第44話 夏期課題、絶好調!

 ケイン辺境伯領は、王都なんかよりずっと野山や平原、沼地等自然が多い。薬草や触媒材料がそこら辺に生えてるのー。

 お陰で錬成生成し放題。

 つい調子に乗っちゃったのは自覚してる。


 学院購買部納品分。

 王都近衛騎士団納品分。

 王都魔導師団納品分。


 で、完成したポーションは担任ジャックセンセーにもらった転送魔法陣で学院に届けるの。そこから王宮へお願いする形。

 ありがとう、センセー。


 また、私がガンガン造ってるのを見て、辺境伯からも遠慮がちだったけど「ウチにも納品お願い出来まいか?」って言ってきて。

 クラリスは多少オコだったけど、私は二つ返事でOKしたよー。


 だって素材取りほーだい。元手無し!

 まぁ、魔力と手間暇ガッツリ使うけど、見た目魔人族MIX…中身魔族の私の魔力は、錬成位で枯渇する事は絶対に無い!


 逆に言えば、尋常じゃない量を造ってしまうとホントに魔人族なのか、疑われるかもしんない。

 その辺の調整がね。


 後、近衛騎士の剣にちょいと属性付与とかしたりして。錬金術科学生として、夏期休暇課題をガッツリこなしてるんだよー。


 そんなこんなで楽しい日々。

 今私は近衛師団詰所の厨房にいる。


 半分はジオが、いらん事言ったから。


「野外演習でさ。ミルキィがいれてくれたお茶。それに料理もマジ美味い。その上回復したり魔力底上げが有ったりと、まるで奇跡の料理なんだ」


 料理長に聞かれたし、レシピ公表は全然大丈夫だけど、コレ、どうしても錬金術の一環としてのお料理。途中錬成攪拌がどうしても必要。


「味は私なんかが作るよりもっともっと美味しくなると思うんです。でも、多分魔力底上げとか回復とか、そういう薬効付与は無理だと」


 それでも料理長は、料理のレパートリーが増えるだけでも有り難いって。

 とりあえず今回は私が教えつつ、途中の錬成攪拌を私1人でやる。鍋は大きいけど、元々16個の錬成生成陣を起動出来る私にとって、4倍増しの陣が3つなんて然程苦になる訳でもないから。


 クラリスは「ミルキィに無茶させないで!」って言うけど、も1個位起動出来るよー、私。


「なるほど。この薬草を入れると」

「臭み消えます。それに少しピリッと刺激的に。身体の中から仄かに温まるから元気回復。お料理としてもそれ位の効果はあります。今回は成分攪拌も錬成してますから基礎体力の底上げも気持ち出来ると思います」


 ステータスで言うトコロの体力HP1~2ptのUPね。こういう地味なんだけど体質改善ステータスUPってのも錬金術なんだよー。


「臭みが消えるのは有り難い。騎士の中にも『魚が苦手』と言う者もいて。それにコレならボア肉にも」

「ハイ。その臭み消しにも使えます。けど、ボア肉なら」

「ほう?まだ何か良いモノがある?」

「ですね。じゃあ、明日、ボア肉の薄焼で使いますから」

「それは楽しみです。ありがとうございます、お嬢様」

「その呼び方は…。何せ亜人平民だし」

お嬢クラリス様の御学友で辺境伯家のお客人です。人種身分は二の次ですよ」


 笑い飛ばす料理長。

 この方も騎士爵位を持ってる歴とした貴族籍なんだって聞いてるけど。


 ジオの、そしてクラリスが私に対して何らわだかまりないの、多分こういう辺境伯家自体の雰囲気なんだと思う。レクサンダル王国は、こういう貴族縦社会の緩さが見受けられるけど、此処は更に輪をかけてる。


「辺境だからね。中央より実力主義なんだよね」

 ジオから冗談混じりで聞いた事がある。


 客人って事より、私の実力実績を見てる。

 錬金術師としての腕。戦闘力。従魔の存在。


 魔人族MIXとか平民とか。

 ちっこい童女とか関係ないって雰囲気。それが領全体から感じられるんだー。


 此処に来て良かったー。


「うん、私も嬉しいよ、ミルキィ」

 ホントにありがとう、クラリス。

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