第14話 ミルキィの決意

 ミルキィは地上界に戻ってきた。

 いや、別に魔界が地下にある訳じゃないんだけど、便宜上ね。人族世界を地上界って言うの。


 女神サンディアや神々の使徒がいる場を天界って言うから、それからきてるんだよね。

 これまた別に雲の上、空の彼方って訳じゃないんだけど。


 本来、この3界には厳格な境界線がある。


 人族は勿論、亜人や魔族でさえ超える事ができない壁だったんだけど、前魔対戦時、魔界との境界線が大魔王ベルドのせいで破壊されてしまった。だから魔界と地上界は行き来出来る。

 魔界に行こうとする人族なんて皆無と言えるし、それに行き来には莫大な魔力が必要になる。

 だから境界線を越える事は簡単ではない。


「ごめんなさい。もう貴女に生きて会う事はないのよ」


 鏡の伝言ミラーメッセージはそう伝えてきた。コレが起動している意味。私の魔力に反応してるのと、彼女の魔力がもはや存在しないという事。

 ソーンは、何者かに魔法を奪われて亡くなっていた。


 そして、次に狙われてるのは私だと。

 私の持つ『解析消去マテリアルキャンセル』だと。


「気をつけて。私の妹分レベッカ」 


解析消去マテリアルキャンセルは魔法じゃないよ、ソーン。魔法を奪うんだから、ソレ、魔法奪取マジカルスティールだよね。ソーンも私の固有スキルだと知らなかったんだ。まぁ、敢えて言ってないし」


 スキルは、例えば狩人ハンターなら千里眼ターゲットアイとかが分かり易いかな。戦士なら剛力フルパワー

 ちょい厄介なのは、決して女神より与えられし職とセットになってない事。

 ジオなんて戦士なのに固有スキルは裁縫なんだよー。服なんてあっという間に繕えるんだ。

 だから職とスキルが合致してるとめっちゃラッキー!


 あ、話それたね。


「で、いつまで食事してる気?」

 シュシュシュ、シュー!


 せっかくだから、故郷近くの森で素材集め。その間従魔タラちゃん魔物の餌ペレット以外の生き餌にありついたみたい。


「コレはコレとして、魔物の餌ペレットは欲しい?タラちゃん、ちょい美食ゼータクになった?」


 まぁ、あのペレットは市販のモノではなくて私の手作りだ。栄養価は勿論、クモ種好みの味にしてる自信作なんだよー。


「飛んで帰りたかったけど、まぁいいか。今日はこのままキャンプしよ」


 私の魔法とタラちゃんの内翅。

 併されば多分今日中に帰れたと思う。


 黙って出て来たので学院が大騒ぎになってる。

 この時の私は、そんなの夢にも思わなかったんだよー。


 その夜。

 私はタラちゃんと2人…、星空を見上げて。


 大魔王がいつ、どんな規模で地上界侵略をしてくるのかわかんないけど、ソーンに、そして私にケンカ売ってきた事は後悔させてやるんだから。


 覚悟しろよー!


 シュシュ!

「うん、気付いた。こんな気配バレバレの野盗いるなんて。って言うか、コッチがガキの女1人と思ってるんだ」


「ケッケッケッケ。こんな森で嬢ちゃんが1人でな~にやってんだぁ?」


 囲まれてる?

 童女1人相手に野盗のオッサンは9人。


「実習の素材集め。で、オジサン達は?どう見てもドロボーみたいだけど」

 そう言いながら、指先でトントンと地面を叩く。

 あらかじめ決めているタラちゃんへの合図。


 消えいる様に音もなく、タラちゃんは行動開始。

 あっという間に捕縛終了。


「な、な、なんだ?ひぃ、く、く、クモ?コイツは魔物?」


 あぁ。オジサン達魔物に詳しくないんだね。

 冒険者なら、ランクSのデスタラテクトを知らない筈ないし。コイツに気付いたら、まずチョッカイ出そうなんて絶対に思わない筈。


 流石は美食家。

 人族を食べようとは思わないみたい。


 まぁ従魔契約があるみたいだから、人を傷付けたり殺したりはしないんだけどねー。


「明日にでも詰所に引き渡そう」

 私はテントの中で眠る事に。タラちゃんはテントの外で番をしながら休息とるみたい。


 おやすみー!タラちゃん。


 そんな寄り道もあって。

 私達が学院に帰るまで1週間程を要したワケで。


 ヤバい足音が迫ってる事、考えもしなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る