ラストダンスはあなたと…

daisysacky

モノローグ

 もしもボクが、もっと美しく生まれてきたとしたら…

せめて人並みの見た目であったのなら…

君はボクのことを、振り向いてくれたのだろうか?

おそらく人に後ろ指をさされずに、堂々と陽の光を浴びて

いたことだろう…


 もしも飽きるほどに、平凡な暮らしの中に、いたとしたら…

きっと堂々と君の前に、姿を見せることが出来たのかもしれない。

せめて、人並みの容貌だったのならば…

君を普通の男たちのように、デートに誘うことも出来たのかも

しれない。


 ボクの心の中は、いつも悲しみで染まり、絶望を友として、生きてきた。

だが、君は本当に…

ボクに寄り添ってくれるのだろうか?

こんな呪われた醜い姿の自分と…


 もうこの世には、夢も希望もない、と思っていた。

驚いた顔でボクを見て、ヒソヒソと後ろ指をさされるのは、

もう飽き飽きだ…

ボクはまだ、若い部類の人間ではあるけれど、心はすでに、老人のそれだ。

人とかかわるのに、疲れ切り…

1日でも早く、お迎えが来ないかと、心待ちにしているくらいだ。


 だが、ボクは心に決めた。

自分はもう…誰にも、心を開かない…と。

そうしてあらゆる人間を避けて、生きていくと心に誓ったのだ。

 ようやく見付けた、安息の地…

初めに感じたよりも、かなり理想的な場所で、心が湧きたつほどに、

満足感が得られた。

 ボクは、ここで生きていく。

もう、誰にも邪魔させはしない。

もう一生、誰にも心を許さないぞ、と心に誓った。


 君との出会い、あれは…全く奇跡のようなものだった。

もしかしたら、あれは夢だったのではないか、と今でも思うのだ…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る