第24話 学院長の笑顔のお願い

「え~と?王女殿下?」

「そうです。クラリスは知己ですよね?」

「その、面識がある程度です、学院長」


 迷宮探索実習を終えたミルキィとクラリスが、ティオーリア学院長室へ呼ばれて聞かされた話。

 アロン王太子殿下、アライズ第2王子殿下、リアンナ王女殿下が学院に一時留学されると言う事。何よりアライズ殿下とリアンナ殿下が今年度特Aクラスへ入るという事。


「リアンナ王女殿下は8歳ですが、その才は『剣聖』です。この意味はわかりますね?」


 『勇者』候補。


「その気負いもあり、気の毒な程の努力をなさっておいでなので、王室より同世代の友人をと希望がありました。この意味もお分かりですね?」


 『剣聖』としての努力。

 おそらくは近衛騎士団での鍛錬。

 そこに同世代の童女がいる筈が無い。


「その、クラリスは身分的にも相応しいと考えますが、私は亜人平民です。流石に…」

「学年首席の特権が、今の貴女には有りますよ。それに、『最強時空騎士ジャック=シルバー』教授の推薦もね。ミルキィ。貴女は本学院最強とも言える戦闘力を此度実習で示しました」


 それはジャック先生に聞いた。

 迷宮15階層は、初年度挑戦の記録更新。今までの12階層を遥かに上回る快挙。

 そして実習期間内たった6日の迷宮クリアは、初年度挑戦初だと。


「学生時代の私でも成し得なかった。ちなみに、実は私の班が12階層の記録保持班だったのです」


 ジャック先生は初年度挑戦者記録を数々打ち立てていたらしい。それを私が、ガンガン塗り替えてるんだと。


 マジかー。


「それとね。私も人種的には亜人平民だったんですよ、ミルキィ。学年首席の特権で卒業時に騎士爵位を得ました。私はエルフのMIXハーフクォーターです。祖父がエルフ族なので私自身の外見上エルフの特徴は何も無いのですがね」


 人族生まれのエルフ族MIXと人族の母との間に産まれたと。かなり血は薄れた筈だけど、それでも亜人種扱いなんだー。最強騎士なのに現男爵位なのは、そういう事かー。


 何にしても担任が似た境遇なのは心強いよ。


「お願いできますか?ミルキィ、クラリス。貴女達に是非、リアンナ王女の親友支えになって欲しいの」


 ティオーリア学院長の微笑みって、何でこう、凄みがあるんだろ?コワイよ。

 それに「お願い」って、コレ、私達に選択肢無いよねー?ハッキリ言って。


 私はクラリスと顔を見合わせる。

 あ、多分同じカオしてる。


 諦め。


 ちょい可笑しくなって、私達は見合わせ乍ら苦笑すると「わかりました、学院長」って、ほぼ1択の応えを返した。


 週明けの風曜日から殿下達が来るとの事。

 で風、火、水、木、土の5日間学院に来て、光曜日は公務をなさると。冥曜日は皆休みだし。


 明日の冥曜日。

 の~んびり休養って思ったんだけどな。

 その次から殿下達が来られるとなると…、フム。


 ちょい、気になる調べ物でもしとこうかな。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「アライズ第2王子殿下の?」

「つ、付人ですか?私達が?」


 学院長室に呼び出されるなんてミルキィじゃあるまいし。そう思っててジオは、部屋の前でウィルバルトに会った。


「お前も呼ばれたんだな」

「はて?騎士科で何かあったっけ?」

「さぁ?皆目検討付かんがな」


 同期。アチラは公爵家嫡男だから身分的にはタメ口なんてヤバいんだが。

 コイツは良い意味で校風に染まってるんだよ。


 で、2人してティオーリア学院長に会い、聞かされたのが、俺達特Aクラスにアライズ第2王子が一時留学されると言う事。


「ミルキィやクラリスは?」

「彼女達には、リアンナ王女殿下に付いてもらいます」

「クラスに2人も王族が来られるんですか?」

「ジャック教授も困り果ててましたねぇ」


 いや、学院長も責任的には同じだろ?


 マジかよ。

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