11月

   

 十一月になった頃から、さらに子犬と過ごす時間が長くなった。

 父が朝から子犬を二階の部屋に連れてくるようになったのだ。


 七月のところで書いたように、朝の散歩は父が担当。私が寝ているうちに出かけて、寝ているうちに帰ってくる。

 明け方、私がトイレのために起きて二階の廊下から玄関を覗くと、散歩に出かける支度を目にすることも多かった。そのまま父に任せて、私はベッドに戻るのだが……。

 もう一眠りしていると、二階の廊下をカタカタと走る音が聞こえてきて、それで目が覚める。そんな起床パターンが始まったのだ。


 九月のところで記したように、子犬が二階の廊下の端――階段のあるところ――で佇む写真があり、それを2022年9月15日の近況ノートに掲載しているが、


https://kakuyomu.jp/users/haru_karasugawa/news/16817139558997585135


 その階段から一番近くにあるのが私の寝室で、犬が遊ぶ部屋は廊下の反対側という位置関係になっている。

 犬を抱きかかえて階段を上がってきた父は、ちょうど私の部屋のすぐ近くで犬を下ろし、そこから犬は遊ぶ部屋まで走っていく。廊下にはカーペットのたぐいを敷いていないのでカタカタと音がする、という状況だった。


 先ほど『明け方、私がトイレのために起きて二階の廊下から玄関を覗くと』と書いたが、明け方だけでなく夜中にトイレへ行くたびに、私は玄関の飼育ケージの様子を見るようにしている。人間が寝ている間にウンチやオシッコをする場合が多いからだ。

 それらは散歩の途中で済ませるようになっていた時期もあるが、一階のソファーで過ごす時間が長くなってからは、またケージ内のトイレ用トレーを使うようになっていた。おそらく「ソファーの上では我慢する」という反動で、就寝のためケージに入るとウンチやオシッコがしたくなり、朝の散歩まで我慢できなくなるのだろう。

 これを掃除するも朝の散歩を担当する父だったのだが、その際「犬も汚れているだろうから、ついでに洗ってしまおう」と考えたらしい。

 それで犬を全身シャワーでずぶ濡れにして、タオルで拭いても完全には乾かないため「暖房の効いた部屋で、犬自身に暴れてもらって自然乾燥」ということで、二階の部屋へ連れてくるのだ。

 一度だけ、風呂場へ連れて行こうとしたら逃げられたらしく、シャワーより先に犬が勝手に階段を上がって二階へ来たこともあった。その時は子犬の足音が妙に激しくて不思議に思い、あとで聞いたらそんな事情だった。

 写真にもあるように、子犬には狭くて急な階段であり、自力で上り下り出来ないはずだったが……。「下り」は無理でも「上り」は勢いをつければ可能だったらしい。ただし子犬としても相当無理していたらしく、二度と自力で階段を上がろうとはしていない。


 そんなわけで、朝から私も子犬に付き合うようになった。

 毎朝のルーティン――まず血圧を確かめて、階下で朝食をとり、二階に戻って薬を飲む――を済ませてから、父と子犬が遊ぶ部屋へ行く。私が行った時点では、まだ犬はうっすらと湿っているので、遊ぶというよりタオルで拭いてあげるため、という理由の方が大きい。

 子犬が来る前に私が起床できて、ルーティンを済ませることも出来た日には、シャワーで子犬を洗うあたりから合流だ。

 いずれにせよ、朝から犬と遊ぶのが日課になった。


 子犬は朝から元気だ。

 父は私に犬を任せて、すぐに階下へ戻ってしまう。私としては、本来ならばまだ寝ているはずの時間帯であり、もう少し眠っておかないと体が一日たない。睡眠とまではいかずとも、少なくとも横になっておく必要があるだろう。

 幸いなことに、子犬も少し遊ぶと眠くなるようなので、しかもベッドがある部屋なので、私も子犬と一緒に横になれる。

 例えば子犬に腕枕していると、そのまま眠ってくれるので私も一眠り出来るのだ。とはいえ本当に「一眠り」に過ぎず、短ければ三十分、長くても一時間半で子犬は起きてしまう。そして子犬が動き出すと、見張っておかなければ糸くずなどを口にしてしまうので、私も起きざるを得なくなる。

   

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