第28話 Clock-23

「着替え、ここに置いておきますね」

「ありがとうございます」


 バスルームの中から英治が返事をする。


「背中、流しましょうか?」


 ガタガタッ


「い・・いえ、お気になさらず・・」

「そ・・・そう?」


 ここは楓のアパート。

 川に落ちてびしょ濡れの英治を連れてきたのだ。


 数分後、英治がバスルームから出てきた。

 楓のピンク色のスウェット上下を着ている。


「すみません、ありがとうございます」

「服は洗濯中なので、乾くまで待っていてください」


 ワンルームのあまり広くない部屋。

 家具といえば、ベッドと小さなテーブル。


 楓と英治はテーブルに向かい合って座る。


「お茶を入れますね」


 にこやかな笑顔で楓がキッチンに向かい、お湯を沸かし紅茶を入れて戻ってきた。

 テーブルの上にマグカップを置く。

 英治は、その紅茶を口にする。


 やがて、英治は楓に聞いた。


「なにも、聞かないんですね」


 楓は、にっこりと笑って答える。


「あのね。私、決めたんだ」

「決めた?」

「私は、あなたについていくって決めたの」

「え?」


 動揺する英治。

 その英治を、楓はまっすぐな瞳で見つめている。


「あなたが、なぜ危険なことをしようとしているかわからないけど。おかげで私はあなたに2度も命を助けてもらったのよ」


 微笑みながら。楓はしっかりとまなざしを英治に向けてはっきりと言った。


「だから・・・だから私にもあなたがしようとしている事を手伝わせて。お願いします」

 

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