2次会 ファーストステージ結果発表

 5日目の演目も終わって、部活動の様子は少し落ち着いていた。

 最終ステージへ行けるかもわからない中、淡々とだが希望をもって練習を続けていた。


 全国品評会は、他のオーディションと同じように各演目の採点がされた結果が郵送されてくる。少し日数が空くため、まだかまだかと待ち続ける日が続いていた。

 酒姫部との練習を止めた推し活部は、部室内での練習を続けていた。


 そうやって練習をしていると、部室へ山崎先生が知らせにやってきた。


「大会の結果が届いたぞー。酒姫部も一緒に結果が届いている。せっかくなら、みんなで集まって開けようって、白州ちゃんから伝言だー」

 そういって、体育館へと招集された。


 ◇


 体育館に着くと、白州先生を中心として輪になって部員が集まっていた。

 その輪の中に推し活部メンバーも入っていった。


 白州先生が代表で、結果が書かれた封筒を持っている。

「メンバー揃ったな。開封していくが、どんな結果になっても、受け止めるように」


 ……そう言われて、集まったメンバーに緊張感が走った。

「まずは獺が率いるチーム……」


 封筒を開けると、白州先生が読み上げた。


「……合格だ。おめでとう」

 酒姫部メンバー、マネージャーも含めて喜びの声が上がった。


「最終ステージのへ行けるな。おめでとう」


 最終ステージは、酒姫の聖地とされている会場で行われる。

 ムーンライトドーム、通称”月”と呼ばれるそこに行けるチームとなったわけだ。

 酒姫部のエースチームは、”月”への招待を受け取った。


「評価も書かれているから、読み上げるぞ。総合評価はAランク。各演目についての採点評も、Aだな。ここまでの評価とは想定していなかったが、よくやった。おめでとう」

 文句なしの結果だろう。

 さすがの獺さんも、顔を崩して笑っていた。


「続いて、二階堂のチーム。読み上げるぞ。……総合評価 A。合格だ」


「……よっしゃー!!」

 二階堂さんが大声で喜びを表現していた。


「喜びすぎないんだぞ。各演目の評価としては、二階堂がメインでやっていた演目のロックがA評価だな。他の演目も悪くないが、ポップやバラードはB評価だな。そのあたりをもう少し力を入れて取り組むように。最後の演目、ジャズやヒップホップはAだ。よくやったな」


「おおぉ……。この結果って、最終ステージに行けるギリギリのラインだな……。アブねー……」


 ……これてギリギリ。


 続けて酒姫部チームが何チームか読まれたのだが、合格チームは残念ながらいなかった。


「次、誰し活部を開けるぞ」


 推し活部メンバーに緊張が走った。


 メンバーが身構えている中で、読み上げられた結果。

 白州先生が読み上げた結果としては、総合評価Bランクであった。


 茜さんがメインとなったロックがAランク。


 南部さんの衣装が汚れてしまったポップについては採点がCランクであった。

 他、最後の演目はBで、最後の演目ヒップホップではAをもらえていたが、挽回とまではいかなかった。

 総合評価Bでは、最終ステージへと行けなかった。



 読み上げられた結果に、推し活部メンバーは目線を落としてしまった。

 南部さんがボソッとつぶやいた。

「……私のせいです」



 茜さんはぐっと手を握りしめて悔しさを堪えていた。

 結果を見ればわかる。評価C。あの時の妨害が無ければ、そんな評価ももらわず、ギリギリでも最終ステージへと行けていたかもしれない……。


「……誰のせいでもねえよ。誰も悪くねえ。これが結果だ」

 必死に悔しさを堪えて、震える声でそう言った。

 南部さんは泣き崩れていた。

 久保田さんは、発表の場を去って行ってしまっていた。



 これで、僕たちの夏は終わってしまった。



 最後に総評がついていたので読み上げられた。


 ――全体としてまとまりのあるチームで各メンバーの個性が光っていました。

 まだ粗削りなところもあります。今後の成長に期待します。



 その通りだとは思った。まだまだ至らない部分があったということだろう。

 今後、さらに続ければ成長するだろうが、僕たちに今後なんてあるだろうか……。



 酒姫部のメンバーは、そのまま体育館で練習を始めた。

 推し活部のメンバーは、体育館を後にした。


 ◇


 最終ステージへ進めなかった推し活部は、推し活部とは練習はせず、部室へと戻ってきた。

 誰もしゃべろうとしなかった。


 その場にいた山崎先生が、気を使って、少し真面目な口調でしゃべりだした。

「こういうこともあるさ。B評価だってすごいぞ。この短期間で」


 山崎先生の言葉に誰も反応しなかった。


「……まぁショックなのもわかる。だけど結果は結果だ。これも受け入れて次へ進むしかない」


 そう言われても、みんなの顔は暗いままであった。何もやる気が出ないといった表情だった。


「……しょうがねぇな。こんな時は何もかも忘れて遊びに行こう! 今から遊園地でも行ってこい!」


 そんな気分になれるはずもないのだが、山崎先生は無理やりメンバーを外に追い出して、お金をくれた。


「これ全部使って遊んでこい!」

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