10月(その2)

   

 十月下旬になって、さらに散歩の距離が伸びた。

 きっかけは母の一周忌だ。


 基本的に父は自動車で行動する人間だが、もう高齢なので遠くまで運転したくはないという。母の一周忌で東京まで出向く必要があり、その日は電車を使う予定となった。

 その一週間くらい前から「足腰を鍛えたい」と言い出して、遊歩道のエリアをたくさん散歩するようになったのだ。


 母が生きていた頃、二人でよく歩いた場所らしい。二時間や三時間の散歩はざらであり、数時間に渡る時もあったという。

 母が亡き今、それに私と犬が付き合わされる形になったのだ。この長距離散歩は父あるいは私ではなく、二人一緒に犬と散歩するわけだ。

 犬にしてみれば、いつもは一人の人間が二人も一緒なので嬉しいのだろう。私は当然そんな気持ちはないのだが、これも母の一周忌関連のイベントと考えて、付き合うことにした。

 とはいえ、そもそもプロローグで述べたように私は健康に不安がある。数時間に渡る散歩は不可能だ。トイプードルだって、そこまで長時間歩き続けるのは無理だろう。

 父と一緒の散歩は結局、途中で何度も私が休憩を必要とする格好になった。幸い遊歩道なので至るところにベンチが用意されており、公園のようになっている場所ではトイレや水飲み場まで設置されている。

 飲み水はペットボトル持参なので大丈夫としても、トイレがあるのはありがたかった。犬と散歩する場合、私一人ならばトイレに入れないが、父がいるのでその点も問題なかった。

 途中からは小さなカップを持参して、ベンチで座って休憩する際、犬にも水を飲ませるようになった。


 この長時間散歩は、だいたい一時間半か二時間くらい。朝や昼は無理なので、夕方の恒例となった。

 まず「はるのみち」まで出て、その「はるのみち」を西へ。続いて南へ向かう遊歩道を進み、水路に沿った別の遊歩道へ出る。

 ここは季節ではなく地名を冠した遊歩道で、そのまま水辺の道を東へ向かうと水路の東端に池があり、そこが公園になっている。

 この小さな池の公園からの帰りは、また別の名前の遊歩道があるので、それを北へ。すると「はるのみち」の東端あたりに合流するので、そこから「はるのみち」に入ったり、あるいはそのまま北へ進んで線路を越えたり、という散歩ルート。

 これが最大のルートであり、少し縮めて、池までは行かない場合もあった。


 なお十月ではなく十一月の写真だが、この「小さな池の公園」の様子が2022年11月30日の近況ノートに掲載してある。


https://kakuyomu.jp/users/haru_karasugawa/news/16817330650185406713


 四枚の写真のうち、上段の二枚だ。左の画像のように、池の奥には原っぱもあり、その点でも子犬が遊ぶには適した公園となっている。

   

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