第14話 担当者

「よろしくです」

宮前は頭を下げて礼をした。

なんだか宮前の動きが変に思えたがこのときは何も聞かなかった。

「ねぇ、この人、何者なの?」

宮前は僕に小さい声で聞いてきた。

「あぁ、船穂は怪異、妖怪、民間伝承収集家だったと思うんだけど」

「何でうろ覚えなのよ? それに何者だかわからないじゃない!」

「アイツの正式な肩書きがわからないからだ。船穂は陰陽師でもあるとかなんとか」

「アンタ、本当に彼女と知り合いなの?」

「知り合いだよ。僕は嘘ついてない」

実際に船穂と会ったことは少なく、今でも指で数えられるくらいだ。

そのため僕も記憶が曖昧なのだ。

宮前はまたかといわんばかりの表情をしたがあえて気にせず船穂に向き直る。

「早速なんだが、船穂」

「ちょっと待ってくれ」

僕が喋りだそうとしたとき、船穂は制止するようにビシッと手を上げ、止めた。

「ここだと話しづらいし、彼女のことを思うなら別の場所に移動しよう」

船穂は僕の後ろ見るようにした。

それにつられ僕は、ちらりと振り向き、宮前を見た。

彼女は不機嫌そうなというより完全に不機嫌な顔でいた。

多分、自分ひとりだけがなんだか、置いていかれていたからだろう。

まぁ、彼女が何を考えているのか、わからないが。

それから僕らはニャンニャン・パラダイスから少し離れた公園を目指し歩いた。

学生服姿の僕と宮前、そしてヘンテコな格好をした女性。

この錆びれた街で三人が一緒になって歩く姿は見る物にとってどんなに奇妙な光景だったのか想像はした。

公園に着くと街灯の明かりは小さく、周囲を照らしてはいたものの範囲は狭い。

そのためかはっきりとは遠くまでは見えない。

ブランコなどの遊具は周りの塗装は剥げ落ち、金属の部分が所々、見えている状態。

それを見たときはなんだか悲しい気持ちにさせてくれるなと考えた。

船穂は近くのベンチに腰をかけ、口を開いた。

「で、ヤク。そして天野。僕に何を聞きたいんだい?」

隣にいた天野は名前を呼ばれてビックリしたのか顔がひきつっていた。

僕は気にもとめず、船穂にありのままのことを完全に話した。ありのままにだ。

男に道で会い、それが宮前を見ていたこと。

銀次に相談したら船穂に聞けといわれたこと。

ただ余計なところは省いているが。

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