第5話

俺が地球にいる時の記憶を魔道知能に見られて、色々突っ込まれたし。恥ずかしかったけど。

必要な事だったと諦めよう。


返事を書いた紙に帰還用の魔法を発動させるために魔力を込める。


紙がこちらに飛んできた時のように燕の姿に変わる。


後は飛んでいけと念じるだけで、沙希の所に帰っていくはずだ。


魔導知能には俺の分体を制御してそれについて行って、沙希のいる場所を特定してもらう。


(今、思ったのですが態々飛んで着いていく必要ありませんよね?足輪のように足にくっついていくのが、魔力の消費を抑えつつ確実について行くことが出来ると思うのですが、その魔法は、分体を付着させると発動しなくなったりするのですか?)


どうだろう?荷物を足に掴ませて飛ばしたりしてたし、大丈夫だと思うけど。


魔法陣さえ崩さなければ。


(私には未知の魔法形態なので、魔法陣の判別が出来ません。唯一の連絡手段をダメにする可能性を考えると、飛んでついて行った方が良いでしょうか?コチラに接近してきた速度を考えると、今の私ではついていけない可能性が高いのですが…)


この紙の鳥の最高速度は時速600kmぐらいだったっけ?


魔導知能の振り切られるかもって懸念も尤もだな。


紙の鳥の魔法陣がどれかぐらいは、俺にも分かるから、足輪みたいに足にくっついて移動した方が良さそうだな。


沙希の使う魔法はルーン魔法なので、魔法陣と言っても円の中に色々な文字や記号が入っている感じのものではなく、ルーン文字を使った文章だ。


(魔法陣の想像から人の手でおこなえるのですね。とても興味深いです。沙希様と合流した暁には是非ルーン魔法について教えて頂きたいものです)


地球での魔法はルーン魔法に限らず。魔法使いの一族が何代もかけて魔法陣を改良、時には1から作り直して発展させていくものだったけど。この世界は違うの?


(この世界で魔法陣を作ることが出来るのは神のみです。だからこそ、魔法系のスキルを持ったものしか魔法が使えません)


成程。となると神からしたら沙希ってめっちゃ厄介な存在じゃない?


でも、あの推定神は沙希が魔法使いって知った上でこの世界に転移させてる。

一体、何が目的なんだ?


(神の考えなど、考えたところで分かりませんよ。と言うわけで、沙希様と出来るだけ早く合流しておいた方が良い理由が増えましたね。違う世界の魔法が使えると言うのは聞きましたが、まさか人が魔法陣の作成を行えるとは思っていませんでした)


確かに出来るだけ早く合流した方がいいとは思う。


だけど、急いで合流したって邪魔にしかならないと思うんだよね…


(地球にいた時は、マスターもただ守られるだけの存在だったかもしれませんが、今は違います。強くなって沙希様を守るぐらいの気持ちを持って下さい。もちろん私もマスターが強くなるお手伝いを全力でさせて頂きます)


そっか、今の俺には戦う力がある。

神と敵対する可能性があるのに、神から与えられたスキルに頼るのは少し不安があるけど。魔導知能のことは信用したいな。

レベルを上げるのにも神の力が必要なんだし。この世界で生きていくには神と関わらないってのは無理だろうし。


ルーン魔法について広めないから敵対しないでってお願いするしかないかな?

魔導知能はどう思う?


(そうですね…神が、ルーン魔法を使えると言う理由だけで敵対することはないと思います。沙希様が魔法陣の作成からできる別世界の魔法使いと言うのは転移させる前からわかっていたはずです。それが問題だったら、沙希様のことは最初から転移させないか。

ルーン魔法を使えない状態にしてから転移させる筈です。それをしなかったってことは…)


神たちは、ルーン魔法もこの世界に取り入れようとしてる?


(そこまでは分かりませんが。ルーン魔法を使って、沙希様に何かさせようとしているのは確実かと)


危険なことをさせるつもりかもしれないし安全とは言えないか。


とりあえず、魔導知能には沙希と合流して、この世界の常識や今の話をして欲しい。


(承知致しました)


足に俺の分体をくっつけた紙の鳥を飛ばす。

紙の鳥は一瞬で見えなくなってしまった。


(やはり、飛んで着いていくのは不可能でしたね。くっついておいて正解でした。では、こちらも強くなるために頑張りましょう。沙希様と合流出来次第、ご報告致しますので)


そうだね。ここで、紙の鳥が沙希の所に戻るまでボーッとしてる訳にはいかないもんな。


先ずは、お金をゲットするために近くの村で売るための猪を倒すって話だったな。


(付近を偵察させていた。分体によって既に猪を発見済みです)


じゃあ、早速その場所に案内してもらおう。


(分体に、ここまで誘導させるので移動する必要はありませんよ)


さすが魔導知能。ゴブリンの棍棒を構えていると、猪が全力ダッシュでこちらに向かってきた。


姿は猪だけど。ほんとにあれ、猪?

体重800kgぐらいある巨体だけど。

あれはただの猪じゃなくて猪の魔物じゃないの?


(魔物化した猪はもっと禍々しいです。こちの世界の猪はアレぐらいのサイズが普通です)


マジかよ……


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読んで頂きありがとうございます。

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