最終話 猫と私

 髪を乾かして歯を磨くと、私はベッドへと向かった。

「ふぁ〜……」

 と欠伸あくびをして、部屋の明かりをオレンジ色の豆電球に切りかえた。灰色のざらついた視界の中で、豆電球のやさしいオレンジ色の光がほんのり広がった。

 私が布団に潜ると、どこからか猫がささっとやってきてベッドにぴょんっと飛び乗った。そして、私の頭の元へやってきて、私に撫でてと言わんばかりに、座って私を見つめていた。


 どんなに辛い夜でも、怖い夜でも、陰鬱な夜でも、こうして猫が変わらずに健気な可愛らしい姿を見せてくれることで私は夜を乗り越えることが出来た。人と違って、猫は嘘をつかない、駆け引きもしない。それが私にとってはこの上ない癒しであり、救いだった。


 猫の目線に応えるように、私はそっと猫を撫でた。猫は気持ちよさそうに目を瞑り、喉をごろごろと鳴らした。そうしているうちに、重い眠気が私の頭にずーんとのしかかってきた。


 瞼を閉じると、目の前は真っ暗になった。

 そして、次第に意識が沈んでいく──。


 寝れば、今日は終わる。

 あぁ、明日は月曜日か。


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猫と雨 文学少女 @asao22

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