしデートとかが控えてるならば、香玉を含んでください」
「まぁ若い奴なら必要かもしれませんが」
見た目球根。しかも強烈な匂いがある。
この匂いを嫌う魔物は多く、しかもそういう魔物は大概嗅覚が鋭く発達してる。擦り潰してゲル状にし布に染み込ませると、それだけで簡易的な魔物避けとなる。
旅のお供としても安価だから、薬屋触媒販売店だけでなく道具屋なんかでも売ってる品。
コレを薄切にして香辛料である黒胡椒と混ぜて軽く炒め、ソースに混ぜ込んでボア肉を焼くの。
するとボア肉特有の臭みが無くなり、黒胡椒の風味と共にとっても美味しくなるんだ。
息が魔物避け臭になっちゃうけど。
「この匂いが苦手って場合は、昨日の保温触媒薬草を少しソースに入れて焼くといいと思います」
「それはいい。ボア肉は量も確保出来るし腹も満ちる食材なんだが、いかんせん、あの独特の臭みを嫌う者が多くてね。それが消えるだけで有り難いってのに、中々食欲をそそる匂いになる。擦り潰しじゃなくて薄切でいいのも助かる」
「それでも一手間増えますけど」
「こんなものは手間とは言わんよ。世の中には見映えだけの為に切込を入れる
ニヤリと笑う料理長。
まぁ、レパートリーが増えて何よりです。
そんな楽しい毎日は…、唐突に終わりを告げたんだー。
「王宮へ召喚?何があったのですか?」
「悪いが聞かされておらぬ」
「ただ、かなり急いでおられる様でね。悪いけど迎えに来たよ、ミルキィ」
ジャックセンセーがケインズシティまで来てた。
特大の
「有り難い、いただくよ。うん、本当に飲み易いね。他のポーションが飲めなくなるって評判がわかるよ」
ジャックセンセーの魔力も結構多い。
そう言えば人種的にはエルフMIXって言ってたな。
「ミルキィ…」
「ごめんなさい、クラリス。でも此処での夏期休暇はホントに楽しかったー!」
王宮の呼び出し。多分何かの依頼。
となると、おそらく夏期休暇中にはケインズシティに戻っては来れないかも。
荷物を纏めた私は、ジャックセンセーと共に移送魔法陣へ。
今度は王宮転送の間への移動なんだって。
だからセンセーの
凄いねー、ジャックセンセー。
「「また学院で」」
もっと色々素材集めもしたかったし、錬成生成したかった。残念ー!
一瞬で王宮へ跳んだ私達。
控えの間に、私の制服が届けられてた。
直ぐに着替えて、呼び出されるまで控えに待つ。
「ミルキィ嬢、陛下達がお待ちです。このまま応接室へお越しください」
応接室?謁見の間ではなくて?
入ると、既に陛下と宰相がいた。
は?2人だけ?
コレは陛下からの直接にして極秘裏の依頼?
入り次第、私は跪き。
「陛下におかれてはご機嫌麗しく、学院生錬金術科ミルキィ、お召しによりまかり越しました」
確か、こんな挨拶で良かったよね?
違った?失礼だった?
咎められないからセーフ。
「よく来てくれた、ミルキィ。こんな急な召喚した事を先ずは詫びる。済まぬ」
玉座からとは言え、陛下が頭を下げた?
「これからの事は他言無用。恥を忍んで其方の力を借りたいのだ、錬金術師ミルキィ」
宰相も、何?この雰囲気。
「実は、先に現れた魔将が未だ王都で暗躍しておるのだ」
魔将?と言うと、魔将ライガス?
「相手が魔将とは言え、あまりにも裏をかかれっぱなしなのでな。どうも王都…考えたくないが王宮に魔将の
内通者の炙り出し?
「ある程度の目処がたっているのですね?では私への依頼は『自白剤』の錬成でしょうか?」
「君という子供を巻き込む事。必要悪とも言える薬を作らせる事。我々の未熟故の過ちでしかない。が、それでも其方に頼まざるを得ない」
王宮の者に自白剤を使用する?
そんな大人の裏を初年度学院生に依頼するの?
コレ、聞いたからには断れないし、もし断ったらひょっとして私、消される?
「よく考えて、納得してくれたらでいい。断っても構わないが…」
黙るべき秘密。
が突飛過ぎて、子供の私が話しても大人はマトモに取り合わない。そー言う事か。
「返事は後日、また…」
「いえ、陛下、宰相閣下。錬金術科学院生ミルキィ、謹んで承ります」
中身は元魔族。大魔王の娘。
権謀詐術の世界、知らない訳じゃ無い。
世間知らずのガキじゃないんだから!
「…感謝する、ミルキィ」
頭下げ過ぎだよ、陛下。
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