放課後バトルクラブ カードゲーム編

海星めりい

第1話


「あっ! おっそーい!! ようやく来たー。まったく……待ちくたびれちゃったじゃない」


「なに? 『今日は委員会で遅くなるから待ってないと思った? そんなに楽しみだったのか……』ですって?」


「ば、ばっかじゃないの!? 待ってないわよ! これは……そう、この間負けた借りを返すだけ。リベンジよ、リ・ベ・ン・ジ!」


「わかる? デッキだってちゃんと持ってきているんだから! ほら!」


「『夕暮れ時? 校門が閉まるまであまり時間がない?』 ふっふーん、そんな心配はご無用よ! アタシが速攻でアンタを倒して終わりにする。それだけの話よ」


「それとも、ビビっちゃったー? 怖じ気づいちゃったー? やめたいならーやめてもいいのよ……って、もうデッキ探しているじゃない。なんだかんだやる気満々ってわけね! そうこなくっちゃ面白くないわ!」


「………………ねぇ、まだー? いつまでガサゴソやってるのよー。ちょっと、時間かけすぎじゃない? まさか、忘れたなんて言わないでしょうね? 何、その顔!? ホントに忘れたの信じらんない!? カバンの中アタシにも見せなさいよ――」


「って、思いっきりデッキあるじゃない!! 騙したのね! え? アタシがおろおろする顔が面白かったって? むぅーーーー! 余計なコトしてんじゃないわよ! ふう、落ち着きなさいアタシ。これはアイツの罠よ」


「まったく、ヒトのことをおちょくって冷静さを失わせようだなんて、姑息な盤外戦術ね。そんなものには引っかからないわよ」


「そんなつもりは無かった? じゃあ、どういうつもりで……アタシの可愛い反応が見たかった? ふ、ふぅーん? じゃあ、特別に許してあげる。でも、勝負に手は抜かないわよ!」


「いくわよー!」


「デッキをしっかりシャッフルして――むぅ、学校だからって二重スリーブにしたのはヤリスギだったかしら……。ちょっと大きくてあたしの手じゃ上手くシャッフルできないわ。だからといって今さらデッキのスリーブを外すのも面倒ね……」


「あ、そうだ! アンタ、アタシのデッキもシャッフルしてよ!」


「なにちょっと面倒くさそうな顔しているのよ! どうせ最後は互いに軽くシャッフルするんだし、今からやっても同じでしょ? むしろ、イカサマ防止にもなって丁度良いじゃない。名案ね!」


「ほら、はーやーくー。そっちのシャッフルは終わったんだからいいでしょー? ね? ね?」


「最初からちゃんと受け取れば良いのよ。そうそう、そんな感じでシャッフル頼むわね……って、どうしたのよ? なんかアタシのデッキに問題でもあった?」


「ん? アタシのデッキが生暖かい? 『もしかしてずっと握って待っていたのか?』ですって? そそそそ、そんなわけないじゃない! 大体、で、デッキでアタシの体温を感じ取っているんじゃないわよ!」


「いいから、アンタはアタシのデッキをシャッフルしてなさい! アタシもアンタのデッキをシャッフルしてるから! ほら、時間ないって言ったのアンタでしょさっさとやるわよ」


「ねえ、そういえばアンタのデッキのスリーブって、可愛い女の子のスリーブじゃなかった? ああいうのがアンタの趣味なの? って思っていたんだけど……違うの?」


「『デッキのテーマに合わせたキーカードのスリーブを使っているだけ?』 へー、ホントにー? って!? じゃあ、今回はあの女の子のモンスターのテーマじゃないってことじゃない!?」


「あ、焦ってないわよ!? べ、別に特に対策カードとか入れてきたわけじゃないからね! でもちょっとデッキ返しなさい! 何でも無いわ! 確認よ確認!」


「これとこれと、これは抜いておいてっと……はいオーケーよ! もう一回シャッフルよろしくね!」


「何よ、その目は? あー、デッキの枚数なら大丈夫よ。少し抜いたところで、規定枚数内だから問題ないわ。え、そういうことじゃない? シャッフルのやり直しをさせることになったのは謝るわ。ゴメンね」


「さーて、デッキの準備も終わったわ。先攻後攻を決めるわよ。ジャンケンポン! イエーイ、アタシの勝ちー! そうねぇ……先行をもらうことにするわ!」


「デッキから五枚引いて……いくわよー! デュエルスタート!」


「私の先行! 先行はドロー出来ないからこのまま行くわ!」


「〝ふわもこルーキーズ〟を召喚して、効果発動! 手札を一枚捨てて、デッキから〝ふわもこ〟と名のついたモンスターを召喚するわ。この効果で手札の〝ふわもこエンジェルズ〟を捨てて、デッキから〝ふわもこワンダーズ〟を召喚!」


「さらに、捨て札ゾーンにいった〝ふわもこエンジェルズ〟の効果を発動! このカードを裏側にして、デッキから〝ふわもこ〟と名のついたスペルカードを一枚手札に加えることが出来るわ! 〝ふわもこ大集合!〟を手札に加えて、フィールドに二体以上の〝ふわもこ〟モンスターがいるから、そのまま発動よ!」


「デッキから〝ふわもこ〟と名のついたモンスターとトリックをそれぞれ一枚手札に加えるわ! 〝ふわもこサバイバーズ〟と〝ふわもこ守護結界ガーディアンフィールド〟を手札に加えさせてもらうわよ」


「って、ここまで好き勝手動いているけど、アンタ何か発動するカードないの? なに? 『あったら、自分から言うからそのまま続けていいって?』 それなら、お言葉に甘えさせてもらうわ! どんどんいくわよ!」


「〝ふわもこワンダーズ〟の効果を発動するわ! フィールドに二体以上の〝ふわもこ〟モンスターがいるとき、スペシャルデッキから、自身を素材とする条件にあった〝ふわもこ〟モンスターを一体召喚出来る。この効果で〝ふわもこキング〟を召喚よ!」


「〝ふわもこキング〟がいることでこのカードは手札からノーコストで召喚出来るわ! 〝ふわもこナイト〟を召喚!」


「〝ふわもこキング〟の効果を発動するわ。〝ふわもこナイト〟もしくは〝ふわもこクイーン〟が自分フィールドに召喚された場合、捨て札ゾーンの裏返しのカードを一枚表にできる。これによって、〝ふわもこエンジェルズ〟を表にするわ!」


「スペル・トリックゾーンにカードを二枚伏せて、アタシはターンエンドよ! ふっふーん。かなり良い感じに展開できたわね。どうどう? 結構ピンチなんじゃない?」


「『前より展開にもたつきもなくて、カードに慣れた感じがする。ミスもなくて、中々厄介な盤面を作られてしまった』って? でしょー! ま、まぁ、ちょっとは練習したもの。今回の勝利は私が――って、もう自分ターンを始めてんじゃないわよ!?」


「ん? いや、そんな顔しなくても何も使わないわよ。今の所は好きに動いてもいいわよ」


「じゃあ、これ? なにしれっとした顔で〝大天災ディザスター〟なんてカード使ってくれてんのよ!? アタシのスペル・トリックゾーンが壊滅するじゃないのよ!?」


「『壊滅が嫌なら〝ふわもこナイト〟の無効効果を使えばいい?』 そんなのはわかってるのよ! でもアンタ絶対それを見越して、使ってきたでしょうが! そんな見え透いた戦略にはのらないわ! セットしていた〝ふわもこ守護結界ガーディアンフィールド〟と〝ふわもこの願い〟を発動よ!」


「まずは〝ふわもこの願い〟の効果で手札の〝ふわもこサバイバーズ〟を召喚するわ。この効果で出したモンスターの効果は無効化される……けど関係ないわ! 続けて〝ふわもこ守護結界ガーディアンフィールド〟を発動よ。フィールドの〝ふわもこ〟と名のついたカードを捨て札に送ることでこのターン私のフィールドの〝ふわもこ〟と名のついたモンスターは相手のカードの効果を受けなくなるわ! この効果で今出したばっかりの〝ふわもこサバイバーズ〟を捨て札ゾーンに送るわ」


「これで、私のスペル・トリックゾーンはからよ。折角の〝大天災ディザスター〟も無駄になっちゃったわね……でも私は止まらないわよ!」


「おまけで捨て札にいった〝ふわもこサバイバーズ〟の効果を発動よ! 裏返しにすることで、捨て札にある〝ふわもこ〟と名のついたトリックカードを一枚手札に加えることができるわ! この効果で、さっき発動した〝ふわもこ守護結界ガーディアンフィールド〟を手札に加えさせてもらうわ!」


「さて、まだアンタのターンだけどどうするのかしら?」


「え、ちょっとアタシの〝ふわもこナイト〟を何勝手に捨て札ゾーンに置いているのよ!? 大丈夫? 代わりのモンスターは上げるからって……いらないわよ!? こんな気持ち悪い芋虫みたいなの!? というか、なんで私のフィールドにアンタのモンスターが……なによく読めって?」


「なになに……〝大怪幼虫デザートワーム〟。相手のフィールドのモンスターを一体捨て札に置くことで、このカードは相手のフィールドに召喚出来る? ちょ、じゃあこの効果を〝ふわもこナイト〟の効果で無効にするわ! それなら、アンタはこの芋虫を召喚出来なくなるのよね」


「え、それはカードの効果じゃなくてルールだから無理? どういうことよ!? カードの効果なんだから効果じゃないの!? アンタが適当言っているわけじゃなくて!?」


「スマホ? 公式ページなんていってどうするのよ……こ、公式ルールのQ&Aに書いてある。うぅ……なら認めるしか無いじゃない!? 私の〝ふわもこナイト〟がぁ……」


「いいわよ、続けなさいよ! まだ、私のフィールドには〝ふわもこキング〟がいるわ、しかも効果を受け付けない。突破はそう簡単には……なによそのスペルカードは?〝ノックバック〟? 手札を一枚裏側で捨てて、相手のフィールドのモンスターを二体まで手札に戻す? 止める手段はないし別に良いわよ。でも、アタシの〝ふわもこキング〟は〝ふわもこ守護結界ガーディアンフィールド〟の効果でバウンスなんてされない……ってちょっとまって、アタシのこの場にいる芋虫はどうなるのよ」


「え? 持ち主の手札にバウンスされるから、もちろん自分の手札に戻ってくる? ちょっと!? じゃあ、アタシの〝ふわもこキング〟もその芋虫にされるってこと!? やだぁー!?!?」


「へ? 大丈夫なの。この芋虫が相手フィールドに召喚できるのは一ターンに一度だからもう使えない? そう、それはよかったわ。じゃあ、アンタはここからどんな展開を見せて……ってアタシの〝ふわもこキング〟を捨て札ゾーンに置くんじゃないわよ!?」


「アンタ、さっきあの芋虫は一ターンに一度しか召喚出来ないって言っていたじゃない!? うそつきぃ!?」


「は? 『よくカードを見て見ろ? そこにあるのは芋虫じゃなくてウミウシだって?』 そうね、確かに〝大怪後鰓こうさいスコールジャノメ〟って書かれてあるけど……どっちでもいいわよ!? だいたい、こっちのウミウシもさっきの芋虫と同じ効果じゃない!? 私の〝ふわもこキング〟が捨て札ゾーンに送られることは変わらないってことでしょ!?」


「でも、まだやりようはあるわ! 捨て札ゾーンにいった〝ふわもこキング〟の効果を発動! 自身を裏側にして捨て札ゾーンにある〝ふわもこ〟と名のついたモンスターを二体、効果を無効化して召喚する。防御状態で〝ふわもこナイト〟〝ふわもこエンジェルズ〟を召喚!」


「〝ふわもこ守護結界ガーディアンフィールド〟の効果は後から召喚されたモンスターにも発揮されるわよ。さてどうするのかしら?」


「ちょっと、なによ、そのカッコイイモンスター? 相手のフィールドに大怪モンスターがいるときこのモンスターはノーコストで召喚することが出来るって……アンタが勝手に送りつけてきたんでしょうがー!?」


「しかも、この〝対大怪兵器ギガディノス〟ってカード〝大怪〟モンスターとバトルするとき、攻撃力の上昇効果があるじゃない!? で、でもまあ、一撃じゃアタシも負けないし、これで終わり? 終わりよね? え、ダメ?」


「ん? ここでスペルカード? なんか見たことのないカードが来たわね。古いカードなの?『スピードリロード』? なになにデッキから弾と名の付く装備スペルカードを二枚手札に加える。へぇー、一部の装備限定とはいえノーコストで好きなのを二枚手札に加えられるってこれ結構強いんじゃ……でも何を持ってくるの? たとえ直接攻撃出来るような装備したところで、私は一撃じゃ倒せないわよ?」


「持ってきたのは……スペルカード〝徹甲弾ピアッシングシェル〟と〝炸裂弾(ブラストボム)〟? これをそのまま〝対大怪兵器ギガディノス〟に装備……あーなるほどこれを装備したモンスターは防御状態でも差額分のダメージを与えられるようになって、おまけに防御力が〇になる代わりに攻撃力が一〇〇〇上がると……マズいじゃない!? え、え!?」


「アタシの〝ふわもこ〟モンスターってスペシャルデッキのモンスター以外、防御力四桁いかない数値しかないんだけど!? その貫通効果はマズいわよ!?」


「なに? 攻撃するって? アタシを無視してバトルするなあ!? え? ウミウシを攻撃するの? 別に良いわよ、ウミウシ一体攻撃されたところで別に負けないし……」


「ウミウシとそっちのギガディノスの攻撃力の差額分のダメージを受けるのね。ギガディノスはウミウシの攻撃力の半分を永続に上昇させているから結構痛いけど、まだやれるわ! アンタのバトルも終わったことだし、アタシのターン……え? まだ俺のターンは終わってないって?」


「アンタもうそのモンスターで攻撃したじゃない。モンスターの攻撃は一回だけじゃ? はいはい、〝対大怪兵器ギガディノス〟のカードを読めっていうのね。なになに……装備スペルを付けたこのモンスターは付いている装備スペルの数だけ、通常の攻撃回数に加えて攻撃出来る……ですって!?」


「『というわけで、あと二回攻撃出来るからこのまま攻撃するけど、何かありますか?』 あるわけないでしょ、バァカァー!?」


「アタシのモンスターが全滅したぁ!? というか、貫通効果付きだから……ダメージ計算したら思いっきりライフが〇になるじゃない!?」


「くぅやぁしぃー! もういっかい! ねぇ、もう一回しましょう!」


「え、『もう時間も遅くなってきたし今日はこのくらいにしよう』って? うぅぅぅぅぅぅ、確かにこれ以上は厳しいかもしれないわね……わかったわよ! 今日はこれで止めるわ!」


「次は負けないんだからね! この間もそう言って負けていたとか、言うんじゃ無いわよ!? ホントに次はぜーったいに勝つんだからぁ!」


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