第23話 Clock-18

「タクシーの運転手が、通りがかり男性に拳銃で殺される・・か・・」


 英治が学校から帰ってきて、最小にスマホで見た市内のニュース。

 街で起こる事件の多くは、火事や交通事故であり殺人事件は多くはない。なので、結構大きく取り上げられている。場所や時間も明確。


 23時32分 繁華街の近くで、タクシーの運転手が通りがかったチンピラに因縁をつけられたあげくに拳銃で撃たれて亡くなった。

 ちなみに犯人は逃走して、いまだに捕まっていない。


「これだったら、以前と同じ方法で防げるかな?」


 同じ方法とは・・・犯行の直前に懐中電灯を照らし防犯ブザーで犯人の注意をそらすとともに、周囲の注目を集めるというもの。

 前回は、犯人は驚いて逃げ出した。


 そうと決まれば、準備をしなくては。


 ボストンバッグに懐中電灯や防犯ブザー。念のための金属バットを入れる。

 今夜は楓さんとファミレスで打ち合わせ予定だ。だが、その後でも十分間に合うはず。


 荷物の準備ができたので、待ち合わせのファミレスに向かう前にもう一度、場所と時間を確認しようとスマホを見た。



 ニュースの内容が変わっていた。



 23時32分 高校生が通りがかりのチンピラに銃で撃たれて死亡。

 


 ・・・え?


 

 いったい高校生って誰だ?

 そう考えたときに・・・理解した。

 その時間、居合せるような高校生。偶然であるはずがない。


 それでは・・・事件現場に行くのは危険が。やはり、行くのはやめよう!


 そう思い、また画面を更新する。

 するとまた画面が変わった。


 23時32分 タクシーの運転手が通りがかったチンピラに因縁をつけられたあげくにナイフで刺されて死亡。



 画面を見る英治。

 だが、スマホに着けたデジタル温度計がアラームを鳴らした。

 そろそろ時間だ。


 やむなく、スマホの電源を切った。


 自分が行かなければ、タクシーの運転手が死ぬ。

 自分が行けば、自分が死ぬ。


 

 では、どうしたらいいのだろう?

 真っ暗な画面のスマホを見ながら必死で考える英治であった。


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