4次会 敗者復活戦

 敗者復活戦の日。


 関東地方だけではなく、全国からの敗者復活戦に出るチームが一同に介していた。

 今までの会場では見たこともない人達が大勢いた。


 やっぱりみんな可愛くて、比べてしまうと推し活部のメンバーは見劣りしてしまうんじゃないかと自信が無くなってしまう。

「藤木君、何やってるんですか!? もう最後かもしれないんですよ? ちゃんと写真撮ってくださいね!」


 南部さんにうながされるまま、写真を撮っていると見慣れた人たちが見えた。

 酒姫部のメンバーが会場まで応援に来てくれていた。


「おす! 黒小路の子分! ‌お前も頑張れよ!」

「ライバルなので、応援しに来ました。ちゃんと、決勝まで上がってきなさい。

「私のせいで負けたなんてなったら、やっぱり嫌です。私たちのライバルならライバルらしく、頑張りなさい!」

 二階堂さん、獺さん、久保田さんがエールを送ってくれた。


 ◇


 いつもよりも早いペースで、次々と演目が行われていった。

 そして、推し活部のステージが始まった。


 推し活部のメンバーのパフォーマンスは、清酒祭よりも格段に上手かった。

 顔も生き生きとしている。もうチャンスは無かったものと諦めていた気持ちもあり、全てが吹っ切れたようであった。

 みんな心から楽しそうだった。歌えることが、踊れることが、3人で一緒にできることが、嬉しさ、楽しさ、今まであった辛さも含めて、全部がパフォーマンスに繋がって、これ以上ないくらい輝いていた。まさに酒姫であった。


 ラストのポーズを決める。


 自然と笑顔がこぼれていた。

 清々しい、やり切ったという顔だった。

 もう思い残すことは無いだろう。結果がどうであっても。


「ありがとうございました」


 ‌◇


 敗者復活戦は、この場で発表される形らしい。

 良かったチームは何チーム合ったとしても通過するということがアナウンスされた。


 結果発表が始まり、1チーム目が呼ばれた。

 推し活部では無かった。


 呼ばれたチームのメンバーや、その関係者はすごく嬉しがって、泣いていた。


 まだ1チーム目だ……。


 2チーム目が呼ばれた。またしても推し活部ではなかった。


 ……何チーム呼ばれるのだろう

 うちのチームは、結局呼ばれないまま終わってしまうんだろうか。それでもここまで頑張ったことは無駄ではないと思いたい……。


「――次が最後のチームです」


 そして、最後の発表。

 うちのチーム、推し活部が呼ばれた。


「総評で書いた通りですが、このチームはまだまだ粗削りだと思います。けれど、とてもフレッシュで良いパフォーマンでした。5日目の演目のヒップホップで臨んだとしていたら、成長は見れないものとして、最終ステージには選んでなかったでしょう。けれども、ちゃんと予想を超えて来てくれた。決勝戦までの数日間で、さらに成長頂くことを期待しております」


 ‌総評が伝えたれると、酒姫部のメンバーが飛んできた。

「やったじゃねぇか! 茜!」

 酒姫部が僕たちを取り囲んでいた。


「心配させないでよ! 負けてたら一生恨んでましたからね!……良かった。……本当によかった。……私のせいでダメになっちゃわないで、本当によかった……」

 久保田さんは、南部さんに抱きついて泣いていた。


「良し! さすが私のライバル! 信じてたぞ! 決勝までちゃんとこれたな。あの時の続きだ! ‌最終ステージ、正々堂々勝負しよう!」

 獺さんは、南部さんが久保田さんに抱きつかれているのも関係なく、ライバル発言をしていた。


「……まだ戦うなんてね。シロちゃんの王子さまは一人で良いの。最終ステージ、絶対に負けないからね」

「……絶対負けないから」



 酒姫部のメンバーにもみくちゃにされながら、最終ステージに行けることの実感が段々とわいてきていた。


「……やりきったから、全力で楽しんだから、もう全部終わっても良いと全力でやったから……。そう思っていたんですけど、まだ活動が続けられるんだ……」


 南部さんは、そういいながら涙が頬を伝っていた。

 ‌僕もそんなメンバーを見て、今までにないくらい泣いていた。

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