エピローグ

君の横顔。

「――それでさ!」

「ああ」


 今日もまた、そんな楽しげに話しかけてくれる君の隣を歩いてる。

 「悩み部」なんてものは、ほとんどなし崩し的な関係だ。

 自分の本当の気持ちをまだ知りたくないだけの、ただの逃げ道。


 好きとは言えない。

 だって俺は一度ふられてしまったから。

 だっていくら君が「恋」を知らなくとも素知らぬ顔をするそんな自分が嫌だから。


 嫌いとは言えない。

 だって君の隣にいると俺は安心するから。

 今はまだ、ここにいていいんだ、と心底温かくなるから。



 ――今、俺は二度目の恋をはじめようとしている。

 


「……え……ねえってば、聞いてる? 薪君?」

「……あ、ああ。ごめん。ちょっとボーっとしてた」

「もう、ちゃんと聞いてよー! それでね――」


 夕日に映える君の顔は、どこまでも綺麗で、優しくて。

 そんな健気な彼女を見ていると、俺は心から思うのだ。

 


 ――恋、なんて甘い名前は最後の最後に付ければいい。



 最後まで自分の色々な「思いと想い」に向き合って自分で未来を選択すればいい。

 俺はもう、歩みを始めている。

 みんなのおかげで始められた。

 だから……ある一人の勇敢な少女の言葉をもう一度、自分の心に深く刻み込んでおこう。



 ――恋はだれでも、ふられてから。





(終り)

 お読みいただきありがとうございました! 

 あとがきへ続きます。

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