XX次 怪獣防衛作戦記録、移動辞令

『対怪獣都市 XX次 防衛作戦記録 2113/07/28』


○作戦概要

10:00 

・相模湾洋上ベイト・ブイ周囲に根源素子アペイロンの集束を観測、観測ドローンを展開

・増幅速度より、5時間後には危険域を突破するとの予報

・緊急怪獣警報発令 生産区画、居住区画の隔壁閉鎖開始 住民のシェルター誘導


11:00

・迎撃市街区にAからEの防衛班を緊急展開、編成後待機へ


13:00

・旧横浜市街区にて廃墟の部分溶解を観測 予兆現象と断定 対象が顕現期へ移行

・収集された情報を元に、対策会議より出現怪獣の形状・性質を創定 命名会議へ


14:30

・怪獣の肉体の具象化が完了 実存期へと移行


15:00

・対象を怪獣『アプリムシア(Aplimsia)』と命名

・アプリムシア、迎撃市街区に到達 作戦行動開始


16:15

・グレイプニルA-15、C-7、C-15、E-3 四名の拒絶ヴォイド発動により作戦対象消滅


17:30

・作戦終了 非常警戒解除


○出現怪獣の詳細

『アプリムシア』

・全長90m、体高30mの巨大な海洋軟体動物。アメフラシを想起させる輪郭で、前進方向に頭部らしき膨らみが確認。推定頭部には二本の触覚をもつ。灰褐色に黒の斑点のある、まだら模様の体躯で、全体が溶解性の粘液に覆われている。頭部および背側に無数の孔をもち、粘液を前方に噴射しながら陸上を移動する。

・命名はアメフラシを意味するアプリーシア<Aplysia>と空想生物スライム<slim>を組み合わせたもの。

・アプリムシアの出現ははじめて。レモラスとの共生関係も確認され、怪獣出現時外で怪獣生態が深まっている点には留意すべき。一般市民による怪獣存在への考察、空想知識の蓄積が、アペイロンへ影響を与えている可能性あり。


『レモラス』

・体長2~3m、鮫型の魚類。確認された怪獣のなかでは最小級。陸上で長時間の活動が可能であり、鰓、肺、皮膚と三種類の呼吸法をもつ。体表は粘膜に覆われ、滑るように陸上を進む。水中では20ノット、整備されたアスファルト道路のうえでは10ノットの速度を出すことが可能。

・命名はコバンザメを意味するレモラ<Remora>に由来する。

・単体で出現することはなく、大型怪獣に追従する形で出現する。今作戦では、アプリムシアの体孔から粘液と共に出てきたことから、アプリムシアの体内に棲み共生関係にあることが考えられる。


○襲撃被害

・居住区第三隔壁が一部溶解のほか、都市機関区、居住区、生産区への被害は確認できず。一般市民が避難時に数名軽傷を負うが、怪獣による直接の被災者はなし。

・迎撃市街区の南東部の消失、遅滞拘束設備の破損。

・グレイプニル防衛隊A~E隊50名のうち、消失4、死亡21、不明5、重体13、重傷5名。

・人員補充ののち、再編成。拒絶による被害を抑えるため、抑制の調整が必要とされる。グレイプニルの対怪獣戦術の研究を要請。


◆◇◆


『人事異動指令』


 以下の四名は、対怪獣戦術研究実験部隊<α9小隊>として再編成する。

 階堂玲央奈少佐 の指揮下に入り、指定日時までにブリーフィングを実施せよ。


 複製体レプリカ 015

 汎用体ナンバーズ A-8 D-14 K-10  以上

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