第20話 対処を

「餓鬼憑きは正しく対処すれば上手く祓うことができるんだけどね」

「どうやってやるんだ?」

「さっきもいったかもしれないけど地方によってその対処方法が違うんだ。たとえば餓鬼に憑かれた人物に食べ物を与えるとかそういったことで回避することができる。けれどそれは手におえる時だけだ」

「手に負えるときだけ?」

「狐憑きは知ってるだろう。お稲荷さんの祟りとか」

「あぁ、何度か耳にはしたことがある。でもああいうのは実際、精神疾患、てんかん病とかが原因だって……、でも関係あるのか?」

「それだよ。手に負える場合は精神疾患と片付けることができる。けれどそれは生きている人間ときの場合だろう」

「そんなの当たり前だ」

「でも生きている人間じゃなくて死人だったら?」

「どういうことか、理解できない」

「つまりさ、餓鬼は憑かれた人間が死んでなったものだ。けれどその亡霊がもし生きた人間ではなく死んだ人間に憑いたとしたら?」

「そんな馬鹿な話があるかよ」

「天邪鬼に取り憑かれた君が否定するのかい。それじゃ元も子もない。いいかい。あくまで可能性の話かも知れないが君のようなケースだってあるんだ。一眼に無いとは言い切れない。君が否定するほど怪異や超常現象は一言で言い表すことができない」

「それは確かにそうだ」

「まぁ、それはあくまで概念だから今は関係ない。話を戻すとして餓鬼憑きが死人に取り憑いていたらもう手に負えない」

「どういうことだよ?」

「話し合いでは解決できないってことさ。もうそこには理性も何もない。ようは暴力。食うか食われるかの野生の世界に近づくことになるってこと。君も体験しただろ、ヤク。あのときと同じことが起きる可能性だってある」

「…………………」

「まぁ、上手くいけば天野の時のように血を多く流すことにはならなくてすむ」

「結局、血は流すのかよ」

「あくまで可能性の話さ」

「そうか……。でも船穂、生きている人間と死んだ人間、そのどちらが取りつかれているのかって僕は判断できないぞ」

「それは見た目で判断できるよ。大きく違うからね」

「どんな感じなんだ」

「生きた人間に餓鬼が憑いている場合はそのままの姿で何も変化が見られない。けれど死んだ人間、後者の場合は―――」

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